イタチザメといえば、ホホジロザメと並ぶ大型のサメです。
このブログでは、好奇心旺盛で見た目もかわいいイタチザメの特徴、食性、分布域、季節回遊、日本国内での生息域、危険性、人食いザメなの?という疑問や、イタチザメの気になる生態などについて詳しく解説します。
おすすめのイタチザメ動画も紹介します。
イタチザメとはGaleocerdo cuvier (Péron & Lesueur, 1822)

分類Scientific Classification
イタチザメは最近までメジロザメ科のサメとして分類されていましたが、形態的・生物学的に明確な違いがあり、遺伝的に異なるためイタチザメ科に分類されるようになりました (Ebert, Fowler, & Dando, 2021)。
このイタチザメ科は最近復活した1属1種の科です。
2026年現在も、イタチザメ科 Galeocerdonidae > イタチザメ属 Galeocerdoに属するサメはイタチザメのみです。
※IUCNレッドリストの評価書(2019年公表)では、イタチザメは従来どおりメジロザメ科として扱われていました。イタチザメ科として独立させる分類は、その後の研究にもとづくものです。
- 界 Kingdom
- 動物界 Animalia
- 門 Phylum
- 脊索動物門 Chordata
- 綱 Class
- 軟骨魚綱 Chondrichthyes
- 亜綱 Subclass
- 板鰓亜綱(ばんさいあこう) Elasmobranchii
- 亜区 Subcohort
- サメ亜区 Selachii
- 上目 Superorder
- ネズミザメ上目 Galeomorphi
- 目 Order
- メジロザメ目 Carcharhiniformes
- 科 Family
- イタチザメ科 Galeocerdonidae
- 属 Genus
- イタチザメ属 Galeocerdo
- 種 Species
- イタチザメ Galeocerdo cuvier
イタチザメの基本情報
まず、イタチザメの基本情報を紹介します。
- 標準和名
- イタチザメ(鼬鮫)
- 別名
- サバブカ(鯖鱶)、イッチョー(沖縄県)、トラ(東京市場)、海のゴミ箱、maneater shark(人食い鮫)
- 英語名
- Tiger Shark
- 学名
- Galeocerdo cuvier
- 学名の読み方
- ガレオセルド・キュヴィエ
- 保全状況
- 準絶滅危惧(NT / Near Threatened)
- 分類
- メジロザメ目 > イタチザメ科 > イタチザメ属
- 生活様式
- 遊泳性
- 歯の形状
- ノコギリ状の歯
- 大きさ
- 平均的な全長は4m〜5m
※東京都島しょ農林水産総合センターは、平均的な大きさを4〜6mと記載しています。
- 最大全長
- 記録されている最大サイズは全長(TL)740cmだが、500cmを超える個体はめったに見られない(Ebert et al. 2021)
※740cmは実測の裏づけがない記録です。査読論文で実測された最大値は550cmです。詳しくは「イタチザメの最大記録7.4mは本当なの?」をご覧ください。
- 体重
- 385〜635kg(Florida Museum 2018)
※最大級の個体は900kgを超えると推定されています(Florida Museum 2018)。
- 泳ぐ速度
- ふだんはゆっくり泳ぐが、獲物をとらえるときは短時間だけ加速する(Florida Museum 2018)
※野外で計測された平均遊泳速度は時速およそ2.5kmです(Watanabe et al. 2012、国立国会図書館リサーチ・ナビ経由で参照)。同じ表では、ジンベエザメが時速3.1km、アオザメが時速3.2km、ニシオンデンザメが時速1.2kmとされています。
- 世代時間
- 17.5〜22.5年(Ferreira & Simpfendorfer 2019)
- 最大寿命
- 実際に確認された最高齢はオス20歳、メス22歳(Kneebone et al. 2008)
※イタチザメの年齢は脊椎骨の輪紋を数えて調べます。爆弾実験由来の放射性炭素をつかった検証で、輪紋が年に1本ずつ形成されることが20歳まで確認されています(Kneebone et al. 2008)。
- 寿命(推定)
- 27~37歳(Ferreira & Simpfendorfer 2019)
※これは成長式から計算された推定値で、実際に確認された年齢ではありません。Kneebone et al. 2008はオス27歳・メス29歳と推定したうえで、この数字が本当の寿命を過小評価している可能性が高いと述べています。オーストラリア国内の評価報告書は27〜33歳としており、資料によって幅が異なります。
- 生息年代
- ポリネシアの神話に登場
- 命名された年
- 1822年
※原記載は Squalus cuvier Péron & Lesueur, 1822(Florida Museum 2018)。資料によって1822年と1823年の表記が混在しています。
- 特徴
- すべてのサメの中で最も幅広い食生活、視力が高く、嗅覚は非常に鋭い
- 性格
- 食いしんぼう
- サメの生態
- 夜行性。単独行動を好む。2,500km以上の季節回遊。(東京都島しょ農林水産総合センター)
- 好きな食べ物
- 魚、ウミガメ、アザラシ、ウミヘビ、イルカ、海鳥類、哺乳類、仲間を含むサメ。多種多様な海洋の獲物だけではなく陸生動物まで!
