アクアワールド茨城県大洗水族館でおなじみのクロヘリメジロザメ。
このブログでは、クロヘリメジロザメの特徴などを解説します。
クロヘリメジロザメとは
まず、クロヘリメジロザメの基本情報を紹介します。
基本情報
クロヘリメジロザメ(学名:Carcharhinus brachyurus 英語名:Copper shark)は、メジロザメ目(Carcharhiniformes)メジロザメ科(Carcharhinidae)メジロザメ属(Carcharhinus)に属するサメです。
- 標準和名
- クロヘリメジロザメ
- 別名
- -
- 英語名
- Copper shark、Bronze Whaler Shark
- 学名
- Carcharhinus brachyurus
- 分類
- メジロザメ目(Carcharhiniformes)メジロザメ科(Carcharhinidae)メジロザメ属(Carcharhinus)
- 命名された年
- 1870年(アルベルト・ギュンター)
- 保全状況
- 絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)
- ワシントン条約(CITES)
- 附属書Ⅱ(2022年)
- 最大全長
- 325cm
- シャークアタックの回数
- 15件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 1件のサメによる死亡事故(1580-2023年)
- 危険度
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
クロヘリメジロザメと人間との関わり
クロヘリメジロザメははえ縄と刺し網などによって漁獲、または混獲されています。
一度に産む子ザメの数は7〜20匹、繁殖周期は2年に一度なので漁獲圧力に対する回復力が低いサメです。
個体数
クロヘリメジロザメの個体数は、南オーストラリアで62.6%の個体数の減少があったと推定されていますが、他の地域では個体数は安定しているようです。
カリフォルニア湾で増加の可能性があり、ニュージーランドでは増加または安定、南西大西洋、北西太平洋、ペルーで減少の可能性があるとのこと。
クロヘリメジロザメの個体数動向については生息範囲のほとんどで30~49%の個体数減少が起きているのではないかと推察されています。
保全状況
クロヘリメジロザメは絶滅危惧種?
クロヘリメジロザメはIUCNレッドリストで絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
クロヘリメジロザメの個体数の動向については不透明な部分もありますが、おそらく減少傾向にあるだろうということから、IUCNレッドリストではクロヘリメジロザメを絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)と評価しています。
IUCNレッドリストに掲載された理由は予防原則(不確実だが未来への危機を予測して予防すること)に基づいているようです。
絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】
ワシントン条約(CITES)
- ワシントン条約(CITES)
- 附属書Ⅱ(2022年)
2022年11月、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)第19回締約国会議(CITESCoP19)にて、メジロザメ科のサメを附属書Ⅱに一括掲載することが提案され、採択されました。
クロヘリメジロザメは、メジロザメ目メジロザメ科に属するサメなので、今後はワシントン条約によって国際取引を規制されることになります。
日本はこの決定を留保するとみられています。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 15件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 1件のサメによる死亡事故(1580-2023年)
インターナショナルシャークアタックファイルによると、クロヘリメジロザメはシャークアタックの回数が15回、そのうちの1回は致命的な事故となっています。
メジロザメによるシャークアタックは専門家ですら確実な答えを出すのは難しいため、もしかするとクロヘリメジロザメによるシャークアタックはもう少し多いのではという指摘もあるようです。
インターナショナルシャークアタックファイルによると、1.8m以上の大きさのサメのほとんどは人間にとって潜在的な脅威があるとみなした方がいいとのこと。
その理由は人食いザメだからということではなく、ただ噛み付いただけだとしても、サメの顎の力と鋭い歯は大けがにつながる可能性が高いからです。
クロヘリメジロザメの生態
クロヘリメジロザメの生態について解説します。
見た目の特徴(形態)
- 鼻先が尖っている
- 背中が濃いめのブロンズ色
- お腹が白い
- 無機質な瞳
- 胸ビレがやや長く、先端が黒い
