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サメの生態をわかりやすく

外洋のサメ「ヨゴレ」は人食いザメ?危険性は?太平洋戦争末期の世界最悪のサメ事故についても解説

2021年3月3日

© Reino / Sharkspedia. AI-generated reproductions or full translations must not substitute for the original article. Please cite and link to the original source.

外洋のサメ「ヨゴレ」は人食いザメ?危険性は?太平洋戦争末期の世界最悪のサメ事故についても解説

※この記事は2021年3月に公開し、2026年7月に情報を追記しました。本文には2021年当時に集めた資料や記述も、アーカイブとしてそのまま残しています。追記した部分には年月を記しています。

ヨゴレ(Carcharhinus longimanus)はハイタッチしたくなるような大きな胸ビレが自慢のサメです。
ブリモドキと賑やかに泳いでいる姿が印象的ですよね。
その一方、ヨゴレは危険性の高い人食いザメとして有名なホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメよりも怖い最悪の人食いサメという意見も・・・!?
このブログでは、広大な大海原を飛行しているかのようなヨゴレの特徴などを解説します。

外洋性のサメのヨゴレとは

まず、ヨゴレの基本情報を紹介します。

外洋性のサメヨゴレの基本情報

ヨゴレ(学名:Carcharhinus longimanus 英語名:Oceanic whitetip shark)は、メジロザメ目(Carcharhiniformes)メジロザメ科(Carcharhinidae)メジロザメ属(Carcharhinus)のサメです。
ネット検索では「ヨゴレザメ」として出てくることがありますが、標準和名はヨゴレです。

標準和名
ヨゴレ(汚)
別名
ヨゴレザメ、汚れザメ(※ネット検索で使われますが標準和名ではないので注意!)
英語名
Oceanic whitetip shark
学名
Carcharhinus longimanus
分類
メジロザメ目(Carcharhiniformes)メジロザメ科(Carcharhinidae)メジロザメ属(Carcharhinus)
命名された年
1861年(Poey)
保全状況
絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)※2019年に危急(VU)から引き上げられました(2026年7月追記)
ワシントン条約(CITES)
附属書Ⅱ(2013年採択/2014年発効)→ 附属書Ⅰへ格上げ(2025年11月採択/2026年3月5日発効)。2026年7月追記
最大全長
最大4m
危険度
シャークアタックの回数
15件のサメ事故(1580年〜現在)(Ref.17)
サメの攻撃が原因の死亡事故
3件のサメによる死亡事故(1580年〜現在)(Ref.17)
生息年代
4500万年前(Ref.6 p.21)
水族館で会える可能性
ペットとして飼育できる可能性

ヨゴレの生態

ここでは外洋性のサメ「ヨゴレ」の生態について解説します。

見た目の特徴(形態)

ヨゴレ(サメ)の特徴

ヨゴレの特徴は大きなヒレと、ヒレの先の白さ!

  1. 胸ビレが長い
  2. 顔はいわゆるメジロザメ顔
  3. 第一背びれが大きくて丸い
  4. ヒレの端が白い

ヨゴレの外見的特徴はなんといっても大きくて長い胸ビレです。
遊泳性のサメの胸ビレは巨大なものですが、ヨゴレの胸ビレの大きさはなんと全長の25%、その幅は全長の10%です。
つまり、最大全長の4mのヨゴレなら、胸ビレの長さは1m、幅は40cmです。
ヨゴレの体の色は、青銅色、褐色、灰青色で生まれた場所によって異なります。
大きな胸ビレは広範囲が白いのが特徴です。

分布域と生息域

分布域
熱帯および亜熱帯の海域(18°C〜28°C)に世界中に分布。
日本国内での分布域
日本のまぐろはえ縄漁業の海域(Ref.2)。四国、紀伊半島沖海域、沖縄トラフ周辺海域、薩南(種子島・屋久島から奄美大島)海域で混獲されるためヨゴレの日本近海においての生息海域であると考えられる。(Ref.3)
生息域
ほぼ外洋域
水深
おもに表層。最大記録は1,082m(IUCN 2019)。詳しくは本文の「生息域」をご覧ください。

分布域

ヨゴレの分布域・生息域

ヨゴレの分布域・生息域
©️Florida Museum of Natural History“Carcharhinus longimanus – Discover Fishes”