- サメが住んでいる水深
-
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
-
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
イタチザメは危険な人食いザメなの?
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 142件のサメ事故(1580-2026年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 39件のサメによる死亡事故(1580-2026年)
イタチザメは危険な人食いザメなの?という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
562種のサメ(2025年12月時点)のうち人間にとって危険なサメはごくわずかです。イタチザメは、平均的な大きさが4m〜5mの大型のサメなので人間にとって危険なサメに分類されています。
人間に挑発されていないにも関わらず発生するシャークアタックのほとんどは、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメ、ヨゴレによるものといわれています。
イタチザメは危ない?
イタチザメは、平均的な大きさが4mから5mという大型のサメです。イタチザメによるサメ事故はホホジロザメに次いで2番目に多いため(ISAF)、人間にとって危険なサメの一種です。海中でイタチザメに遭遇した場合は、十分な注意が必要です。
イタチザメの怖いところは、海洋のさまざまな環境に適応しており、外洋まで出ることもできるかと思えば、水深が膝くらいまでしかない浅瀬や波打ちぎわなどの非常に浅い場所にも現れることも稀にあることです。フィッシュベースにもイタチザメの生息域は水深0m〜と記載されています。
大型のイタチザメが目撃されたばかりの場所での遊泳は控え、常に周囲に注意を払いましょう。イタチザメは攻撃的な性格で知られていますが、過剰な心配は必要ありません。冷静な判断と適切な行動で安全を確保しましょう。
イタチザメは人間を食べる?
イタチザメは大型なので人間にとって危険なサメです。実際にイタチザメによりシャークアタックも発生しています。しかしながら、イタチザメが人食いザメで人間を好んで食べるということはまず考えられません。
イタチザメは波打ちぎわなどの非常に浅い場所にも現れることもあるため、もしも人間を好んで食べるとしたらもっと多くのサメ事故が起きるはずだからです。
そのようなことは、サメ映画の中でしか起きていません。
イタチザメによるサメ事故の発生件数
インターナショナルシャークアタックファイル(ISAF)によると、1580〜2026年までに起きたイタチザメによるシャークアタックの回数は142件です。そのうち、イタチザメによるシャークアタックで怪我をした人は103人、最悪の結果となってしまったのは39人です。
※ISAFの表は1580年からの累計です。上記の数値は2026年8月3日に確認したものです。
▼日本で起きたイタチザメによるサメ事故はこちら
サメ事故は年間何件?日本に生息する人食いザメの種類・分布・危険性
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態などについても詳しく学べるので初心者におすすめの一冊!
イタチザメがダイバーにシャークアタックする動画
ダイビング中にダイバーがイタチザメに攻撃される動画です。
幸いマスクを剥ぎ取られただけで襲われたダイバーは無事ですが、やはり野生生物の行動は予測できないということを改めて考えさせられます。
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態などについても詳しく学べるので初心者におすすめの一冊!
