サメといえば人食いザメというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
サメ映画『ジョーズ』のヒットの影響はもちろんですが、サメ事故は現実世界でも実際に起きていることなので、「サメは人食いザメ!」というイメージになりがちなのかもしれません。
では、実際にわたしたちが人食いザメによる事件の被害者になる可能性はどれくらいなのでしょうか。
このブログでは、日本における危険性の高いサメの分布、人を襲う人食いザメの種類などを紹介し、最後にサメは本当に「人食いザメ」なのかということをサメ好きの視点で考察します。
詳しいブログを読む前にまずはざっくりと知りたい方は「2021年までに日本で起きたサメによる死亡事故や負傷事故のまとめ」をどうぞ。
サメが多い海に囲まれている日本
現在、サメは世界中に何種類いるかご存知ですか?
なんとその数は2021年時点で554種!!
しかも、そのうちの124種が日本の水域で確認されています。
つまり、世界の554種のサメのうち、約4分の1にあたる124種が日本の海域にいるということですね。
なお、ハワイに生息しているサメの種類が40種類です。
自然が豊かで暖かいハワイの方がサメが多い海のように思えますが、実はサメが多い海に囲まれているのは日本なのです。
では、サメが多い海に囲まれている日本に人食いザメはどれくらいいるのでしょうか。
サメ事故が多く人間にとって危険性が高い人食いザメとは
サメ事故が多く人間にとって危険性が高い人食いザメといわれているのは次の3種類のサメです。
日本にも分布する危険性が高いサメとは
- ホホジロザメ
- イタチザメ
- オオメジロザメ
日本の海にも分布する危険性が高いサメは554種のうち、この3種類と数種類程度しかいません。
次に、サメによる襲撃数が多く危険性が高いといわれていて、人を襲うサメとして恐れられているホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの日本での分布・過去に起きたサメ事故などについて説明します。
ホホジロザメ
人気、カリスマ性ともに持ち合わせた世界中で一番有名であろうホホジロザメ。
まずは、ホホジロザメの基本情報を紹介します。
ホホジロザメの基本情報
- 標準和名
- ホホジロザメ(頬白鮫)
- 別名
- ホホジロザメ、白い死神
- 英語名
- Great White Shark
- 学名
- Carcharodon carcharias
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 333件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 52件のサメによる死亡事故(1580-2020年)日本でも発生。
- 大きさ
- 平均4m〜5m。最大で7mの報告もある。
- 生息域
- 一般的には沿岸性で、ときに表層にも生息。
ホホジロザメの日本国内での生息域
- 日本国内での生息域・発見された場所
- 瀬戸内海、沖縄、東京湾とつながる神奈川県川崎市千鳥運河。2010年青森県と宮崎県、2011年岩手県、2017年石川県七尾市沖(日本海では30年ぶり)。
ホホジロザメの日本周辺の分布域は、沖縄周辺から北海道周辺海域に及び、水温の季節的な変化に従って列島周辺海域を南北太平洋側を回遊していると考えられています(Ref.1)。
2017年には石川県七尾市沖でホホジロザメが発見されていますが、日本海では30年ぶりだったそうです。
また、2005年10月26日午前7時ごろ、東京湾とつながる神奈川県川崎市千鳥運河では、オスとしては世界最大級の全長約4・8メートルのホホジロザメが浮いているのが発見されました。
四国新聞社の記事によると、東京湾を含む相模灘でホホジロザメが見つかった例は文献上、1903年までさかのぼるとのことです。
近年、日本で目撃されたホホジロザメについての情報については、「ホホジロザメは日本のどこに生息している?海での目撃談や捕獲情報まとめ」をどうぞ!
