ヨシキリザメは、青く美しい体と、細長い胸ビレを持つ外洋性のサメです。
世界中の温帯から熱帯の海に分布し、日本近海でも漁獲されています。水揚げ量が多いサメの一種ですが、生きた姿を水族館で見る機会は多くありません。
この記事では、ヨシキリザメの特徴、大きさ、生息域、食べ物、繁殖、人間への危険性、水族館での飼育記録について解説します。
ヨシキリザメとは

ヨシキリザメは、メジロザメ目メジロザメ科ヨシキリザメ属に分類されるサメです。
英語では「Blue shark」、学名は「Prionace glauca」といいます。
ヨシキリザメ属に現生する種は、ヨシキリザメ一種だけです。
- 標準和名
- ヨシキリザメ
- 英語名
- Blue shark
- 学名
- Prionace glauca
- 分類
- メジロザメ目メジロザメ科ヨシキリザメ属
- 分布
- 世界の熱帯、亜熱帯、温帯の外洋
- 大きさ
- 大型個体は全長3mを超え、最大で約3.8m
- 食べ物
- イカなどの頭足類、魚類、甲殻類など
- 繁殖方法
- 胎生
- 妊娠期間
- 約9〜12か月
- 産仔数
- 海域によって異なり、CMSの資料では1〜68匹、平均34匹
- 成熟年齢
- オスはおよそ4〜6歳、メスはおよそ5〜7歳
- 寿命
- 20歳程度に達すると考えられている
- 保全状況
- IUCNレッドリスト:準絶滅危惧(NT)
- ワシントン条約
- 附属書II
※大きさ、成熟年齢、産仔数などは、調査海域や研究によって異なる値が報告されています。
ヨシキリザメの特徴

ヨシキリザメの大きな特徴は、細長い体、尖った吻、そして長く伸びた胸ビレです。
背中は濃い青色、体側は鮮やかな青色、腹側は白色をしています。上から見たときは海の色に溶け込み、下から見たときは明るい海面へ溶け込みやすい体色です。
このように、背中側を暗く、腹側を明るくする体色は「カウンターシェーディング」と呼ばれます。
ヨシキリザメは、細長い体と青い体色から、世界でも特に美しいサメの一種として紹介されることがあります。
ただし、漁獲されて時間が経過すると、鮮やかな青色は失われていきます。そのため、市場や加工された状態だけを見ても、生きているヨシキリザメの青さは分かりにくいかもしれません。
ヨシキリザメの歯
ヨシキリザメの上顎には、先端が斜めに傾き、縁が鋸歯状になった三角形の歯が並んでいます。
一方、下顎の歯は上顎の歯より細く、獲物を押さえるのに適した形をしています。
上顎の歯で獲物を切り、下顎の歯で押さえるという、異なる形の歯を組み合わせています。
ヨシキリザメの大きさ
ヨシキリザメは大型のサメで、成長した個体は全長2mを超えます。大型個体は3mを超え、最大で約3.8mに達します。
ただし、すべてのヨシキリザメが3mを超えるわけではありません。性別、年齢、海域によって体の大きさは異なります。
ヨシキリザメは細長い体をしているため、同じ全長のホホジロザメやイタチザメと比べると、体はかなり華奢に見えます。
ヨシキリザメの分布と生息域
ヨシキリザメは、世界の熱帯、亜熱帯、温帯の海に広く分布しています。
沿岸の海底付近で暮らすサメではなく、主に外洋を泳ぐサメです。公海と各国の排他的経済水域を行き来し、国境を越えて長距離を移動します。
幼魚、未成熟個体、成魚のいずれも回遊しますが、性別や年齢によって分布する場所が分かれることがあります。
日本では太平洋側を中心に漁獲され、気仙沼港はヨシキリザメの主要な水揚げ港として知られています。
水産研究・教育機構の資料によると、日本ではヨシキリザメの肉が練り製品などに使われるほか、ヒレ、軟骨なども利用されています。
ヨシキリザメは何を食べるの?
