海を代表するハンター、ホホジロザメ。その姿はどこかイルカに似ていると思いませんか?また、サメの不思議な生態から、ホホジロザメは哺乳類?魚類?そんな疑問を持つ人もいるかもしれませんね。
今回のブログでは、ホホジロザメが哺乳類ではなく魚類である理由や、イルカとの違いや共通点、そしてなぜ似た姿になったのかを解説します!
ホホジロザメとイルカの違い
ホホジロザメとイルカの違いは次の3つです。
- ホホジロザメは哺乳類ではなく魚類
- 尾びれの形が違う
- ホホジロザメは肺呼吸しない
ホホジロザメは哺乳類ではなく魚類
分類 | ホホジロザメ | バンドウイルカ |
---|---|---|
界 Kingdom | 動物界 Animalia | 動物界 Animalia |
門 Phylum | 脊索動物門 Chordata | 脊索動物門 Chordata |
綱 Class | 軟骨魚綱 Chondrichthyes | 哺乳綱 Mammalia |
目 Order | ネズミザメ目 Lamniformes | クジラ目 Cetartiodactyla |
科 Family | ネズミザメ科 Lamnidae | マイルカ科 Delphinidae |
属 Genus | ホホジロザメ属 Carcharodon | バンドウイルカ属 Tursiops |
種 Species | ホホジロザメ | バンドウイルカ |
ホホジロザメは軟骨魚類、イルカは哺乳類という大きな違いがあります。一般的な魚たちは硬骨魚類ですが、サメやエイは軟骨魚類に分類されます。
- 魚類:エラで呼吸し、卵を産むのが一般的。変温動物で、外気温によって体温が変化します。
- 哺乳類:肺で呼吸し、子どもを産んで母乳で育てます。恒温動物で、体温が一定に保たれます。
後述しますが、ホホジロザメは胎生の魚なので、哺乳類と誤解されてしまうのかもしれません。
尾びれの形が違う
サメには硬骨魚類のようなエラ蓋がないため、ぱっと見の印象は一般的な魚よりもイルカやクジラと近いかもしれません。ところがサメとイルカ・クジラには決定的な違いがあるんです。
ホホジロザメの尾びれとイルカの尾びれの比較してみると以下のような違いがあります。
- ホホジロザメ:上下非対称で、上葉が大きく下葉が小さい三日月形。
- イルカ:上下対称で、クジラやイルカの仲間は尾びれを上下に動かすことで推進力を得ます。
海面の三角形のヒレの持ち主はサメ?イルカ?
ジョーズなどのサメ映画でおなじみの海面からすーっと出てくる三角形のヒレ。
海面の三角形のヒレの持ち主はサメなのかイルカなのか・・・。
実はこれを見分ける方法があるんです。
前述のように、サメは泳ぐときに尾びれを左右に動かしますが、イルカやクジラは上下に動かします。
そのため、ヒレの持ち主がサメなら尾びれも水面から出ているはずです。
もしも海で三角形のヒレの持ち主がイルカなのかサメなのか見分けがつかないときは、尾びれが海面から出ているかどうかを確認してくださいね!
なぜホホジロザメを哺乳類だと誤解する人がいるのか
なぜホホジロザメを哺乳類だと誤解する人がいる理由は次の4つです。
- ホホジロザメは胎生
- ホホジロザメは赤ちゃんにミルクをあげる
- ホホジロザメは変温動物ではない
- ホホジロザメはスパイホップをする
ホホジロザメは胎生
ホホジロザメは魚類ですが、卵ではなく、お母さんザメが一年ほどかけて子宮の中で赤ちゃんを育てて出産する胎生のサメです。この点は哺乳類と似ています。ちなみに、サメ類のおよそ6割が私たちと同じようにお母さんザメが妊娠・出産をする胎生です。
ホホジロザメは赤ちゃんにミルクをあげる
ホホジロザメのお母さんは、赤ちゃんにミルクのようなものを与えます。厳密には哺乳類のように乳腺からミルクをあげるわけではありませんが、お腹の中で栄養豊富なミルクを作り出し、赤ちゃんに与えているのです。
サメの仲間には、一部のメジロザメのように胎盤を形成するものや、イタチザメのように栄養豊富な液体を赤ちゃんに与えるものもいます。そのため、サメの繁殖方法は、他の魚類と比べて非常に多様なのです。
ホホジロザメは変温動物ではない
生物学者の渡辺佑基さんの著書『進化の法則は北極海のサメが知っていた』によると、世界中におよそ2万5千種ほどいる魚類の中で、ホホジロザメ、ネズミザメ、アオザメなどのネズミザメ目のサメ類や、クロマグロやカツオなどのマグロ類の合わせて20種類ほどの魚類は体温が高いそうです。
ただし、一部のサメ類やマグロ類の体温が高いといっても、その体温は高くても30度程度なので、恒温動物の35〜40度程度の体温と比べると低いため、変温動物でもなく恒温動物でもないという位置付けになります。
ホホジロザメはスパイホップをする
シャチやイルカやクジラなどの海産哺乳類が水から垂直に頭を突き出すことをスパイホップといいます。この行動は、水面の近くで起きていることを観察しているのだと考えています。
ホホジロザメをはじめとする一部のサメが水面近くでほぼ垂直に頭を水面から出し、周囲を見渡す行動をことがあります。ホホジロザメは餌を探したり、好奇心でスパイホップをしているようです。
ホホジロザメとイルカはなぜ似ているのか
ホホジロザメは魚類なのに、その見た目は哺乳類のイルカと少し似ています。
これは、収斂進化(しゅうれんしんか)と呼ばれる現象で、異なる系統の生き物が似たような姿に進化することをいいます。ホホジロザメとイルカは似たような環境で生活し、どちらも水中を素早く泳ぐという似たような能力が求められた結果、流線型の体形に進化したと考えられます。
なお、タチウオとリュウグウノツカイも見た目が似ていますが、タチウオはスズキ目、リュウグウノツカイは赤マンボウ目の魚なんですよ。
おわりに
ホホジロザメとイルカの見た目の類似性は、収斂進化という自然の力によるものです。異なる環境で暮らす生物が、似たような形に進化する様子は、生物の多様性と同時に、自然の巧妙さを教えてくれます。
一般的な魚類とはかけ離れたサメの生態にはいまだ謎も多く、解明されていないことばかりです。そのミステリアスなところが、わたしたちの探究心を刺激し続けるのかもしれませんね。