山口県光市の室積海岸
1999年7月9日午前8時ごろ、光井港の戸仲漁港に全長約5.3mのメスのホホジロザメが現れました。
その後、ホホジロザメは港外に出て、戸仲漁港先にある西日本屈指の海水浴場として知られるビーチ山口県光市室積海岸沖を遊泳(Ref.5)。
このサメは沖合をしばらく泳ぎ回ったあと、ふたたび港に迷い込んだところを光漁業協同組合が捕獲しました。
参考:【宇部市】海洋プラスチックごみ問題のパネル展示 | 海と日本PROJECT in やまぐち、光市室積 光ふるさと郷土館 ホホジロザメの口蓋骨展示展2016-5-14
光市光井港 ホジロザメの捕獲解体の紹介1999年7月9日、光市室積 光ふるさと郷土館 ホホジロザメの口蓋骨展示展2016-5-14
光市光井港 ホジロザメの捕獲解体の紹介1999年7月9日[/caption]
Wikipediaには、その後も光市内では2002年8月にも虹ヶ浜付近にホホジロザメらしきサメが出現という記載がありますが、ソース不明です。
調べてみた結果、検索結果だけ残っている地元の方のウェブサイトがソースかと予想されます。
地域的にはホホジロザメがいても不思議ではないので、ソース不明で確証はないもののホホジロザメが現れた可能性はあります。
日本で起きたホホジロザメによるサメ事故・場所
日本のホホジロザメの事故・場所と場所といえば、1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)がまっさきに思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
実は、瀬戸内海サメ騒動が起きる前にも次のようなサメによる襲撃が起きていました。
愛媛県沖の瀬戸内海では先月初めごろから大型のサメが地元の漁師に目撃されており、先月中旬にはきょうの現場に近い松山沖で同じタイラギ漁をしていた潜水夫がサメに襲われています。
この時にはヘルメットをかみつかれましたが、潜水夫にけがはありませんでした。(1992.03.08 NHKニュース)
このときのサメの種類については不明ですが、大型のサメということから、瀬戸内海サメ騒動のホホジロザメかもしれません。
1992年3月8日瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)
1992年3月8日に、愛媛県松山沖瀬戸内海で起きた瀬戸内海サメ襲撃事件とは次のようなサメ事故です。
1992年3月8日午後, 愛媛県松山市堀江沖2.3km, 水深22メートルの海底でヘルメット式潜水器具を用いてタイラギ貝漁をしていた潜水夫が行方不明になった.この潜水漁を支援していた船の船長によると, 作業中の潜水夫から突然「上げてくれ」という救助を求める声を聞き, 20分程度かけてやっと引き上げたが, ズタズタに裂けた潜水服とヘルメットだけを回収したという.潜水夫は行方不明で, その後の捜索にもかかわらず, 結局発見できなかった.[・・・・・・]肩当て部分のゴムの深い傷から長さ約5mm, 幅約2.5mmの歯の破片が発見され, これには2個の鋸歯が残されていた.また, 肩当てや潜水服に残された咬み跡を調査して顎の幅を検討したところ, 40cmはあったと推定された.これらの証拠から, この潜水夫を襲ったのは歯の縁辺部に鋸歯をもっかなり大形のサメであったことが明白となった.
これらの歯の破片の特徴, 潜水服などに残された傷跡, 顎の大きさなどに加え, 水温 (当時の付近の水温は水深20mで1L6℃) や四国近海での当時のサメ類の出現状況などを総合的に検討した結果, この潜水夫を襲ったのは全長5m前後のホホジロザメであると結論された.(Ref.3)
- タイラギ漁の潜水漁師がホホジロザメに襲われ死亡(Ref.2 p.204)。
- 潜水服とヘルメットの接合部分の金具からホホジロザメのものとみられる歯の一部が発見(1992.04.05 毎日新聞東京朝刊)。
- Aさんが行方不明になって以来、松山市沖や淡路島沖などの瀬戸内海で相次いで巨大なサメが目撃され、六月には愛媛沖で全長約五メートルのサメが漁船に体当たりするなどの事故も起きている(1992.12.04 産経新聞東京夕刊)。
- 瀬戸内海サメ騒動は話題の少ない時期であったことも手伝って、マスコミの格好の素材となり日本中を駆け巡った(Ref.2 p.204)。
第六管区海上保安本部はホホジロザメに襲われ死亡したと認定しましたが、サメによる襲撃事故の認定は全国で初めてのことでした。
1995年4月9日愛知県伊良湖沖におけるホホジロザメの事故
