
難破船を徘徊する野生のシロワニは水族館のシロワニより精悍な顔立ち。
※この記事は2021年に公開し、その後、一部の統計や研究情報を追記しています。本文には、2021年当時に集めた資料や記述もアーカイブとして残しています。最終追記:2026年7月。
どっしりとした体型、サメの一般的なイメージ通りの恐ろしい顔つきが特徴のシロワニ。シロワニはネズミザメ目シロワニ科に属している世界中の暖かい海の沿岸に生息する大型のサメです。
※2020年オオワニザメ科からシロワニ属が科として独立。
シロワニは飼育環境への適応力が高いサメなので多くの水族館で会うことができるサメです。
みなさんも一度は会ったことがあるのではないでしょうか。
顔立ちは怖いですが、性質はおとなしく、ゆらゆら、ゆったりと泳ぐ姿はかわいいです。
このブログでは、シロワニの生態やシロワニが絶滅危惧種なのはなぜか?およびその原因などを解説します。
シロワニとは
まず、シロワニの基本情報を紹介します。
基本情報
シロワニ(学名:Carcharias taurus 英語名:Sand tiger shark)は、ネズミザメ目(Lamniformes)シロワニ科(Carchariidae)シロワニ属(Carcharias)に属する唯一のサメです。
2020年に、オオワニザメ科からシロワニ属が科として独立しました。
- 標準和名
- シロワニ(白鰐)
- 英語名
- Sand tiger shark
- 学名
- Carcharias taurus
- 分類
- ネズミザメ目(Lamniformes)シロワニ科(Carchariidae)シロワニ属(Carcharias)
※2020年オオワニザメ科からシロワニ属が科として独立
- 命名された年
- 1810年(Constantine Samuel Rafinesque)
- 保全状況
- 絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)(IUCN 2021年評価(Ref.11)/日本国内では環境省「海洋生物レッドリスト」2017年公表で絶滅危惧IB類(EN)(Ref.17))
- ワシントン条約(CITES)
- 掲載なし(2026年7月現在)
- ボン条約(CMS)
- 附属書Ⅰ・Ⅱ(2024年2月、CMS第14回締約国会議で掲載)(Ref.12)
- 最大全長
- 325cm
- 生息年代
- 1億4400万年前(Ref.1 p.21)。
- シャークアタックの回数
- 36件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- なし
- 危険度
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
シロワニの特徴
ここではシロワニの特徴について解説します。
見た目の特徴(形態)
- つぶらな瞳
- どっしりとした丸みのある体
- 1匹ずつ異なる斑点がある
- 細くて長い歯が口元から見える
- ぱっと見のサメ相はよくない、怖い
- 正面顔はかわいい
凶暴な顔立ちのシロワニですが、動きも遅く、おとなしいサメです。
シロワニは東太平洋を除く世界中の海の暖かいまたは温帯の海域で見られます。
見た目は怖いシロワニですが攻撃的でない種のサメで、最初に手を出されたり、いたずらされたときにのみ自己防衛で人間を攻撃することが知られています。
体が大きく、円錐形の鼻、口を閉じても四方八方に突き出た鋭い歯、小さな目がシロワニの特徴です。
シロワニは砂に似た薄茶色の色をしており、この砂のような色味はシロワニが周囲の色に溶け込むのを助けます。
シロワニの名前の由来
シロワニの日本語、英語それぞれの名前の由来を解説します。
日本語のシロワニの由来
京急油壺マリンパークのオオワニザメの剥製標本の前にあった解説文によると、「山陰地方(本州西部の日本海側)では、サメのことを「ワニ」と呼び、オオワニザメは『大きくなるワニ=(サメ)』という意味で、シロワニは『白いサメ』という意味で名付けられたのではないか。」とのことです。
シロワニの英語の名前(Sand tiger shark)の由来
シロワニの英語の名前(Sand tiger shark)の由来は生息地に由来します。
シロワニは海岸に非常に近い浅瀬が好きなので、名前に「砂」が含まれています。
シロワニは歯がすごい
※シロワニの捕食シーンがあります。
シロワニには長く突き出た3列の歯が生えています。