- スマートな体つき
瞳はやや大きめで白目の部分がくっきりとしています。
泳ぎが上手なサメで水族館の水槽ではすいすいと泳いでいますが、ガラスにぶつかる気配はありません。
名古屋港水族館によると、クロヘリメジロザメはメジロザメの仲間の中ではせまい水槽でも壁やアクリルガラスにぶつからずに上手に泳ぐことができるとか。
クロヘリメジロザメの体の色
クロヘリメジロザメは英語名Copper sharkの名のとおり、濃いめのカッパーブラウン色をしています。
分布域と生息域
分布域
クロヘリメジロザメは世界各地の暖かい温帯・亜熱帯の海域に分布していますが、その分布域は点在しているようです。
そのため、地域によって成熟年齢が異なる場合があります。
生息域
クロヘリメジロザメは、沿岸部や汽水域に生息しています。
0〜145mまでの浅い水深を好むようです。
子ザメたちは水深30m未満の沿岸水域に生息しています。
大きさ
- 平均的な大きさ
- 200〜250cm
- 最大全長
- 350cm
- 体重
- 304.6kg
日本国内での分布域
クロヘリメジロザメの日本国内での分布域は、鹿島灘(茨城県大洗岬から千葉県犬吠埼)、房総半島東岸、相模湾、新潟県柏崎沖、有明海、内之浦湾、九州太平洋沿岸から南岸など(p.25)、熊本県天草沿岸、大島・波浮口です。
アクアワールド茨城県大洗水族館で展示されているのは地元の大洗沖からきたクロヘリメジロザメの子たちです。
寿命
- 平均寿命
- 30歳。
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 最大寿命
- 34.5歳
ライフスタイル
- 泳ぐ速度
- - キロ
- 性格
- やや攻撃的
- 1年の過ごし方
- 回遊性で春~夏に北上し、秋~冬に南下
- 好きな食べ物
- イカやタコ、イワシ、ボラ、ヒラメ、エイや他のサメ
クロヘリメジロザメはイワシの群れを襲う姿が目撃されているので、イワシが好物なのかもしれませんね。
繁殖
- 繁殖方法
- 胎生(胎盤)
- 妊娠期間
- 12ヶ月
- 一度に産む数
- 7〜20匹
- 子ザメの大きさ
- 約59〜70cm
- 繁殖サイクル
- 2年に1度
- 成熟年齢
- オス:13〜19歳、メス:20歳前後
- 成熟サイズ
- オス:全長206〜235cm、メス:全長227〜244cm
クロヘリメジロザメを水族館で見たい
クロヘリメジロザメはアクアワールド茨城県大洗水族館でおなじみのサメですが、他の水族館では見かける機会が少ないようです。
名古屋港水族館で展示されている2個体はアクアワールド茨城県大洗水族館から譲渡された子たちでトラックで8時間かけて引っ越してきました。
名古屋港水族館の公式サイト「日本の海【クロヘリメジロザメ】」によると、クロヘリメジロザメはメジロザメの仲間の中ではせまい水槽でも壁やアクリルガラスにぶつからずに上手に泳ぐことができるのサメとのこと。
見た目の迫力もあり、美しいサメなので展示する水族館が増えるといいですね。
クロヘリメジロザメを飼育している水族館の一覧
2023年1月時点、クロヘリメジロザメを飼育している水族館の一覧はこちら。
- アクアワールド茨城県大洗水族館
- 小樽水族館
- 名古屋港水族館
※最新の飼育情報については各水族館が発信している最新情報や日本動物園水族館協会の公式サイト内の飼育動物検索でクロヘリメジロ、または学名のCarcharhinus brachyurusで検索してみてください。
また生きものの状態によっては展示してない場合があるので注意しましょう。
サメがいるお店
水族館ではありませんが、福島県いわき市のシーフードレストラン「メヒコ シャークワールド」では店内でクロヘリメジロザメを飼育しているようです。
クロヘリメジロザメの関連ブログ
参考文献一覧
(2)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、 櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(3)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。 (4)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(5)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(6) David A. Ebert (著), Marc Dando (著), Sarah Fowler (著), Rima Jabado (はしがき, 寄稿) “Sharks of the World” Princeton University Press,2021年
(7)松田裕之『海の保全生態学』東京大学出版会、2012年(初版)。
(8)Florida Museum “DISCOVER FISHES Carcharhinus brachyurus”
(9)Fish Base “Carcharhinus brachyurus”