1995年4月9日午前10時頃、愛知県伊良湖沖の海岸からわずか100m余りの地点でミル貝の潜水漁業者がホホジロザメに襲われて死亡する被害が発生しました。
サメ被害平成7年(1995年)4月9日、渥美郡渥美町(現田原市)西ノ浜沖合の三河湾で、操業中の潜水漁業者がホホジロザメに襲われて死亡する被害が発生した。潜水漁業が盛んな渥美地区や知多地区では、直ちに操業を自粛し、地元地区におけるさめ対策を協議・決定する組織として、4月12日には、それぞれ「渥美町さめ対策委員会」及び「知多さめ対策協議会」を立ち上げた。県では、4月14日に、A副知事を本部長とする「愛知県さめ対策本部」が設置され、さめ対策事業を推進した。さめ対策事業は、さめ捕獲補助事業、さめ被害緊急融資事業、さめ対策講習会の開催、さめ対策パンフレットの作成・配布、さめ監視と目撃情報の収集・伝達の5項目で、予備費で対応した。捕獲事業では、残念ながら大型サメの捕獲には失敗している。潜水漁業の再開は、知多地区が5月3日、渥美地区が6月1日であった。(Ref.4)
日本で起きたホホジロザメによるサメ事故の年間件数
1990年以降におきた日本のサメによる事故は12件で、ホホジロザメによる死亡事故の件数は2件です。
ただし、犯人不明のサメ事故も4件あるので実際にはもう少し多い可能性はあります。
犯人不明のサメ事故を合算すると、おおよそ30年間に起きたホホジロザメによる死亡事故の件数は2〜6件となります。
最大値の6件で計算しても、日本で起きたホホジロザメによるサメ事故の年間件数は0.2件です。
みなさんが想像しているよりも少ないのではないでしょうか?
そうはいっても、ホホジロザメが危険でない、人食いザメということにはなりませんので、万が一、遭遇したら油断しないようにしましょう。
ホホジロザメのことをさらに詳しく
ホホジロザメのことをさらに詳しく知りたい方はこちらのブログをどうぞ🦈
人食いサメなの?ホホジロザメの生態、特徴、大きさ、寿命、危険度とは
ホホジロザメは日本のどこに生息している?海での目撃談や捕獲情報まとめ
シャークアタックについて知りたい人におすすめのサメ本は?
サメ研究者の仲谷一宏先生の本です。
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠物件、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態や分布などについても学べるので初心者におすすめの一冊です。
イタチザメとは
イタチザメは、魚類、ウミガメ(甲羅も砕く)、甲殻類、海産哺乳類、鳥類、爬虫類、同じ種の仲間も含むサメ類まで何でも食べてしまいます。
死んだ獲物でも気にせず食べ、ときには車のタイヤ、服まで飲み込んでしまうほどの食いしん坊。
まず、イタチザメの基本情報を紹介します。
イタチザメの基本情報
- 標準和名
- イタチザメ(鼬鮫)
- 別名
- サバブカ(鯖鱶)、イッチョー(沖縄県)、海の原始的なゴミ処理機、maneater shark(人食い鮫)
- 英語名
- Tiger Shark
- 学名
- Galeocerdo cuvier
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 131件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 34件のサメによる死亡事故(1580-2020年)
- 大きさ
- 平均的な全長は4m〜6m
- 最大全長
- 最大5.5m。ペルシャ湾とオマーン海の種の最大サイズは7.5m。全長8mに達することもある(Ref.8)。
- 体重
- 385〜862kg
- 分布
- 熱帯および亜熱帯の周辺海域。
- 日本国内での分布域
- 沖縄、関東以南の沿岸域に生息(Ref.6)。青森県牛滝、秋田県男鹿半島、相模湾(Ref.7)。
- 生息域
- 日中は深層域。夜間は浅い沿岸域。砂州やサンゴ礁により外海から隔てられた水深の浅い水域にある水の濁った礁湖(しょうこ / Coral reef lagoon)や港湾にも出没。
- 水深
- 2.5m〜350m。表層から水深140mまでの沿岸、および外洋域。水深350m。
イタチザメの分布域
イタチザメは地中海を除いて、世界中の温帯および熱帯の海域で見られます。
外洋と浅い沿岸海域の両方に生息するイタチザメは人間にとって危険なサメとしてよく知られています。
イタチザメの日本国内での分布域
イタチザメは主に沖縄、関東以南の沿岸域に生息しています(Ref.6)。
