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サメを学ぶ

ホホジロザメやサメの仲間がひっくり返ると気絶する理由は?

2023年12月9日

ホホジロザメやサメの仲間がひっくり返ると気絶する理由は?

今回のブログでは、ホホジロザメやサメの仲間がひっくり返ると気絶する理由について解説します。

ホホジロザメがひっくり返るとどうなる?

ホホジロザメがひっくり返ると擬死状態(ぎしじょうたい)という硬直不動状態になります。
この擬死状態というのは、簡単にいうと「死んだふり」のことです。ホホジロザメ以外のサメやエイなどの軟骨魚類、鳥類、哺乳類、魚類など、多くの動物が擬死を使います。

ロレンチーニ器官でも気絶

擬死状態はホホジロザメがひっくり返すだけではなく、サメやエイの鼻先(ロレンチーニ器官)を刺激することでも誘発できるそうです。ロレンチーニ器官はサメの弱点としてよく知られていますね。

どんなときにサメをひっくり返す?

研究者が生きたサメを調査する際にひっくり返して擬死状態にします。サメ好きな人ならドキュメント番組で見たことがあるかもしれませんね。野生、飼育下、実験室を問わずサメをひっくり返すことで、サメが暴れるのを最小限に抑えることができるので、研究者とサメの双方が怪我をする可能性を減らすことができます
また、擬死状態はサメの体に突然強い圧力がかかることで誘発されるとも考えられていて、漁師や研究者に捕まったとき、あるいは他の捕食者に襲われたときに体が動かなくなることがあるようです。

サメをひっくり返したときの流れ

サメをひっくり返すと、方向感覚を失うことで擬死状態になると考えられています。かかる時間は通常1分以内。擬死状態になると、サメの筋肉は弛緩し、呼吸と心拍数が減少することが特徴です。ひっくり返した状態から解放されると、サメは元に戻ります。
この擬死状態は最大15分間保つことができます。OCEARCHのホホジロザメのタグ付けや検査も10分以内を目標にしていましたね。あまりに長い時間、サメを擬死状態にしてしまうのはリスクがあるようです。サメを釣ったときなどに面白半分で試すのはやめてください。

サメをひっくり返したときに気絶するのは何のため

サメをひっくり返したときに気絶するのは何のためなのでしょうか。サメが擬死状態になることで得られるメリットは思いつきませんよね。小さな生きものの場合は擬死状態になることは防衛戦略のひとつでしょう。ところが、頂点捕食者(トッププレデター)で天敵はあまりいないサメにとってはそんなメリットはなさそうです。

交尾のために気絶する?

サメが擬死状態になることは交尾に関係しているのではないかと指摘する科学者もいるようです。どうやら、交尾中のオスの噛みつき行動と関連している可能性があるようですね。
サメの交尾はオスがメスに噛みつきます。オスがメスの胸ビレなどに噛みついて、メスを拘束することは擬死状態を誘発します。これによりオスは交尾の体勢を整えることができますし、交尾中にメスが暴れてオスが怪我をするリスクも減ります
コモリザメの求愛と交尾を観察した結果、擬死状態は交尾中の一般的な行動であることが判明しました。コモリザメのオスはメスの胸ビレや体に噛みつき、擬死状態を誘発してから交尾の体勢をとるそうです。この行動は、トラフザメやドチザメの仲間など、他の種類のサメでも観察されています。
わたしも水族館でマモンツキテンジクザメの交尾をみたことがあるんですが、メスが交尾の途中でクタッとして動かなくなったのですが、終わったあとは何事もなかったかのように泳いでいました 笑

どんなサメがひっくり返されると気絶する?

ホホジロザメ、イタチザメ、ヨシキリザメ、ツマグロ、ドチザメ、ネムリブカなど、さまざまな種類のサメが擬死状態になることが研究で明らかにされています。擬死状態はサメの大きさに関係ないようです。
擬死状態の持続時間は、サメの種類や誘発される状況によって異なります。たとえば、レモンザメをひっくり返したときと捕まえたときに擬死状態になった場合は、捕まえたときに擬死状態になったときの方が持続時間が長いそうです。

シャチはホホジロザメをひっくり返して気絶させる

研究者がサメをひっくり返して気絶させるのは命を奪わずに研究するためです。
ところが、海の世界ではそうはいきません。

シャチがホホジロザメをひっくり返す

シャチは捕食のためにホホジロザメをひっくり返して気絶させます(参考記事:「ホホジロザメ vs シャチはどっちが強い?大きい?」)。
1997年、カリフォルニア州北部および中部の沖合のファラロン諸島でシャチがホホジロザメを15分間も逆さまにしているのが目撃されました。これが意図的かどうかは不明ですがシャチによって擬死状態にさせられたホホジロザメは窒息死してしまったそうです。同様のことが2000年にも起きています。
ホホジロザメがシャチに攻撃されたときに最後の手段として擬死状態に入ることもあるそうですが、シャチの前では効果はなさそうですよね。

シャチはエイもひっくり返す

また、ニュージーランドでは、シャチがエイを狩るときにもひっくり返して気絶させているそうです。エイを攻撃する前にシャチは体を逆さまにして、エイを口にくわえたまま、素早く体を起こします。そうなると、エイはひっくり返ってしまいますね。
それを応用してサメをひっくり返すようになったのかは定かではありませんが、シャチが賢くてホホジロザメにとって怖い生き物というのは確かなのかもしれません。

まとめ

擬死状態がなぜサメにとって有用なのかはまだ解明されておらず、防御戦略や交尾に関連しているのではないかという仮説もありますが、確かなことはわかっていません。わたしの個人的な考えだと交尾がうまくいくように擬死状態になるのではないかと思います。実際にサメの交尾を見たことがあるのでなおさらそう考えてしまいます。
皆さんはどう思いますか?

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シャーク・アクティビストReinoとにゃぶり

シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 好きなものは、7 MEN 侍、SixTONES、永瀬廉(King & Prince)。ブログの執筆と監修を行っています。

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