イタチザメと人との関わり
イタチザメによる人間への攻撃報告数ではホホジロザメ(Carcharodon carcharias)に次いで2位です。イタチザメは好奇心旺盛なサメですが、遭遇しても攻撃的ではないことがほとんどです(Compagno et al. 2005)。バハマのタイガービーチではケージなしのイタチザメとのダイビングが人気です。そうはいっても、サメによる襲撃や最悪の結果となってしまった事故に多く関与している3種のサメのうちの1種なので、細心の注意と野生に生きる彼らへの多大な敬意をもって接する必要があります(ISAF)。
イタチザメは潮が引いた時に姿を現すリーフ(サンゴ礁)や港、運河にも現れることがあります。たとえば、ハワイの海では、メスが9月から11月の間に出産のために島に移動するため、イタチザメと人間の遭遇が増加するそうです(Main 2023)。
イタチザメは絶滅危惧種?
イタチザメは絶滅危惧種?
イタチザメは絶滅危惧種ではありませんが、IUCNレッドリストで絶滅危惧種の一歩手前の準絶滅危惧種と評価されています(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。
| 絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
| どこにもいない |
ほぼ絶滅 |
かなりやばい |
やばい |
やばそう |
そろそろやばい |
今は心配なし |
| メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
| - | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
| - | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『【2025年12月版】絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ』で解説しています。
イタチザメはサメ漁、混獲、駆除などで捕獲されています。イタチザメはフカヒレ、サメ皮、肝油としてだけではなく、肉や軟骨も利用されています。イタチザメのヒレは、香港のフカヒレ取引で一般的に扱われる種のひとつです(Clarke et al. 2006)。
イタチザメはサメの中では多産なサメですが、今後もフカヒレへの需要が続くと、個体数が減少してしまい絶滅危惧種になってしまう可能性があります。
IUCNは世界全体でどれくらい減ったと見ているのか
IUCNの評価書は、イタチザメが過去3世代(53〜68年)のあいだに、世界全体でおよそ30%近く減少したと推定しています(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。減少の原因として挙げられているのは、商業漁業、遊漁、規制されていない漁業、そして海水浴場のサメ駆除プログラムです。
評価書は、この状態を「危急種(VU)の基準にあと少しで届く準絶滅危惧」と説明しています。さらに、現在の漁獲が続けば、2018年から2086年までの3世代でもう一段の減少が起きると見ています。
イタチザメは、他のメジロザメ類とくらべると個体数が増えやすい性質をもっています。ところが、繁殖が3年に1度であるため、いちど減ってしまうと回復に時間がかかります。
※この評価は2018年に実施され、2019年に公表されたものです。確認できた範囲では、2026年8月時点でこれより新しい世界評価は公表されていません。
地域によって評価は違う
IUCNの評価書は、地域ごとの状況も分けて説明しています。アラビア海地域では、イタチザメは世界評価より一段深刻な危急種(VU)と評価されました(Jabado et al. 2017)。
アラブ首長国連邦では、水揚げ量がおよそ90%減ったという調査があります。かつて普通に見られた紅海では、近年の調査で確認されていません。インドとパキスタンでは20〜30%の減少が記録され、全長3mを超える個体が漁獲物から姿を消しています。
一方、西部北大西洋と南アフリカでは、単位努力量あたりの漁獲量が増える傾向も報告されています。ただし評価書は、この増加をクイーンズランド州で最初の20年間に見られた傾向と似ているとして、慎重に解釈すべきだと述べています。
海水浴場のサメ駆除プログラムとイタチザメ
イタチザメは、海水浴場を守るためのサメ駆除プログラムで狙われる主な種のひとつです。実施しているのはオーストラリア、南アフリカ、そして近年はレユニオン島です。
オーストラリアのクイーンズランド州サメ駆除プログラムは、1993年から2010年までに4,757個体のイタチザメを捕獲しました(Holmes et al. 2012)。ニューサウスウェールズ州の防鮫網では、1950年から2008年まで年間およそ30個体が捕獲されています(Reid et al. 2011)。
南アフリカのクワズール・ナタール州の防鮫網では、1978年から2003年まで年間およそ50個体が捕獲されました。1989年以降、生きたまま網にかかった個体は放流されていますが、それでも捕獲された個体の27%は死亡しています(Dudley and Simpfendorfer 2006)。
IUCNの評価書は、ニューサウスウェールズ州について、60年間で漁獲物に占める成熟個体の割合が大きく減ったことを挙げ、この駆除プログラムが個体群そのものへ影響している可能性を指摘しています。
イタチザメはブルーカーボン生態系の守護者!?