沖縄では、イタチザメ退治やイタチザメの捕獲などがニュースになりますね。
一般的にイタチザメの生息域は関東以南の沿岸域という情報が多いですが、青森県牛滝、秋田県男鹿半島、相模湾でも発見されています(Ref.7)。
屋久島北部の一湊元浦海岸の波打ち際に、マッコウクジラが漂着した際には「満潮前後にクジラを狙ったイタチザメが波打ち際に数頭集まってきたことから、鹿児島県と屋久島町が協議の上、危険と判断して翌24日の午前中、海岸への降り口に立ち入り禁止のロープを張った。」という事態になりました(屋久島のダイビングスポットにクジラ漂着 11メートルの巨体に島民騒然 - 屋久島経済新聞)。
日本で起きたイタチザメによるサメ事故・場所
2000年9月沖縄県宮古島市平良の砂山ビーチ
2000年9月の宮古島市平良の砂山ビーチでサーフィンをしていた男性がイタチザメに襲われ死亡しました(宮古のビーチ、サメ目撃情報 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト)。
仲間3人とサーフィンをしていた男性が水深3mの所でボードに座っていたところサメに襲われて死亡した。ボードにも鋭い歯跡が残っていた。全長2mのイタチザメによる被害と断定されている。(山田 海人『サメによる被害例について』)
宮古島市平良の砂山ビーチではその後2016年にも「シュノーケリング中の遊泳者が岸から5メートルほど離れた地点で全長2~3メートルのサメを目撃」というサメの目撃情報があります(琉球日報)。
2012年3月23日奄美大島沖漁船転覆事故
高波で転覆後、海に放り出された後にサメに襲撃を受けた。(奄美大島沖漁船転覆事故生還した漁師が語った「人喰いザメとの死闘」)
同記事によると、「Aさんらを襲ったのは現場海域に生息するイタチザメの子供である可能性が高い」とのことですが、イタチザメであるという確実な情報はありません。
その他日本で起きたイタチザメによるサメ事故・場所
日本で起きたイタチザメによるサメ事故・場所について、新聞など信頼できるソースが見つからないものの事故があったとされているものは次の通り。
- 1992年8月5日鹿児島県奄美大島名瀬市、釣り人
- 1996年8月2日沖縄県鳩間島
- 1997年7月12日沖縄県宮古島平良市、潜水漁
- 1999年7月25日沖縄県西表島で遊泳で遊泳中
- 2017年10月30日沖縄県石垣島でダイビング
日本で起きたイタチザメによるサメ事故の年間件数
1990年以降におきた日本のサメによる事故は12件で、イタチザメによる死亡事故の件数は1件です。
ただし、犯人不明のサメ事故も4件あるので実際にはもう少し多い可能性はあります。
また、イタチザメかもしれないサメ事故は5件です。
犯人不明のサメ事故、イタチザメかもしれないサメ事故を合算すると、おおよそ30年間に起きたイタチザメによる死亡事故の件数は1〜10件となります。
最大値の10件で計算すると、日本で起きたイタチザメによるサメ事故の年間件数は0.3件です。
イタチザメはホホジロザメよりもサメ事故の件数が多い可能性があり、人間の生活圏近くに侵入してくること、看板でもなんでも食べてしまう雑食性であること、体のサイズも5メートル級と巨大になることもあるため、人間にとっては危険なサメです。
その一方で、体が小さい個体については危険ではないという見方もあります。
もしも海の中で大型のイタチザメに遭遇した場合は次のように対応すればいいとのことです。
ウミンチュ曰く、「大きなイタチザメに出会ったら、祈れ」もうダメだそうです。襲ってきた場合、水中ボンベを持っていれば、最初の体当たりの時に、素早く脱いで鉄のボンベにぶつける。それでも来れば、ボンベを噛ませて逃げるとのこと。ボンベが間に合わなければ、手頃なテーブルサンゴで防戦するとのこと。素人にはまず無理。米原海岸のお隣は浦底湾。鮫の目撃の多い海域です。シーカヤックと同じ長さの鮫が悠々と泳ぐのが見られるとのこと。浦底湾では、まずダイバーは潜りません。研究施設もある浦底湾ですが、研究者が鮫に出会ってしまい、怖くてしばらく海に入れなくなることが多いとか。
引用:石垣島の米原海岸にサメ出現 - 話題チャンプルー | やいまタイム
イタチザメのことをさらに詳しく知りたい
イタチザメのことをさらに詳しく知りたい方はこちらのブログをどうぞ🦈
かわいいけど危険な鮫!イタチザメの特徴、日本での生息域、人食いサメなの?などの疑問にお答えします
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態などについても詳しく学べるので初心者におすすめの一冊!