ヨゴレは、北緯30度から南緯35度の遠洋性の熱帯・亜熱帯海域の全海域の広い範囲に分布するサメのひとつです。
通常、外洋のはるか沖合に生息し、水深200mより浅い水深を好みます。
米国南部から大西洋西部のアルゼンチン、ポルトガルから南アフリカ、そして大西洋東部の地中海にまで及びます。
インド太平洋では、この種は東南アジアの紅海と東アフリカから中央太平洋(ハワイ、サモア、タヒチ、トゥアモトゥ諸島)から東太平洋にかけて見られ、南カリフォルニアから米国で見られます。

生息域

ヨゴレは基本的には外洋性のサメですが、沿岸域と外洋域の両方に生息しており、表層から水深20mまでの浅い生息域や20℃以上の水温を好むサメです。
太平洋のはえ縄捕獲データから、ヨゴレの生息数は陸地から離れるほど増加することがわかっています。

※水深については、資料によって示している数字が異なります。以下に、どの資料が何を示しているのかをまとめました(2026年7月追記)。

  1. ふだん過ごす層:表層付近を好みます。フロリダ自然史博物館は、表層から少なくとも水深150mまでの範囲としています(Ref.4)
  2. この記事の公開時(2021年)に参照した資料では、0〜152m、および0〜230m、最大350mという数字を挙げていました。
  3. これまでに記録された最も深い潜水:1,082mです。IUCNレッドリストの評価書は、Bonfil et al.(2008)、Tolotti et al.(2015)、Weigmann(2016)を根拠にこの数字を挙げています(Ref.12)

数字が食い違っているように見えますが、示しているものが違います。150mや230mは「ふだんいる層」、1,082mは「一度でも記録された最深部」です。ヨゴレは表層を好むサメでありながら、ときどき深く潜ることがある、と読むのが正確です。

YouTubeの動画などでもヨゴレは海表面近くをゆっくりとしたスピードで遊泳している姿が多く目撃されていますよね。

この動画は野生のヨゴレの姿がよくわかるところがおもしろいです。
海面すれすれを泳いでいるときにもブリモドキたちと群れているんですね。

日本国内での分布域

ヨゴレの日本国内での分布域は日本の南方の外洋域です。
日本のまぐろはえ縄漁業で混獲されるので、マグロがいる海域、四国、紀伊半島沖海域、沖縄トラフ周辺海域、薩南(種子島・屋久島から奄美大島)あたりの外洋域が日本近海のヨゴレの生息海域であると考えられます。(Ref.2)
ヨゴレの数が減少傾向にあるので、今も日本の海域に生息しているのかどうかは気になるところです。

大きさ

大きさ
180〜200 cm、平均的な全長は2.7m
最大全長
最大4m

※IUCNレッドリストの評価書(2019年)は、全長350cmを最大サイズとし、395cmに達する可能性もあると記載しています(Ref.12)。(2026年7月追記)

体重
〜167.4 kg

寿命

寿命
15歳。

※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。

最大寿命
22歳

※IUCNレッドリストの評価書(2019年)は、海域ごとに異なる推定値を挙げています。北西太平洋で11歳、南西大西洋で17歳、中西部太平洋で24.9歳です。評価書は、椎骨に年に一度輪が刻まれることは確認されているものの、これらの年齢推定値そのものを検証した研究はまだないと述べています(Ref.12)。(2026年7月追記)

ライフスタイル

泳ぐ速度
32.4キロ
性格
好奇心旺盛。しつこい。
1日の過ごし方
興奮すると猛スピードで泳ぐ。性別や年齢で行動パターンに変化。
好きな食べ物
カツオ、頭足類、海鳥、カメ類
海の仲間のお友達
ブリモドキ、コバンザメ、シイラ。コビレゴンドウの群れに混じって行動することもある。

好きな食べ物

ヨゴレが捕食するのは、硬骨魚類、頭足類、甲殻類、海鳥、ウミガメ、エイ、哺乳類(鯨類)の死骸などが含まれ、海に浮遊するゴミを口にすることもある食いしん坊なサメといわれていますが、この動画では船の上から差し出された死んだ魚には興味を示さないところが気になる点です。
ヨゴレが暮らす外洋は餌が乏しい環境であり、ヨゴレは餌を見つけると動きが活発になり狂乱索餌と呼ばれる状態になることもあります。
イタチザメが個体のサイズで性格が変わるといわれているようにヨゴレも個体サイズと性格に関連性があるのでしょうか。

にゃぶり
にゃぶり
ヨゴレは謎が多いサメにゃよ!