1991年よりユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されているオーストラリア・西オーストラリア州の西海岸中央部ガスコイン地域のシャーク湾 (Shark Bay) にもイタチザメが生息しています。
海草は小魚たちの隠れ家や、草食性の魚たちの食料であり、シャーク湾の生態系を支えています。
ところが、2011年、西オーストラリアではこれまでにない極端な海洋熱波により海草は大きな被害を受けてしまいました。
その後、海草は徐々に復活を遂げているのですが、フロリダ国際大学のMichael Heithausらの研究チームは、イタチザメが頻繁に訪れる場所では海草がより高い速度で成長することに気づきました。
この原因は、海草を食べるのが好きなウミガメやジュゴンをイタチザメが怖がらせるためだとみられています(Heithaus et al.、Mancini 2018)。
イタチザメへの恐怖心が結果として海草の成長を促したというおもしろいサメエピソードですね。
まるでブルーカーボン生態系の守護者のようです。
イタチザメの生態
イタチザメは、かつてはメジロザメ科のサメでしたが、他のメジロザメ科のサメとは遺伝子的に異なるためイタチザメ科に分類されるようになりました。
大きさ
イタチザメは、海で見られる魚類の中で最大の種のひとつで、平均的なイタチザメはジンベエザメ、ウバザメ、ホホジロザメの次に大きなサメや魚として位置づけられています。
※ニシオンデンザメ、メガマウスザメ、カグラザメなど、体長ではイタチザメと重なる種もいます。ただしこれらは研究例が少なく、成熟個体の平均サイズが確認されていないため、順位を厳密に比べることは難しい状態です。
記録されている最大サイズは全長7.4mですが、5mを超える個体はめったに見られないそうです(Ebert et al. 2021)。成熟したメスは274〜345cm、オスは250〜305cmとされています(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。
ほとんどの大型海水魚種と同じく、メスのイタチザメはオスのイタチザメよりもはるかに大きく成長します。
メスのイタチザメは赤ちゃんザメをお腹の中で育てるために胴回りがしっかりとするためです。
イタチザメの最大記録7.4mは本当なの?
イタチザメの最大全長には、大きく異なる数字がいくつも残されています。
1937年、Norman & Fraserは910cmという数字を挙げました。この数字はCompagno 1984にも引用されましたが、根拠となる標本が見当たらず、Randall 1992は信頼できない記録だと述べています。
1961年、Fourmanoirはインドシナで得られたメスについて、全長740cm・体重3,110kgという報告を紹介しました。これがCompagno 1984を経て広まり、現在も「最大740cm」として引用されています。ただしこの個体を研究者が実際に測定した記録はなく、他のどの標本よりも大幅に大きいことから、Simpfendorfer et al. 2001は疑わしい記録だとしています。
一方、実測にもとづく数字はもっと小さいところに集まっています。オーストラリア・クイーンズランド州のサメ駆除プログラムで測定された4,757個体のうち、最大はメスの550cmでした(Holmes et al. 2012)。Meyer et al. 2014は、イタチザメの最大サイズは通常380〜450cm TLで、550cm TLに達する個体はわずかだとまとめています。
つまり740cmは「報告として残っているが、裏づけのない記録」、550cmが「査読論文で実測された最大値」ということになります。
見た目の特徴
模様の特徴
イタチザメは美しい縞模様をもつサメで、その模様は成長とともに変化します。
赤ちゃんのイタチザメは、丸みを帯びた灰色の斑点で覆われています。
わかりやすくいうとサバのような模様です。
この模様はサメが成熟するにつれて縞模様に融合していき、縞模様は薄れていきます(東京都島しょ農林水産総合センター、Florida Museum 2018)。
歯の特徴
引用:沖縄美ら海水族館
イタチザメの歯はハート形です。

ハート型というとかわいいイメージになってしまいますが、イタチザメの歯はウミガメの甲羅を砕くこともできます。
一見かわいいのに怖いですね。
イタチザメの寿命
イタチザメの寿命は27~37歳と推定されています(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。ただしこれは成長式から計算された推定値で、実際に確認された最高齢はオス20歳、メス22歳です(Kneebone et al. 2008)。
ホホジロザメやオオメジロザメなどの他の大型種のサメと比較すると少し短く感じてしまいますね。
イタチザメの繁殖
- 妊娠期間
- 約15〜16か月(Ferreira & Simpfendorfer 2019)
- 産仔数
- 最大82匹、平均26〜33匹(Ferreira & Simpfendorfer 2019)
- 幼魚の大きさ
- 51〜90cm(Ferreira & Simpfendorfer 2019)
- 繁殖サイクル
- 3年ごと
- 成熟年齢
- 4~13歳
※産仔数については、世界全体で6〜104匹という報告もあり、最も多いのは30〜40匹とされています(Natanson et al. 2023)。西部北大西洋では、成熟する年齢の中央値がメス11.5歳、オス9.5歳と算出されています。
いつ成熟する?