オオメジロザメ(ウシザメ)とは
「ジョーズ」の制作に協力したサメ研究の大家レオナルド・コンパーニュ博士によると、オオメジロザメこそ「人類にとってもっとも危険な種」とのこと(Ref.10 p.37)。
淡水でも生きていくことができる不思議なオオメジロザメ(ウシザメ)。
人間の生活圏に近いという怖さはありますが、淡水でも生活できるという不思議な生態は神秘的でもあります。
まず、オオメジロザメ(ウシザメ)の基本情報を紹介します。
オオメジロザメ(ウシザメ)の基本情報
- 名前
- オオメジロザメ(ウシザメ / Bull Shark)
- 学名
- Carcharhinus leucas
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 117件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 25件のサメによる死亡事故(1580-2020年)
- 分布域
- 熱帯および亜熱帯海域。フロリダ、オーストラリア、アフリカ。河川(ザンベジ川・ミシシッピー川・アマゾン川)、ニカラグア湖、琉球列島(国場川など)
- 生息域
- 表層から水深30mまでの沿岸域。150mくらいまでの水域に生息することがある。入江、潟、淡水にも生息。
- 大きさ
- 3~3.4m
オオメジロザメ(ウシザメ)の分布域
海だけではなく淡水でも生活できるオオメジロザメ(ウシザメ)。
湖、川だけではなく、市内を流れる川、ゴルフ場、裏庭など人間の生活圏もなんのその。
なぜ、オオメジロザメ(ウシザメ)がこのような進化を遂げたのかについては今もまだ研究が続いています。
オオメジロザメ(ウシザメ)の日本国内での分布域
朝日新聞デジタル版によると、2016年10月7日、沖縄県北谷町は海岸海岸でのサメの目撃が相次いだことを受けて町美浜のサンセット、町北谷のアラハの二つのビーチを、遊泳を禁止に。
同時期にビーチ近海では、人を襲う危険性が高いとされるオオメジロザメなどの目撃が相次いでいたとのことです。
2019年7月7日には次のようなオオメジロザメの目撃談も!