性格

好奇心旺盛。
非常に執拗な性質。
堂々とゆったりした泳ぎにだまされやすいが、興奮すると一転して激しく泳ぎを加速してくる(Ref.1)

知能

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校海洋保全化学研究所のデミアン・チャップマンによると、釣り船がエンジンを停止したときに船を調べればエサにありつけることをヨゴレが学習していることをプレイバック実験で示しました(Ref.7 pp.140-141)

エンジンが停止する=これからそこで魚釣りがはじまる

つまり、ヨゴレはエンジンが停止する音を合図に「エサにありつけるぞ!」ということを学習しているんですね。

にゃぶり
にゃぶり
サメは耳がいいからにゃ!

交友関係

サメのヨゴレと他の魚類の交友関係

大型魚、船、流木などに付いて泳ぐ習性から、パイロットフィッシュという英名をもつブリモドキと一緒に泳いでいる写真が印象的なヨゴレ。
コバンザメ、シイラ。コビレゴンドウの群れに混じって行動していることもあります。

また、ハワイの海域でコビレゴンドウ(クジラ類ハクジラ亜目マイルカ科に含まれる小型のクジラ)と一緒に泳ぐ姿が観察されています(1988年 Jeremy Stafford-Deitsch)が、ヨゴレが他の魚類と行動を共にする理由は不明です(Ref.4)

ヨゴレの写真や動画ではたいていブリモドキたちと群れています。

繁殖

繁殖方法
胎生
妊娠期間
10〜12か月
出産数
1〜14匹(IUCN 2019は1〜15匹。母ザメが大きいほど産む数が増えます)(Ref.12)
幼魚の大きさ
57〜77cm
繁殖サイクル
2年ごとの可能性が高い
成熟年齢
4〜7歳(地域差がある)

※IUCNレッドリストの評価書(2019年)は、メスの成熟年齢として4.5〜8.8歳、6.5歳、15.8歳という三つの推定値を海域別に挙げています。同じ種でも、どの海で調べたかによって結果が大きく変わります(Ref.12)。(2026年7月追記)

成熟サイズ
オス:1.7〜1.9m、メス:1.8〜2.0m(IUCN 2019はオス168〜198cm、メス175〜224cm)(Ref.12)

ヨゴレの繁殖は胎生で胎盤型です。
妊娠期間は人間と同じくらいで10~12か月、出産数は1〜14匹と少なく、繁殖サイクルは2年ごとの可能性が高いため、個体数増加率は非常に低く、乱獲に対して非常に弱いサメです。

※以下、2026年7月に追記しました。

IUCNレッドリストの評価書は、ヨゴレの世代長を20.4年としています(Ref.12)。世代長とは、いま生きている親の平均的な年齢のことで、絶滅リスクを測る計算の土台になります。

ヨゴレの場合、3世代は61.2年です。IUCNが「3世代で98%以上減少した」と書くとき、それは約61年分の変化を指しています。

※以下は、この記事を書いたわたし(Reino)の考えです。

61年です。生まれた子が親になるまでに20年かかるサメの数を戻すには、それだけの時間がかかります。CITESの附属書Ⅰは2026年3月に発効しましたが、その効果がヨゴレの個体数として見えてくるのは、わたしが生きているあいだではないかもしれません。それでも、いま止めなければ、61年後に数える相手がいなくなります。

ヨゴレは人食いザメなの?人間への危険性は?

ヨゴレは危険で凶暴な人食いザメなの?

沿岸性のサメではホホジロザメ・イタチザメ・オオメジロザメが人間にとって危険性の高い人食いザメですが、外洋性のサメではヨゴレは最も危険なサメのひとつです。
大型のヨゴレは人間にとって危険性が高いサメなので、海中で遭遇した場合は細心の注意を払って行動する必要があります。
また、海洋学者のジャック=イヴ・クストーは、ヨゴレについて「あらゆるサメの中で最も危険」と述べています(Ref.5)

危険性

危険度
シャークアタックの回数
15件のサメ事故(1580年〜現在)※内訳は負傷12件、死亡3件(ISAF/2026年7月19日閲覧)
サメの攻撃が原因の死亡事故
3件のサメによる死亡事故(1580年〜現在)