また、シロワニには口を半分開けて泳ぐ習性があるので、水族館でもシロワニの歯は観察することが簡単です。

しながわ水族館のシロワニ。正面から。
大きさ
- 平均的な大きさ
- 250〜320cm、平均的な全長は250cm
- 最大全長
- 325cm(IUCN 2021年評価も最大全長325cmとしています(Ref.11))
- 体重
- 158.8kg
※この数値はFishBase等に記録された最大公表体重です。図鑑や水族館の解説では「180kgを超えることがある」と紹介される場合もあり、資料によって幅があります。
シロワニの生態
ここではシロワニの生態を紹介します。
シロワニは見た目によらずおとなしいサメです。水族館でのろのろと泳ぐ姿を見てびっくりした人も多いのでは。
寿命は40歳くらいとみられていますが、シロワニは水族館で長期飼育されているケースが多いことを考えると、15歳程度で寿命を迎えるという可能性は低そうです。
※追記(2026年):IUCN(2021年評価)は、北西大西洋と南西インド洋で「少なくとも40年」の寿命が検証されていると記載しています。世代長は24.8年と推定されています(Ref.11)。
ライフスタイル
- 泳ぐ速度
- - キロ
- 性格
- おとなしい
- 1日の過ごし方
- ほとんどの時間を底のあたりで過ごす。
- 1年の過ごし方
- 繁殖のために季節回遊し、暖かい海に移動して出産する。
※IUCN(2021年評価)によると、シロワニは母川回帰性(philopatry)が強く、同じ繁殖場所へ繰り返し戻る性質があります。回遊は体サイズと性別によって分かれます(Ref.11)。
- 好きな食べ物
- 大小の硬骨魚、小さなサメ、エイ、カニ、アカザエビ、イカ
- 海の仲間のお友達
- 他のシロワニと群れをなす。協力して獲物を囲んで狩りをする。
寿命
シロワニが好きな食べ物は?
ニシン、青魚、ヒラメ、ウナギ、ボラ、マダイ、クロダイ、カツオ、コバンザメ、ホウボウなどの硬骨魚類、イカなどの頭足類、カニ、ロブスターなどの十脚目、やエイ、小型のサメなどの軟骨魚類も捕食します。
また、シロワニ同士が協力して捕食する行動が観察されています(Carcharias taurus)。
シロワニの繁殖
- 繁殖方法
- 卵食・共食い型
※IUCN(2021年評価)は、この繁殖様式を「子宮内共食いをともなう胎生(adelphophagic viviparous)」と記載しています(Ref.11)。
- 妊娠期間
- 9〜12か月
- 産仔数
- 2匹(サメの中でもとくに繁殖率が低い)
※IUCN(2021年評価)は、産仔数がわずか2匹であることが「生物学的生産力の非常な低さ」につながり、漁獲圧に耐える力を大きく下げていると指摘しています(Ref.11)。
- 幼魚の大きさ
- 95〜105cm(IUCN 2021年評価は85〜105cm)(Ref.11)
- 繁殖サイクル
- 2年周期(IUCN 2021年評価によると、地域によっては1年周期や3年周期の可能性もあります)(Ref.11)
- 成熟年齢
- メスは南西大西洋で7.7歳、北西大西洋で9〜10歳と推定(IUCN 2021年評価)(Ref.11)
- 成熟サイズ
- 全長225cm(IUCN 2021年評価では、オスは全長190〜200cm、メスは全長220〜235cmで成熟)(Ref.11)
シロワニの妊娠期間は9か月から12か月です。
お母さんザメのお腹の中で成長してから生まれてくるため、生まれたばかりのシロワニの赤ちゃんの全長はおおよそ1メートルにもなります。
この大きさであれば、生まれたばかりの赤ちゃんザメでも、多くの捕食者を簡単に撃退することができます。
共食いすることで体を大きくすることがシロワニの生存戦略なのかもしれません。
しかしながら、そうやって生まれてきた強い子も乱獲やスポーツフィッシングなどの前では無力です。
IUCN(2021年評価)は、1960〜70年代のオーストラリア・ニューサウスウェールズ州で、シロワニが銛(もり)を使う漁の標的として集中的に狙われたこと、ブラジルのサンタカタリーナ州でも1970〜80年代に大きな群れが銛漁で獲り尽くされたこと、地中海でも規制のない銛漁と沿岸漁業が急激な減少の原因になった可能性を挙げています(Ref.11)。
シロワニの赤ちゃんザメは共食いする
シロワニの赤ちゃんザメは共食いするというのは有名な話ですよね。
実はこの話は本当なんです!