イタチザメの成熟年齢は4~13歳(Branstetter et al. 1987、Smith et al. 1998、Natanson et al. 1999、Afonso et al. 2012、Meyer et al. 2014、Holmes et al. 2015)と推定されています。イタチザメのサイズと成熟年齢には地域差があり、メスは274~345cm、オスは250~305cmで成熟するとみられています(Compagno 1984, Randall 1992, Simpfendorfer 1992, Wintner and Dudley 2000, Whitney and Crow 2007, Holmes et al. 2015)。
妊娠期間や赤ちゃんザメの数
イタチザメは母ザメがお腹の中で赤ちゃんを育てる胎生のサメです。
一度に出産する赤ちゃんザメの数は最大82匹、平均は26~33匹です(Tester 1969, Bass et al. 1975, Simpfendorfer 1992)。
生まれたばかりの人間の赤ちゃんの身長は平均で約50㎝。それに対して、生まれたばかりのイタチザメの赤ちゃんの大きさは51〜90cmなので、個体によっては人間の赤ちゃんの2倍近くの大きさになります(Randall 1992, Simpfendorfer 1992)。
イタチザメの妊娠期間は約15~16か月です。人間の妊娠期間が10か月なので、イタチザメのお母さんは人間とほぼ同じか、少し長い期間お腹で赤ちゃんを育てているということになります。
ハワイとオーストラリアでの繁殖サイクルは3年に1度とみられています(Whitney and Crow 2007, Holmes 2015)。
胎生のイタチザメの栄養源は?
胎生のイタチザメですが、お母さんザメの胎内で成長するための栄養源については未解明でした。
メジロザメのグループのほとんどの種は哺乳類のように胎盤を持っていますが、イタチザメには胎盤がありません。
50〜90cmというサイズで生まれてくるイタチザメの子供はどのようにして栄養をとり、成長しているのかということは謎に包まれていたのです。
そんな中、2016年、沖縄美ら島財団は妊娠中のイタチザメの子宮は有機物が含まれる液体で満たされていることを発表しました(Castro et al. 2016)。
この液体には、何か特定の物質が分泌されているわけではなく、まるでスープのようにさまざまな有機物が含まれているそうです。
イタチザメの子供たちは、このスープ状の液体で栄養を吸収して、すくすくと育っているのですね。
イタチザメのお腹の中の赤ちゃんサメ動画
イタチザメのお腹の中の赤ちゃんサメ動画を紹介します。
全長3.8メートルもある妊娠中のイタチザメに超音波検査を行っている動画です。
この動画では母イタチザメのお腹の中に20匹の赤ちゃんサメがいることを発見します。
イタチザメは一度に80匹もの赤ちゃんサメを産む多産なサメといわれていますが、30匹が平均的な出産数のようです。
イタチザメの食性
まさかこんなものまで!?といいたくなるイタチザメの食生活。
魚類、ウミガメ(甲羅も砕く)、ワニ、クジラ、甲殻類、海産哺乳類、鳥類、爬虫類、同じ種の仲間も含むサメ類まで何でも食べてしまいます(東京都島しょ農林水産総合センター)。
死んだ獲物でも気にせず食べ、ときには車のタイヤ、ペンキ缶、ペットボトル、ビール瓶、革のジャケットなどの服、ライセンスプレートなどの人工物まで飲み込んでしまうほどの食いしん坊!