国際的なサメによる被害情報のデータベース「インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル(International Shark Attack File)」に記録されているヨゴレによるサメ事故は最悪の結果が3件、負傷が12件です。
この記録だけ聞くと、「ヨゴレの危険性について聞いていた話と違う!」と思う方も多いでしょう。

※ISAFのこの集計表は、種名まで特定できた事故だけを数えたものです。ISAF自身が、メジロザメ属(Carcharhinus)は種の判別が難しく、実際にはこの表の件数より多くの事故に関わっている可能性が高いと注意を促しています(Ref.17)。ヨゴレの場合、海難事故の現場に人がいて記録を残せた例のほうが少ないため、件数の少なさをそのまま安全さとして読むことはできません(2026年7月追記)。

ヨゴレは記録されていないサメ事故の犯人ではないかと疑われているサメです。
たとえば、海上で船や飛行機の残骸につかまり助けを待つ生存者に対する攻撃などが、ヨゴレの仕業だと考えられています。
その中でも特に有名なヨゴレによるサメ事故は、太平洋戦争末期の1945年にインディアナポリス号沈没する際に起きた「史上最悪のサメによる襲撃」です。

インディアナポリス号沈没のときに起きたヨゴレによる史上最悪のサメによる襲撃とは

太平洋の基地からアメリカに戻る途中、日本軍の魚雷攻撃により、インディアナポリス号は沈没。
インディアナポリス号のおおよそ900人の乗組員は漂流物につかまりながら海を漂流して助けを待ちましたが、4日後に救助されたのはわずか316名でした(Ref.21)

船の沈没から2日が過ぎたころ、ヨゴレとヨシキリザメは船の周囲を泳ぎ、その数は数百匹!
生存者の証言によれば、ヨゴレとヨシキリザメによる攻撃は夕方に発生し、その時間になるとあちこちから悲鳴が聞こえたそうです(Ref.1)

※以下、2026年7月に追記しました。

この事件でヨゴレが関わっていたことは、専門機関も認めています。フロリダ自然史博物館の国際サメ襲撃事件ファイル(ISAF)は、ヨゴレの種別解説のなかで、1945年のインディアナポリス号沈没で起きた咬傷事故の主たる関与種はヨゴレであると記載しています(Ref.22)。同館はまた、ヨゴレが船や航空機の遭難者を襲ったことが知られており、記録に残っていない死亡事故にも関わっている疑いがあるとしています(Ref.22)

ただし、この事件の記録には、いまも定まっていない数字がいくつもあります。

  1. 乗員数:1,195名とする記録と1,196名とする記録があり、一つ違いのまま並存しています(Ref.21)
  2. サメによる死者数:数十名から150名程度まで、推定に大きな幅があります。脱水、日射、負傷で亡くなった方の遺体もサメに食べられたため、死因を切り分けることができないからです(Ref.21)
  3. サメが集まった時期:この記事で参照した『サメガイドブック』は沈没から2日後としていますが、沈没直後の数時間から集まっていたとする証言も残されています(Ref.21)

救助が遅れたのは、船が行方不明になったこと自体が把握されていなかったためです。生存者が発見されたのは1945年8月2日、偶然の発見でした(Ref.21)

※以下は、この記事を書いたわたし(Reino)の考えです。

わたしがこの事件で一番おそろしいと思うのは、サメの数ではありません。何人が海にいて、何人が亡くなり、そのうち何人がサメによるものだったのか、80年たっても確定していないことです。人の記録がそこまで曖昧なまま、「史上最悪のサメ事故」という言葉だけが正確に残り続けている。ヨゴレは、その言葉を背負わされたまま、98%減りました。

※インディアナポリス号の事件は映画化(パシフィック・ウォー(字幕版))されています。

わたし
わたし
映画ではなぜかヨゴレがホホジロザメに・・・

「パシフィック・ウォー」をU-NEXTで視聴

そのほかのヨゴレによるサメ事故

1942年にイギリスの兵員輸送船ノバスコシアがドイツ海軍の潜水艦に撃沈され、南アフリカ沖のインド洋で沈没し1,052名の乗員のうち858名が死亡した事故が起きた際にも同様にヨゴレによる攻撃があったのではないかと考えられています。
ゆえに、太平洋戦争の時代においては記録にないヨゴレによる攻撃も発生している可能性があるようです。

