サメ好きならアカシュモクザメは人食いザメという話を一度は耳にしたことがあるはず。その原因が、1982年8月29日に熊本県の天草沖で起きたサメ事故です。今回のブログでは、アカシュモクザメは本当に人食いザメなのか、人間への危険性はあるのかということを解説します。
アカシュモクザメは人食いザメなの?人間への危険性は?

日本のサメ好きの方なら熊本県天草で起きたシュモクザメが犯人とされる事故のイメージでアカシュモクザメを怖いと思っている人も多いかもしれません。ここでは、アカシュモクザメの危険性や天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故について、アカシュモクザメの人食いザメとしての危険性について考察します。
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- シュモクザメ属(Sphyrna spp.)として18件(うち死亡0件)。2020年時点では17件だった。ISAFは種を特定せず属単位で記録している。
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件。1982年8月29日に熊本県天草で起きたサメ事故「天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故」の犯人がシュモクザメの一種といわれ続けているが、証拠もなく、ISAFには記録されておらず、事故についての論文でも不明とされている。
インターナショナルシャークアタックファイル(ISAF)は、シュモクザメによる事故を種ごとではなく、シュモクザメ属(Sphyrna spp.)としてまとめて記録しています。挑発されていない状況での事故は18件、うち死亡事故は0件です。(2026年7月確認。2020年時点では17件でした)
アカシュモクザメは、ダイバーが接近したときに脅威の姿勢を示す場合もあれば、攻撃的な行動を示さない場合もあると報告されています。
インターナショナルシャークアタックファイル(ISAF)の統計にはありませんが、1982年8月29日に熊本県天草で起きたサメ事故「天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故」の犯人がシュモクザメの一種と長年にわたっていわれています。
天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故とは
天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故とは
1982年8月29日午後1時40分頃、熊本県天草郡大矢野町串の西約1600メートル沖に浮かぶ羽干(はぼし)島(周囲約300メートル)近くの海で起きたサメ事故です。
救命胴衣と命綱をつけ、ヨットの船尾で遊泳していた13歳の女子中学生がサメに襲われて亡くなりました。遺体に残された歯型から、警察はサメによるものと判断しています。
ただし、サメの種類そのものは特定されていません。当時の現場周辺はサメが多い海域として知られていましたが、種の判別につながる調査は行われませんでした。
当時、現場の島原湾はサメが多い海域として知られていました。ただし、歯の痕跡からサメに襲われたことは確認されたものの、サメの種類そのものは特定されていません。
アカシュモクザメの人食いザメとしての危険性について考察
そもそも、アカシュモクザメはダイバーのブクブク音が嫌いで人間に対して臆病なサメです。また、インターナショナルシャークアタックファイル(ISAF)にも、シュモクザメ属による死亡事故の記録は1件もありません(※ただし、インターナショナルシャークアタックファイルに記録されてないサメ事故もあるので記録がないということが人を襲わないという証明にはならない)。
また、天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故が1982年に起こったことを考えると、どこまで調査したのか不明です。
たとえば、10年後の1992年に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)ですら、シャチが犯人説があったくらいです。
その当時近海でシュモクザメの目撃が多かったため、それが安易に報道されて犯人はシュモクザメということになったのでは・・・と思ってしまいます。
熊本県天草沿岸には、メジロザメの仲間も数種類出現しますし、他の中型〜大型サメが犯人という可能性もあるかもしれません。
今となっては真相を知りようがないですし、わかったところでどうしようにもないことですが。
ちなみに、サメ研究者の論文にはこの事故に関与したサメの種類については「不明」と記載されています。
アカシュモクザメの保全状況
アカシュモクザメが人を襲うかどうかを心配する前に、実はこのサメ自体が海から消えかけています。IUCNレッドリストでの評価は、次のように段階的に引き上げられてきました。
- 2000年:準絶滅危惧(NT)
- 2009年:絶滅危惧(EN)
- 2019年公表:深刻な危機(CR)※2018年評価
現在の評価は、Rigby et al.(2019a)による「深刻な危機(Critically Endangered, CR A2bd)」です。同評価によれば、アカシュモクザメは全長420cmに達する沿岸性・半外洋性のサメで、暖温帯から熱帯の海に世界的に分布します。
どれくらい減ったのか
Rigby et al.(2019a)は、北西大西洋・メキシコ湾、南太平洋、インド洋のデータをもとに、3世代(72.3年)あたりの世界全体の個体数減少を推定しました。その結果は、中央値で76.9〜97.3%の減少です。80%を超える減少となる確率が最も高い、という推定になっています。
減少はすべての海域で起きていますが、北西大西洋とメキシコ湾だけは、漁業管理の導入後に安定化と回復の兆しが見られると報告されています。
シュモクザメ3種の評価を比べる
東京都島しょ農林水産総合センターによると、日本近海のシュモクザメはアカシュモクザメが最も多く、次いでシロシュモクザメ、ヒラシュモクザメの順です。この3種は、保全状況でも評価が分かれています。
- アカシュモクザメ(Sphyrna lewini):深刻な危機(CR)/3世代で76.9〜97.3%減少(Rigby et al. 2019a)
- ヒラシュモクザメ(Sphyrna mokarran):深刻な危機(CR)(Rigby et al. 2019b)
- シロシュモクザメ(Sphyrna zygaena):危急(VU)/3世代で30〜49%減少(Rigby et al. 2019c)
シロシュモクザメの減少が3種のなかで比較的ゆるやかな理由について、Rigby et al.(2019c)は、この種がより温帯寄りに分布するため、小規模漁業の圧力にさらされる度合いが他の2種より低いことを挙げています。
国際的な規制
アカシュモクザメは、次のような国際的な枠組みの対象になっています。
- 2010年:大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が、条約水域でのシュモクザメ類の保持、転載、水揚げ、販売を禁止(開発途上国の国内消費には例外あり)
- 2012年:地中海一般漁業委員会(GFCM)が保持を禁止し、慎重な放流を義務づけ
- 2013年:ワシントン条約(CITES)附属書IIに掲載
- 2014年:ボン条約(CMS)附属書IIに掲載
ただしRigby et al.(2019a)は、これらの条約で合意された内容が各国の国内で実施されるかどうかが成否を分けるとしたうえで、サメについてはその実施が著しく不足してきたと指摘しています。
参考文献一覧
- Rigby, C.L., Dulvy, N.K., Barreto, R., Carlson, J., Fernando, D., Fordham, S., Francis, M.P., Herman, K., Jabado, R.W., Liu, K.M., Marshall, A., Pacoureau, N., Romanov, E., Sherley, R.B. & Winker, H. (2019a) Sphyrna lewini. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T39385A2918526. https://www.iucnredlist.org/species/39385/2918526 (accessed 2026-07-20).
- Rigby, C.L. et al. (2019b) Sphyrna mokarran. The IUCN Red List of Threatened Species 2019. https://www.iucnredlist.org/species/39386/2920499 (accessed 2026-07-20).
- Rigby, C.L. et al. (2019c) Sphyrna zygaena. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T39388A2921825. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T39388A2921825.en (accessed 2026-07-20).
- 東京都島しょ農林水産総合センター シュモクザメ類について. https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/27,1120,55,227.html (accessed 2026-07-20).