ヨシキリザメは、主にイカなどの頭足類や、外洋を泳ぐ魚を食べます。
このほか、小型のサメ、甲殻類、海鳥などを食べることもあります。また、生きた獲物だけでなく、動物の死骸を食べることもあります。
海域や季節によって手に入る餌が異なるため、ヨシキリザメの胃内容物も、調査した場所によって変わります。
複数のヨシキリザメが餌の集まる場所へ集まることはありますが、オオカミのような階級を持つ群れをつくり、組織的に協力して狩るとまでは確認されていません。
ヨシキリザメの生態と回遊
ヨシキリザメは、非常に広い範囲を移動する高度回遊性のサメです。
標識調査や衛星追跡調査では、海流や水温、餌、繁殖周期に応じて、長距離を移動することが分かっています。
同じ海域にすべての個体が集まっているわけではありません。幼魚と成魚、オスとメスで分布が分かれる「棲み分け」も見られます。
このため、一部の海域だけを調べても、ヨシキリザメ全体の個体数や生活を把握することはできません。
国境を越えて回遊するヨシキリザメを保全するには、一つの国だけではなく、各国や地域漁業管理機関による協力が必要になります。
ヨシキリザメの繁殖
ヨシキリザメは胎生のサメです。
母ザメのお腹の中では、胎仔と母体が胎盤に似た器官でつながり、母体から栄養を受け取って成長します。
妊娠期間は約9〜12か月です。
産仔数は海域や母ザメの大きさによって異なります。移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)の資料では、1〜68匹、平均34匹とされています。
過去の資料ではさらに多い産仔数が紹介されることもありますが、すべての海域で同じ数の子どもを産むわけではありません。
オスはおよそ4〜6歳、メスはおよそ5〜7歳で成熟するとされています。
ヨシキリザメの寿命
ヨシキリザメの年齢は、主に脊椎骨に形成される成長帯などを調べて推定します。
CMSは最大年齢を20歳としています。ただし、野生のサメの年齢を正確に調べることは難しく、寿命の推定値は研究方法や海域によって変わることがあります。
そのため、「必ず20歳で寿命を迎える」という意味ではありません。
ヨシキリザメは危険なサメ?人間を襲うの?
ヨシキリザメは大型の肉食性のサメであり、鋭い歯を持っています。そのため、接近した個体へ不用意に触れたり、餌を与えたりするべきではありません。
一方で、人間への咬傷が頻繁に起きているサメではありません。
フロリダ自然史博物館の国際サメ被害目録(ISAF)では、ヨシキリザメが関与したと確認された非誘発性の咬傷事故は13件です。そのうち9件は非死亡事故、4件は死亡事故として集計されています。
ただし、この数字には注意が必要です。
サメ事故では、原因となったサメの種類を正確に確認できない場合があります。また、古い事故の記録には、現在の基準では種を特定できないものも含まれます。
したがって、「13件だから安全」「死亡例があるから人食いザメ」と単純に判断することはできません。
ヨシキリザメは、一般に人間を積極的に狙うサメとは考えられていません。しかし、好奇心を示して人や船へ近づくことがあります。餌や血液がある場所、漁獲された魚が集まる場所では、行動が変わることもあります。
ヨシキリザメに対する私の印象
以前、ディスカバリーチャンネルの番組で、目の細かい金属製のシャークスーツを着たダイバーが、ヨシキリザメのいる海へ入る映像を見た記憶があります。
番組名や映像は現在確認できていませんが、そのヨシキリザメはダイバーの周囲をしばらく泳ぎ、その後、スーツへ噛みついていました。
その映像を見た私は、ヨシキリザメに対して「人間を極端に怖がり、近づくこともできないサメ」という印象は持ちませんでした。
これは研究結果ではなく、私が映像を見たときの個人的な感想です。
ヨシキリザメとアオザメの違い
ヨシキリザメとアオザメは、どちらも外洋を泳ぎ、名前に青色を連想させる言葉が入っているため、混同されることがあります。
しかし、分類も体型も異なるサメです。
- ヨシキリザメ:メジロザメ目メジロザメ科。体は細長く、胸ビレが非常に長い。
- アオザメ:ネズミザメ目ネズミザメ科。体は筋肉質で、吻が尖り、胸ビレはヨシキリザメほど長くない。

この写真はヨシキリザメの写真です。
ヨシキリザメは、長い胸ビレと細長い体、鮮やかな青い背中が特徴です。
少し長めのお顔と愛嬌のある瞳も個性的ですね。

この写真はアオザメ(Shortfin Mako Shark / Isurus oxyrinchus)の写真です。
アオザメは、マグロのように引き締まった体を持ち、高速で泳ぐことに適した形をしています。
ヨシキリザメと比較すると、尖った顔をしていて目も真っ黒!
メタリックな体色とホホジロザメと少し似ている顔も特徴です。
同じ「青い外洋性のサメ」でも、姿を比べると違いは明確です。
ヨシキリザメは絶滅危惧種なの?