イギリスのThe Guardianによると、2010年11月下旬から12月にかけて、シナイ半島の砂漠と紅海との間にあるエジプトのリゾート地のリゾート地シャルム・エル・シェイクでサメ事故が起き、5人の観光客がサメの攻撃により死傷。
このサメ事故で関与が指摘されたのが、全長2.25mのヨゴレです。

※一連の事故については、ヨゴレのほかにアオザメの関与を指摘する報道もあります。種の特定については資料によって記述が異なります(2026年7月追記)。

エジプトのこの地域におけるサメ死亡事故は5年ぶり。
1月に発生していましたが、シャルムエルシェイクから遠く離れたマルサアラムのすぐ南であり、その水の美しさとその安全性で知られるリゾートで起きたサメの攻撃はほとんど前例のないものでした。
シャルム・エル・シェイクは静かな砂浜、澄んだ水、珊瑚礁で知られています。

ヨゴレに噛みつかれるサメ事故の動画

※小型のヨゴレによる噛みつき事故なので、サメのパニック映画のような動画ではありませんが、実際にヨゴレに噛みつかれるシーンがあるので閲覧注意です。

この動画を見て思い出したのが、奄美大島沖漁船転覆事故でイタチザメと戦い九死に一生を得て生還した漁師が語った「人喰いザメとの死闘」です。

下半身が裸だったから、サメが寄ってきて、僕とAさんだけが集中的に狙われたんだと思います。B君とCさんはズボンを脱がなかったから、露出していた足先しか嚙まれていないんです。
サメは食べられる所か食べられない所なのか分かるんでしょうね。衣類を嚙まれた人は誰もいない。

結局肌の露出が多かったから狙われたということでしょう。
引用:奄美大島沖漁船転覆事故生還した漁師が語った「人喰いザメとの死闘」

ヨゴレの噛みつき動画でも、衣服ではなく肌の露出が多い部分を狙っています。

ヨゴレの人食いザメとしての危険性について考察

人食いザメとしてのヨゴレの危険性について考察してみました。

  • ヨゴレは外洋にいる
  • 海難事故も外洋で起きる
  • 海に多くの人々が投げ出される
  • 大型のヨゴレが捕食する獲物と人間の大きさが近い
  • ヨゴレは外洋という餌が乏しい環境に生息している

一般的に人食いザメとして恐れられているのは、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメです。
これらのサメは沿岸性なので、外洋性のヨゴレよりは人間と遭遇する機会が多いサメといえます。
ヨゴレは海難事故で海に投げ出された人くらいしか遭遇する機会はありません。
危険度だけでいうと、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメと同じくらいかもしれませんが、普通に海のレジャーを楽しむ人とヨゴレが出会う機会はないでしょう。

また、ヨゴレは近年の乱獲により個体数が激減しています。日経ナショナルジオグラフィック日本版は、サイモンフレーザー大学のニコラス・ダルビーとネイサン・パコルーによる研究を紹介し、外洋性のサメとエイ18種の個体数が1970年以降に70%減少したと伝えています(Ref.18)。ダルビーはこの記事のなかで、ヨゴレについて「この60年で98%減少していました。このパターンは3つの海で一貫していました」と述べています(Ref.18)

わたしは、餌となるカツオが減っていることや、ヨゴレの小型化も、個体数の減少に関わっているのではないかと考えています。

※2026年7月の追記です。この二点について、ヨゴレを対象に直接調べた論文は確認できませんでした。否定する資料も見つかっていません。

小型化しているといっても、あの鋭い歯は怖いですよね。
もしも、ヨゴレに遭遇したら、ものめずらしさでふざけたりはしないほうが安全そうです。

ヨゴレを水族館で見たい

ヨゴレは飼育が難しいサメの一種です。
また、攻撃的な性格のため、水槽は単独か一緒に入れる相手を厳選する必要があります(Ref.1)
過去に「ヨゴレ」を展示したことのある水族館は、国内では沖縄県の「国営沖縄記念公園水族館(現在の美ら海水族館)」のみです。
2023年1月現在、「ヨゴレ」を展示している水族館はありません。

ヨゴレは絶滅危惧種?