シロワニのお母さんザメのお腹の中で数個の卵が孵化してシロワニの赤ちゃんザメは子宮の中を泳ぎ始めます。
このときシロワニの赤ちゃんザメはお腹を空かせています。
一番大きなシロワニの赤ちゃんザメは、生き延びるために孵化していない卵や、すでに孵化してしまった小さくて弱い兄弟サメを食べてしまいます。
シロワニの赤ちゃんザメは兄弟を食べてしまう
シロワニは卵食・共食い型の胎生のサメです。
はじめは8匹ほどいるシロワニの赤ちゃんザメは、そのすべてが生まれるわけではありません。
※子宮内で発生をはじめる胚の数は資料によって幅があります。IUCN(2021年評価)が記載しているのは、最終的に生まれてくる産仔数が2匹であるという点です(Ref.11)。
それは、シロワニは母サメのお腹の中で赤ちゃんが共食いをして生まれてくるためです。
シロワニの赤ちゃんは17cmになると歯をもち、26cmになると子宮内で動くことができるようになります。
一番強いシロワニの赤ちゃんザメは子宮内の未受精卵や兄弟を共食いして、それを栄養源に成長します。
シロワニの赤ちゃんザメの動画
シロワニの赤ちゃんザメの動画がこちら。
最終的に母親が出産するときには、シロワニの赤ちゃんザメ左右の子宮に1匹しか生き残らないことがほとんどのため、一度に出産できる数は2匹程度しかいません。
母サメの子宮内でシロワニの赤ちゃん同士が共食いをすることがシロワニの特徴です。
子孫を残せるオスは強いオス
メスのシロワニは繁殖期になると複数の相手と繁殖行動をする傾向があり、最初に交尾した相手の精子で受精した胚が、最も早く発育をはじめるのではないかと推測されています。
そうなると必然的に一番最初に繁殖行動をしたオスの子が先に大きくなることになります。
つまり、他のオスとの間にできたライバルの胎仔をすべて食べてしまう可能性が高くなるというわけです。
子孫を残せるオスは強いオスだということなんですね。
※追記(2026年):Chapman et al.(2013)は、南アフリカで捕獲されたシロワニの母ザメと胎仔の遺伝子を調べ、メスが複数のオスと交尾しているにもかかわらず、生まれてくる2匹の父親が同一個体である場合が多いことを報告しています。子宮内での共食いが、結果として父親の数をしぼり込んでいるという指摘です(Ref.16)。
シロワニの分布域と生息域
- 分布域
- 世界中の暖かい海の沿岸に生息。大西洋西部と東部、インド洋西部、太平洋西部、地中海西部。メイン湾からアルゼンチンにいたる西大西洋、カナリア諸島からカメルーンまでの東大西洋、紅海、インド洋、西大西洋の海域。オーストラリア。
※IUCN(2021年評価)は、シロワニの分布を「東太平洋を除くすべての大洋」と記載しています(Ref.11)。
- 日本国内での分布域
- 小笠原諸島
- 生息域
- 沿岸水域。通常は浅い湾や砂浜の沿岸水域の温帯および熱帯の海域、岩礁またはサンゴ礁。沈没船(難破船)、断崖、突き出た岩棚にも生息。
- 水深
- 0〜232m(主に水深15〜25m)
分布域
出典:World distribution for the sand tiger shark. Map © Chondrichthyan Tree of Life
シロワニの生息地は、大西洋、太平洋、インド洋、アドリア海(地中海の一部でイタリア半島とバルカン半島に囲まれる海域)です。
西大西洋では、メイン湾からフロリダ、メキシコ湾北部、バハマとバミューダ周辺、ブラジル南部からアルゼンチン北部にかけての沿岸水域に生息。
また、東大西洋では地中海からカナリア諸島、アフリカ北西沖のカーボベルデ諸島、セネガル、ガーナの海岸、ナイジェリア南部からカメルーン。
西インド洋では、南アフリカからモザンビーク南部まで(マダガスカルを除く)