ヨシキリザメは、IUCNレッドリストで準絶滅危惧(NT)と評価されています。
準絶滅危惧は、絶滅危惧種に分類される一歩手前の区分です。「絶滅の心配がない」という意味ではありません。
ヨシキリザメは、世界の外洋に広く分布し、外洋性のサメの中では比較的多い種とされてきました。
しかし、マグロやカジキを対象とする延縄漁などで大量に混獲されます。肉やヒレが利用されるため、混獲後に水揚げされることもあります。
個体数の傾向や漁業の影響は海域によって異なるため、各海域の資源評価と漁獲管理が必要です。
ワシントン条約の附属書IIに掲載
ヨシキリザメは、ワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載されています。
ヨシキリザメを含むメジロザメ科の掲載は、2023年11月25日に発効しました。
附属書IIへの掲載は、ヨシキリザメの国際取引を全面的に禁止するものではありません。
輸出国は、取引が野生個体群の存続を脅かさないことを確認し、必要な許可書を発行する必要があります。
ヨシキリザメは水族館で飼育できるの?
ヨシキリザメを水族館で飼育することは可能です。
ただし、長距離を泳ぐ外洋性のサメであり、輸送、搬入、給餌、水槽内での衝突防止、健康管理には高い技術が必要です。
そのため、一般的な水族館で長期間飼育されているサメではありません。
葛西臨海水族園の飼育記録
葛西臨海水族園は、1999年にヨシキリザメを246日間飼育しました。
東京動物園協会によると、これは当時の最長飼育記録でした。
2020年にも、クロマグロが泳ぐ「大洋の航海者」水槽でヨシキリザメを展示しています。
飼育員は、水槽の底へアジやイカを落として給餌していました。ヨシキリザメがクロマグロ用の餌へ近づき、拾って食べる様子も確認されています。
仙台うみの杜水族館の飼育記録
仙台うみの杜水族館では、2018年7月27日からヨシキリザメの幼魚を飼育しました。
この個体は宮城県の志津川湾に設置された定置網で捕獲され、漁業者から水族館へ提供されたものです。
搬入時は全長51cm、体重345gでした。
2019年7月には飼育期間が1年を超え、全長95cm、推定体重2.7kgまで成長したと発表されました。
その後も飼育が続き、2020年12月15日に死亡するまでの飼育期間は873日でした。
これは国内最長の飼育記録です。
また、同館が2023年11月29日から飼育した別の個体は、2025年4月に飼育503日へ達しました。同館によると、歴代2番目に長い飼育記録です。
現在ヨシキリザメを見られる水族館は?
ヨシキリザメの展示は、個体の搬入や健康状態によって変わります。
過去に飼育記録がある水族館でも、現在展示されているとは限りません。
ヨシキリザメを見るために水族館へ行く場合は、訪問前に水族館の公式サイトや公式SNSで展示状況を確認してください。
ヨシキリザメはペットとして飼育できるの?
ヨシキリザメを家庭でペットとして飼育することは現実的ではありません。
成長すると全長2〜3mを超える大型のサメです。また、外洋を長距離移動するため、家庭用の水槽では必要な遊泳空間を確保できません。
海水、酸素、水温、水質を安定させる設備だけでなく、輸送、給餌、治療にも専門的な技術が必要です。
水族館でも長期飼育が難しいサメであり、家庭で飼育できる動物ではありません。
まとめ
ヨシキリザメは、鮮やかな青い体と長い胸ビレを持つ外洋性のサメです。
世界中の熱帯から温帯の海を回遊し、主にイカや魚を食べています。
大型の肉食性サメですが、人間を主な獲物としているわけではありません。確認された咬傷事故はあるため、野生の個体には適切な距離を取る必要があります。
日本では漁業によって数多く水揚げされ、肉、ヒレ、軟骨などが利用されています。一方、世界的には漁業による影響を受けており、IUCNレッドリストでは準絶滅危惧に評価されています。
水族館で飼育された例もありますが、外洋を回遊する性質から長期飼育は簡単ではありません。
生きたヨシキリザメの鮮やかな青色は、水揚げ後の姿だけでは分かりません。水族館で出会える機会があれば、その色と長い胸ビレ、独特の泳ぎ方を観察してみてください。
参考文献一覧
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- 東京動物園協会(2020)珍しい、だけど身近なサメ──ヨシキリザメ.葛西臨海水族園公式サイト (accessed 2026-07-13).
- 株式会社横浜八景島(2019)仙台うみの杜水族館 国内飼育最長記録更新中!ヨシキリザメ飼育1年.公式発表 (accessed 2026-07-13).
- 仙台うみの杜水族館(2020)ヨシキリザメ死亡について.公式発表、2020年12月17日。
- 仙台うみの杜水族館(2025)2023年11月29日から飼育したヨシキリザメの飼育記録について.公式X (accessed 2026-07-13).