危険なサメと見られがちなヨゴレですが、実は絶滅危惧種のサメです。
IUCNレッドリストでヨゴレは、三段階ある絶滅危惧種の中でも最も絶滅の危機に直面している深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価され、その個体数は世界中で大幅に減少しています。

※以下、2026年7月に追記しました。

この評価は2019年に公表されたもので、対象は世界全体の個体群です(Ref.12)。それ以前は危急(VU / Vulnerable)でした。

IUCNの評価書は、ヨゴレの世界全体の個体数が3世代(61.2年)のあいだに98%以上減少したと推定し、80%以上減少している確率が最も高いと判断しています。この判断にもとづき、評価区分はCR A2bdとされました(Ref.12)

この推定は、六つの海域のデータをまとめたものです。北西大西洋(アメリカのはえ縄漁業の観察データ1992〜2015年)、南西大西洋(ブラジル2004〜2010年)、ハワイ(1995〜2010年)、中西部太平洋の資源評価(1995〜2009年)と更新値(1996〜2014年)、インド洋(スペインのはえ縄漁業1998〜2011年)です(Ref.12)

ヨゴレは、マグロを管理する四つの地域漁業管理機関すべてが、漁獲・積み替え・保管・水揚げを禁止した最初のサメです。大西洋まぐろ類保存国際委員会が2010年、全米熱帯まぐろ類委員会が2011年、中西部太平洋まぐろ類委員会が2012年、インド洋まぐろ類委員会が2013年に、それぞれ禁止措置をとりました(Ref.12)。IUCNの評価書によれば、この措置を受けているサメはヨゴレだけです。

※以下は、この記事を書いたわたし(Reino)の考えです。

四つの管理機関すべてが漁獲を禁止し、それでも98%減ったという評価が出ている。この二つが同時に成り立っているところに、わたしはずっと引っかかっています。禁止したのに減ったのか、禁止する頃にはもう減りきっていたのか。IUCNの評価書は、条約や国際的な取り決めで合意した内容が、それぞれの国の現場まで届いていないと書いています。ヨゴレの数字は、その言葉を裏づける実例です。

【2026年7月追記】ヨゴレはCITES附属書Ⅰへ格上げされました

ヨゴレをめぐる国際的な取引ルールは、この記事の公開後に大きく変わりました。

2025年11月27日、ウズベキスタンのサマルカンドで開かれたワシントン条約(CITES)第20回締約国会議(CoP20)で、ヨゴレを附属書Ⅱから附属書Ⅰへ移す提案が可決されました(Ref.13)。附属書Ⅰは、CITESが用意している最も強い保護区分で、商業目的の国際取引を原則として禁止します。

この提案を主導したのはパナマで、採決では83%の賛成を得て、必要な3分の2以上の支持で可決されました(Ref.14)。ニュージーランド、スリランカ、オマーン、モーリタニア、バハマ、ガボン、カナダ、チリ、フィジーなど13の締約国が、採決の場で賛成の発言をしています(Ref.13)

サメ類が附属書Ⅰに掲載されたのは、CITESの歴史上これが初めてです(Ref.13)

  1. 2013年:CoP16で附属書Ⅱへの掲載を採択(発効は2014年9月)
  2. 2019年:IUCNレッドリストの評価が危急(VU)から深刻な危機(CR)へ
  3. 2025年11月:CoP20で附属書Ⅰへの格上げを採択
  4. 2026年3月5日:附属書Ⅰの掲載が発効

附属書の改正は、会議終了から90日後の2026年3月5日に発効しました(Ref.15)。同じCoP20では、ジンベエザメとイトマキエイ類(マンタ、モブラ)も附属書Ⅰへ移されています(Ref.16)

にゃぶり
にゃぶり
サメで附属書Ⅰは、これが初めてなんだ!

なぜ附属書Ⅱでは足りなかったのか

ヨゴレは2014年から附属書Ⅱに掲載されていました。それでも12年後に附属書Ⅰへ移されたのは、附属書Ⅱのもとでの取引管理が機能しなかったからです。

野生生物保全協会(WCS)のサメ・エイ保全ディレクターであるルーク・ワーウィックは、この採決を「分水嶺となる瞬間」と表現し、サメが条約の保護をすべて受けられるようになったのは初めてだと述べています(Ref.13)

個体数の減少は、この記事を書いた2021年当時よりもはっきりした数字で示されるようになりました。IUCNは、過去3世代でヨゴレの個体数が80〜90%以上減少したと評価しています(Ref.12)