シロワニは紅海でも目撃されており、東はインドまで生息している可能性があるそうです。
西太平洋では、日本の小笠原諸島やオーストラリアの沿岸などに生息していますが、ニュージーランド周辺にはいないようです。
分布図の上では広くても、中身は5つの別々の群れ
IUCN(2021年評価)がまとめた遺伝子研究によると、シロワニには少なくとも5つの個体群があり、そのひとつが日本です。残りは北西大西洋、西オーストラリア、東オーストラリア、南アフリカ(ブラジルおよび地中海と同一の個体群である可能性)です。それぞれの個体群のあいだで個体が行き来する頻度は低く、遺伝的に分かれた集団として扱われています(Ref.11)。
つまり、日本のシロワニが減っても、オーストラリアや南アフリカのシロワニが泳いできて埋め合わせてくれるわけではない、ということです。
また、地中海では2008年に捕獲された1個体を最後に記録が途絶えており、残る成熟個体は250未満、地域的には「絶滅した可能性がある(Possibly Extinct)」と評価されています(Ref.11)。上に書いた「地中海」「アドリア海」の分布は、2021年当時に参照した資料にもとづく記述です。
シロワニの日本周辺の分布域は?
シロワニは日本では小笠原諸島周辺のごく限られた島しょ域でのみ生息しているようです。
小笠原諸島では人間の生活する場所からほど近い港の中にシロワニが集まって来る場所があるとか。
1960年代には東シナ海にも生息していましたが、それ以降は隣接する台湾沿岸での数例を除くと確実な出現事例は報告されておらず、現在ではほとんど生息していないと考えられています。
シロワニはもともと日本周辺では限定的な生息地しかもたなかった上に個体数が激減しているのが現状です。
しかしながら、サメを展示する水族館の多くでシロワニを見ることができる機会は多いので、日本周辺でシロワニを見たいという人には水族館をおすすめします。
生息域
シロワニは水深1.8~191mの沿岸域に生息しています。
水深15〜25mに生息しているシロワニが多いようです。
浅い湾、サンゴ礁や岩礁、難破船の周り、大陸棚の外側のより深い場所など、さまざまな場所に生息しています。
※水深の記録は資料によって異なります。ここに挙げた1.8〜191mは2021年当時に参照した資料の数値で、IUCN(2021年評価)は0〜232mとし、主に生息するのは水深15〜25mとしています(Ref.11)。
シロワニは人食いザメ?人を襲うことはあるの?

海ノ中道マリンワールド(福岡県)のシロワニ
恐ろしい顔立ち、約3メートルという大きさ、体重は180kgを超えることのあるシロワニ。
シロワニは顔立ちこそどう猛で怖いサメそのものですが、基本的には臆病で大人しいサメです。
シロワニが人を襲った回数は?
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 36件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- なし
フロリダ自然史博物館が管理するグローバルデータベースであるインターナショナルシャークアタックファイル(ISAF)によると、シロワニは1580年以来、人間に対する36回の「挑発されていない攻撃」に関与しています。
これらの攻撃はいずれも致命的ではありませんでした。
シロワニによる死亡事故は記録されていません。
※この件数は2023年時点で確認した数値です。ISAFは毎年更新されるため、最新の件数はISAFの公式ページでご確認ください。
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態などについても詳しく学べるので初心者におすすめの一冊!
シロワニの危険性は?