水深が膝くらいまでしかない浅瀬にも近寄ってくるので、馬や羊なども食べてしまうことも。
※映画「ジョーズ」で、フーパーが死んだイタチザメの胃からルイジアナプレートを引っ張るそのシーンは科学的にも正確
ハワイ沖で捕獲されたイタチザメの胃の中からは、ネズミ、犬、猫、馬など、さまざまな動物が発見されたとか。
その雑食性の食べ方のおかげなのか、びっくりするぐらい大きく成長する個体もいます。
食事中のイタチザメ
死んだクジラを捕食するイタチザメの動画です。
イタチザメが海草をくわえている(食べている??)シーンもあります。
食事中の動画が苦手な方はスルー推奨です。
イタチザメの分布域と生息域
- 分布
- 熱帯および亜熱帯の周辺海域。
- 日本国内での分布域
- 沖縄、関東以南の沿岸域に生息(東京都島しょ農林水産総合センター)。青森県牛滝、秋田県男鹿半島、相模湾(崎山・瀬能)。茨城県大洗沖。
- 生息域
- 日中は深層域。夜間は浅い沿岸域。砂州やサンゴ礁により外海から隔てられた水深の浅い水域にある水の濁った礁湖(しょうこ / Coral reef lagoon)や港湾にも出没。(東京都島しょ農林水産総合センター)
- 水深
- 2.5m〜350m。表層から水深140mまでの沿岸、および外洋域(東京都島しょ農林水産総合センター)。水深350m。
※350mという数値はSimpfendorfer(2009)にもとづくものです(Florida Museum 2018 経由で参照)。その後、IUCNの評価書は、生息の中心が水深100mまでで、最大潜水記録は1,136mであると報告しています(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。
イタチザメの分布域
イタチザメは地中海にはほとんど分布せず、世界中の温帯および熱帯の海域、東シナ海(朝鮮半島西岸・南岸,台湾,香港,西沙群島,中沙群島)、日本の太平洋側〜沖縄などに分布しています。
外洋と浅い沿岸海域の両方に生息するイタチザメは人間にとって危険なサメとしてよく知られています。
北はアイスランドやイギリスにまで達した個体の報告も確認されています。ただしこれらの事例は、大西洋を北上する暖かいメキシコ湾流に沿ってサメが移動した結果である可能性が高いとみられています(Florida Museum 2018)。
IUCNの評価書は、地中海のリビア沖でイタチザメの記録があると述べています。ただし、そこに定着しているのか、迷い込んだ個体なのかは分かっていません(Tobuni et al. 2016)。
イタチザメの生息域
イタチザメの生息域はサンゴ礁、沿岸および外洋域ですが、水の濁った礁湖(しょうこ:砂州やサンゴ礁により外海から隔てられた水深の浅い水域)、港湾、内湾の汽水域(河川の淡水と、海洋の海水とが混合する場所、ラグーン)でも見られることがあります。
イタチザメは主に表層から水深100mまで生息していますが、ときには1,000mを超える深さ(最大記録1,136m)まで潜ることもあります(Ferreira & Simpfendorfer 2019)。
イタチザメの季節回遊
イタチザメは単独行動で2,500km以上の季節回遊を行うと考えられています(東京都島しょ農林水産総合センター)。
7年間に及ぶイタチザメの季節回遊について調査結果によると、ハワイのメスのイタチザメはオスのイタチザメよりも広く回遊する傾向があるそうです。
2015年にScientific Reportsで発表された別の分析(Lea et al. 2015)では、大西洋の24匹のイタチザメが人工衛星で追跡されました。研究チームは、成体のオスが毎年ほぼ同じ経路を往復していることを報告しています。冬の間はバハマ、タークス・カイコス諸島、アンギラなど、カリブ海域の島の周辺にとどまり、夏になるとバミューダ諸島の北側の外洋へ移動します。北上する距離は往復で7,500kmを超え、北はコネチカット州と同じ緯度まで達しますが、これは沿岸ではなく大西洋の沖合です。
イタチザメがなぜ季節回遊するのかはわかりませんが、北の海に住む若いアカウミガメと関係があるかもしれません(Mancini 2018)。
世界最大のイタチザメの集まり(モルディブ・フヴァムラ島)
イタチザメは単独で行動するサメとして知られていますが、同じ場所へ何度も戻ってくる個体が集まる海域も見つかっています。