※以下は、この記事を書いたわたし(Reino)の考えです。

わたしがこの決定で気になるのは、附属書Ⅰになったあとの話です。附属書Ⅱの時代にも、香港のフカヒレ市場ではヨゴレのヒレが流通していました。区分を一段上げれば密輸が止まるわけではありません。港で誰が、どうやって、そのヒレをヨゴレだと見分けるのか。そこに人と予算が回らなければ、附属書Ⅰという文字は書類の上だけで終わります。

ヨゴレは、人が海に投げ出されたときにしか出会わないサメです。海水浴場では会いません。それでも数が減り続けてきたのは、わたしたちがヨゴレの海へ出向いて釣り上げてきたからです。危険なサメとして語られてきた歴史と、絶滅の危機に追い込まれた事実は、同じ一種類のサメの話です。

ヨゴレの動画

水族館で飼育されているのを見たこともなく、サメ図鑑で見るばかりのヨゴレ。
動画で見ると、その美しさに心を奪われます。
大きな胸ビレがかわいいです。

おわりに

いつか会ってみたいヨゴレ。
もちろん海以外の場所がいいです 笑

にゃぶり
にゃぶり
ケージダイビングという手もあるよ!

参考文献一覧

(1)アントネッラ フェッラーリ、谷内透監修『サメガイドブック―世界のサメ・エイ図鑑』TBSブリタニカ、2001年(初版第2刷)。
(2)国立研究法人海洋研究開発機構 海洋工学センター運航管理部 海域調整グループ『漁業の時期と海域について』、2021年3月3日に閲覧。
(3)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。
(4)Discover Fishes『Carcharhinus longimanus』、2021年3月3日に閲覧。
(5)Smithsonian Ocean『The Most Dangerous of All Sharks』、2021年3月3日に閲覧。
(6)ジョン・A・ミュージック『サメとその生態 (insidersビジュアル博物館) 』昭文社、2008年(初版)。
(7)ジョナサン・バルコム (著), 桃井緑美子 (翻訳)『魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう行動するか』白揚社、2018年(第1版第1刷)。
(8)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(9)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(10)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(11) David A. Ebert, Marc Dando, Sarah Fowler (2021) “Sharks of the World: A Complete Guide” Princeton University Press.
(12) Rigby, C.L., Barreto, R., Carlson, J., Fernando, D., Fordham, S., Francis, M.P., Herman, K., Jabado, R.W., Liu, K.M., Marshall, A., Pacoureau, N., Romanov, E., Sherley, R.B. & Winker, H. (2019) Carcharhinus longimanus. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T39374A2911619. URL
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(14) IFAW (2025) Oceanic whitetip sharks granted international protections. URL (accessed 2026-07-19).
(15) Australian Government, Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water「20th Conference of the Parties to CITES」URL (accessed 2026-07-19).
(16) IISD Earth Negotiations Bulletin (2025) CITES CoP20 Summary Report, 23 November – 5 December 2025. URL (accessed 2026-07-19).
(17) International Shark Attack File, Florida Museum of Natural History「Species Implicated in Attacks (1580-Present)」URL (accessed 2026-07-19).
(18) ナショナル ジオグラフィック日本版 (2021)「ここ50年で70%減少 外洋性のサメとエイをどう守る?」URL (accessed 2026-07-19).
(19) Pacoureau, N., Rigby, C.L., Kyne, P.M., Sherley, R.B., Winker, H., Carlson, J.K., Fordham, S.V., Barreto, R., Fernando, D., Francis, M.P., Jabado, R.W., Herman, K.B., Liu, K.M., Marshall, A.D., Pollom, R.A., Romanov, E.V., Simpfendorfer, C.A., Yin, J.S., Kindsvater, H.K. & Dulvy, N.K. (2021) Half a century of global decline in oceanic sharks and rays. Nature, 589, 567–571. DOI: 10.1038/s41586-020-03173-9
(20) NOAA Fisheries「Oceanic Whitetip Shark」URL (accessed 2026-07-19).
(21) The National WWII Museum「Surviving the Sinking of the USS Indianapolis」URL (accessed 2026-07-19).
(22) Florida Museum of Natural History「Oceanic Whitetip Shark」URL (accessed 2026-07-19).

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シャーク・アクティビストReinoとにゃぶり

シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 海やサメ以外で好きなのは、橋本涼さん(B&ZAI)。海属性の人が好き。

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