しながわ水族館のシロワニ。歯がすごい。
シロワニは人食いザメではありませんが、あの鋭い歯で噛まれたりすると大怪我をする恐れがあります。
ドキュメント番組「わたしはこうして襲われた!」に繁殖期のメスのシロワニに襲われた人が出演されていましたが、命は助かったもののまさに九死に一生という壮絶な体験でした。
人間に行動を邪魔されたり、攻撃されない限りは基本的にシロワニは無害なサメなので海の中で見かけてもそっとしておきましょう。
もちろん、野生の生き物の心はわからないので、危険じゃないとは言い切れませんが。
サメに限らず、どんな動物も人間にいたずらされて怒ることはよくあります。
たとえば、犬や猫をからかって怒らせたという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
サメは魚なので謝ってもわかってもらえません。
面白がっていたずらするのは自分の身が危なくなるだけなのでやめましょう。
シロワニと人間との関わり
シロワニは繁殖周期が2年と長いサメです。また、卵食・共食い型の胎生なので、子宮内の赤ちゃん(胎仔)は母ザメが供給する栄養卵だけでなく、他の胎仔も食べてしまうため2匹しか産むことができないため、漁獲圧力に耐えることができません。
シロワニは、乱獲の影響で個体数が減少しており、絶滅の危険性が高いと見られており、IUCNレッドリストでは野生絶滅目前の深刻な危機(CR / Critically Endangered)、日本国内でも環境省の「海洋生物レッドリスト」で絶滅危惧 IB 類(EN)と評価されています。
どれくらい減ったのか、数字で見る
IUCN(2021年評価)は、シロワニが世界全体で過去3世代(74年)に80%以上減少したと推定し、絶滅危惧IA類相当の深刻な危機(CR)と評価しました。地域ごとの内訳は次のとおりです(Ref.11)。
- 東オーストラリア:3世代(74年)で80%以上の減少
- 北西大西洋・南アフリカ:3世代(74年)で30〜49%の減少
- 南西大西洋・地中海・アラビア海域:ほとんど、あるいはまったく確認されなくなっており、深刻な危機(CR)にあると疑われる
- 西アフリカ・東南アジア:沿岸漁業の圧力が高く、同程度(80%以上)の減少が起きていると疑われる
脅威として挙げられているのは、はえ縄、刺し網、トロールによる漁獲(漁獲対象としても混獲としても捕られます)、遊漁、ビーチのサメ防除ネットへの混獲、そして沿岸環境の悪化です。利用のされ方は、肉、ヒレ、皮、肝油、魚粉です。ただしヒレについては、香港で分析されたサンプルのうちシロワニは1%未満でした(Fields et al. 2018/IUCN 2021年評価による引用)(Ref.11)。
守ったところでは、戻りはじめている
同じIUCNの評価文には、回復のきざしも書かれています(Ref.11)。
- オーストラリア:1979年に釣り人が自主的に捕獲をやめ、1984年にニューサウスウェールズ州で保護、1997年には国の法律(EPBC法)で保護対象となり、国内全域で採捕と保持が違法に。2002年に国の回復計画が作られ、2014年に改定。2001年から2009年にかけて、シロワニとの関わりを管理する目的も含めて26か所の海洋保護区が設置されました。東オーストラリアの個体群は、年3.4〜4.5%の増加が推定されています
- アメリカ:1997年に大西洋サメ類漁業管理計画で採捕禁止種に指定
- 南アフリカ:1998年の海洋生物資源法により商業漁業から保護
- 地中海:バルセロナ条約の締約国が、シロワニの保持を禁止し、可能な限り生かしたまま放すことに合意
- アルゼンチン:遊漁での水揚げを禁止
2024年2月には、ウズベキスタン・サマルカンドで開かれたボン条約(CMS)第14回締約国会議で、シロワニが附属書Ⅰと附属書Ⅱの両方に掲載されました(Ref.12)。附属書Ⅰは絶滅のおそれが高い移動性の種で、締約国に捕獲の禁止と生息地の保護を求めるものです。附属書Ⅱは、国どうしが協力して保全に取り組むべき種のリストです。
一方、ワシントン条約(CITES)には、2026年7月現在も掲載されていません。国際取引そのものを規制する枠組みには、シロワニはまだ入っていないということです。
保全状況
シロワニは絶滅危惧種?