ドイツのライプニッツ熱帯海洋研究センター(ZMT)などの研究チームは、モルディブ南部のフヴァムラ島で撮影された映像をもとに、239個体のイタチザメを識別しました(Vossgaetter et al. 2024)。調査期間は2016年12月から2023年9月までの約7年間です。研究チームは、これを一か所に集まるイタチザメの群れとしては世界最大の記録だとしています。
識別された個体のうち84.5%はメスでした。成熟したメスは調査期間を通じて繰り返し確認され、1回あたりの滞在日数は平均およそ61日と推定されています。
研究チームは、お腹がふくらんだ状態が長く続くメスが見られたことから、メスが妊娠期間中この島の周辺にとどまっている可能性を指摘しています。
モルディブは、サメを狙った漁を禁止している国のひとつです(Jabado and Spaet 2017)。研究チームは、この集まりが保護された海域のなかで維持されている状態を示していると述べています。
ちなみに、イタチザメがこの港に集まる理由のひとつは、漁で出た魚のあらが海に捨てられていることです。手つかずの自然のなかで自然に集まっているわけではない点には注意が必要です。
イタチザメの日本国内での分布・生息地
イタチザメは主に沖縄、関東以南の沿岸域に生息しています(東京都島しょ農林水産総合センター)。
沖縄では、イタチザメの駆除やイタチザメの捕獲などがニュースになりますね。
一般的にイタチザメの生息域は房総半島~屋久島の太平洋沿岸や、青森県牛滝、秋田県男鹿半島、相模湾、東京湾、小笠原諸島、琉球列島などに分布しています(崎山・瀬能)。
イタチザメについてのよくある質問
イタチザメについてのよくある質問をまとめました、さらに知りたい方のためにおすすめ記事へのリンクも貼っています。
イタチザメとホホジロザメの違いは?
ひと口にサメといっても、イタチザメとホホジロザメは見た目や大きさも違うサメなのです。
イタチザメとホホジロザメの違いについては、『イタチザメとホホジロザメの違いとは?』で写真も交えて紹介しています。
イタチザメは水族館にいるの?
イタチザメはときどき水族館で飼育されていることがありますが、その数は多くありませんし、長期飼育は難しいです。
イタチザメは水族館については『イタチザメがいる水族館は?』でイタチザメに会える場所やこれまでの飼育履歴などを紹介しています。
イタチザメとダイビングできる場所はどこ?
イタチザメとダイビングできる場所はバハマのタイガービーチが有名です。
イタチザメとダイビングできる場所については『イタチザメとダイビングできる場所は?』で紹介しています。
参考文献一覧
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- 国立国会図書館 科学技術・経済情報室 魚の泳ぐ速度(遊泳速度). リサーチ・ナビ. https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/stm/post_400314 (accessed 2026-08-03).
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- 東京都島しょ農林水産総合センター イタチザメ. https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/27,1119,55,227.html (accessed 2026-08-03).
※本文中のNatanson et al. 1999、Holmes et al. 2012、Reid et al. 2011、Dudley and Simpfendorfer 2006、Jabado et al. 2017、Jabado and Spaet 2017、Tobuni et al. 2016、Clarke et al. 2006 などの文献は、IUCNレッドリスト評価書(Ferreira & Simpfendorfer 2019)が引用しているものです。
※「イタチザメの最大記録7.4mは本当なの?」で触れたNorman & Fraser 1937、Randall 1992、Fourmanoir 1961、Compagno 1984、Simpfendorfer et al. 2001は、Meyer et al. 2014およびその引用文献を経由して参照したものです。原典は直接確認していません。