深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価されています。
| 絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
| どこにもいない |
ほぼ絶滅 |
かなりやばい |
やばい |
やばそう |
そろそろやばい |
今は心配なし |
| メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
| - | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
| - | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『【2025年12月版】絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ』で解説しています。
国際自然保護連合(IUCN)は、シロワニを絶滅の危機に瀕している生物に与えられるランクである深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価しています。この「絶滅危惧種(近絶滅種)」は3段階ある絶滅危惧種の中でもっとも絶滅に近く、この次の段階は野生全滅なので、シロワニは危機的な状況にあるといえます。
※この評価は2021年に公表されたものです(Ref.11)。国内では、環境省が2017年3月に公表した「海洋生物レッドリスト」の魚類において、シロワニは絶滅危惧IB類(EN)に選定されています(Ref.17)。
シロワニと水族館
シロワニは水族館で飼育しやすいサメです。
大型で絶滅危惧種サメですが、水族館では会える確率の高いサメの一種でしょう。
日本トップクラス規模の水族館でサメの飼育数も日本一のアクアワールド茨城県大洗水族館では、2021年6月17日に日本で初めてシロワニの繁殖に成功しました。世界では5園館目の事例です。シロワニの赤ちゃんは2022年12月現在すくすくと育っています。
追記(2026年):大洗水族館のシロワニ繁殖は、その後3回目に到達しました
なお、2023年5月7日に誕生した幼魚(個体番号No.10)は、同年6月6日に死亡しています(Ref.13)。飼育下での繁殖は、成功の報告だけで終わる話ではありません。
大洗水族館は、全国の飼育施設と協力して、小笠原諸島の海でシロワニの保全調査も進めています(Ref.15)。上に書いたとおり、日本のシロワニは遺伝的に独立した個体群です。飼育下で得られた繁殖データが、小笠原の野生個体群を守る役に立つかどうかが、これから問われることになります。
シロワニと水族館に関することや、シロワニに会える水族館については『シロワニと水族館!シロワニがいる水族館を紹介』をどうぞ!
参考文献一覧
(2)Aquarium of the Pacific, “Sand Tiger Shark Carcharias taurus”, 2021年7月1日に閲覧。
(3)Florida Museum, “DISCOVER FISHES Carcharias taurus”
(4)FishBase, “FishBase”
(5)アントネッラ フェッラーリ、谷内透監修『サメガイドブック―世界のサメ・エイ図鑑』TBSブリタニカ、2001年(初版第2刷)。
(6)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、 櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(7)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。
(8)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(9)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(10) David A. Ebert (著), Marc Dando (著), Sarah Fowler (著), Rima Jabado (はしがき, 寄稿) “Sharks of the World” Princeton University Press,2021年
(11) Rigby, C.L., Carlson, J., Chin, A., Derrick, D., Dicken, M. & Pacoureau, N. (2021) Carcharias taurus. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T3854A232113997. https://www.iucnredlist.org/species/3854/232113997 (accessed 2026-07-19).
(12) Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals (CMS) “Carcharias taurus”. https://www.cms.int/species/carcharias-taurus (accessed 2026-07-19). ※第14回締約国会議(2024年2月、ウズベキスタン・サマルカンド)で附属書Ⅰ・Ⅱへ掲載。
(13) アクアワールド茨城県大洗水族館 (2023)「シロワニ幼魚(個体番号:No.10)の死亡について」. https://www.aquaworld-oarai.com/2023/06/06/sandtigersharkbaby2-2/ (accessed 2026-07-19).
(14) 公益財団法人いばらき文化振興財団 (2025)「【アクアワールド茨城県大洗水族館】世界初の快挙!3度目の「シロワニ」繁殖に成功!」PR TIMES, 2025年3月18日. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000062197.html (accessed 2026-07-19).
(15) 東京新聞 (2025)「大型サメで絶滅危惧種「シロワニ」を守れ! アクアワールド県大洗水族館、3期連続の繁殖に成功 世界初」. https://www.tokyo-np.co.jp/article/394255 (accessed 2026-07-19).
(16) Chapman, D.D., Wintner, S.P., Abercrombie, D.L., Ashe, J., Bernard, A.M., Shivji, M.S. & Feldheim, K.A. (2013) The behavioural and genetic mating system of the sand tiger shark, Carcharias taurus, an intrauterine cannibal. Biology Letters, 9(3), 20130003.
(17) 環境省 (2017)「環境省版海洋生物レッドリスト(魚類)」. https://www.env.go.jp/content/000037627.pdf (accessed 2026-07-19).