「国場川にサメがいる。子どもたちが落ちたら危険ではないか」。2日、那覇市の国場川周辺住民からの目撃情報が琉球新報に寄せられた。
引用:住宅地の川に危険サメ 国際通りの川にも 理由は不明「鋭い歯に注意を」 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
同記事によると、「沖縄の川で、サメと出合うチャンスは珍しくはない。」、「国場川で釣ったサメにかまれ、けがをしたケースもある」とのこと。
日本で起きたオオメジロザメ(ウシザメ)によるサメ事故・場所
1996年7月23日午前9時35分頃沖縄県宮古島
ホテルアトールエメラルド沖1500m付近でサンゴの生育調査をしていた男性(52才)はサメに襲われ、ダイバー船に助けを求め、救助したものの右胸から下腹部にかけて縦35センチ、横30センチが楕円形に食いちぎられ、胃と腸が食いちぎられていて死亡した。(当日は中潮)調査にあたった担当者はオオメジロザメではないかと言っている。
引用:山田海人『サメによる被害例について』
日本で起きたオオメジロザメ(ウシザメ)によるサメ事故の年間件数
1990年以降におきた日本のサメによる事故は12件で、オオメジロザメ(ウシザメ)による死亡事故の件数は1件です。
ただし、犯人不明のサメ事故も4件あるので実際にはもう少し多い可能性はあります。
犯人不明のサメ事故、オオメジロザメ(ウシザメ)かもしれないサメ事故を合算すると、おおよそ30年間に起きたオオメジロザメ(ウシザメ)による死亡事故の件数は1〜5件となります。
最大値の5件で計算すると、日本で起きたオオメジロザメ(ウシザメ)によるサメ事故の年間件数は約0.2件です。
オオメジロザメ(ウシザメ)のことをさらに詳しく知りたい
オオメジロザメ(ウシザメ)のことをさらに詳しく知りたい方はこちらのブログをどうぞ🦈
オオメジロザメ(ウシザメ)の特徴とは?サメ好き女子が水族館で撮影した画像付きで解説
世界や日本でのシャークアタックについての内容が30ページ弱あります。
1992年3月8日に起きた瀬戸内海サメ騒動(瀬戸内海サメ襲撃事件)については、当時の新聞記事、調査結果、証拠、状況などが詳細に記されています。
サメの危険な一面だけではなく、生態などについても詳しく学べるので初心者におすすめの一冊!
その他のサメによるサメ事故
その他のサメによるサメ事故もいくつか紹介します。
いずれもサメ事故も大型種によるものです。
アオザメ、ヨシキリザメ、ドタブカのいずれかによるサメ事故
2017年9月3日、磐田市福田の遠州灘でサーフィンをしていた男性がサメとみられる生物に足をかまれ、重傷を負う事故が発生しました。
この当時、周辺ではサメの目撃情報も相次いでいたそうです。
このとき男性を襲ったサメは、太平洋側に生息する外洋性のサメ、アオザメ、ヨシキリザメ、ドタブカのいずれかとみられています。
カマストガリザメによるサメ事故
2021年6月19日午前9時50分ごろ、沖縄県名護市屋我地漁港の沖合で男性ダイバーがサメに頭と顔をかまれました。
この男性は屋我地漁港から東に約3キロ離れた沖合のマグロ養殖いけす(直径30メートル)のいけす内にいたサメを駆除していたそうです。
男性は顔の左頬と側頭部分に裂傷を負いましたが、意識はあり命に別条はないとのこと。
このサメ事故の犯人は全長約2メートルのカマストガリザメとみられています。
瀬戸内海で起きたイタチザメかホホジロザメによる最古のサメ事故
今から3000年以上前の紀元前1370年~同1010年の間にサメに襲われて死亡した成人男性が発見されました。
場所は日本の瀬戸内海、岡山県の津雲貝塚。
遺体には少なくとも790カ所のギザギザの傷が付いており、その傷から犯人はイタチザメかホホジロザメのようです。
これは世界最古のサメ事故だと考えられています。
その他の日本近海に生息する危険性のあるサメ一覧
- シロワニ:水族館でおなじみのシロワニ。大人しいですが、いたずらすると怖いですよ!小笠原にいます。
- アカシュモクザメ:1982年8月29日に熊本県天草郡大矢野町沖で起きた天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故が有名です。
- ヨシキリザメ:美しい青いサメとして人気のかわいいヨシキリザメですが、人や船を襲うこともあり、危険性が高いサメです。ヨシキリザメのシャークアタックについてはこちら。
- アオザメ:2004年7月15日、和歌山県すさみ町沖の遊漁船に全長3.3m、体重350㎏のアオザメに飛び込み、尾びれに当たった釣り客が胸の骨を折る重傷を負うという事故がありました(Ref.9)。
- ネムリブカ:小さくてかわいいと思って、いたずらすると反撃されます。好奇心旺盛。小笠原の海岸にいます。
- ツマグロ:大きな水音を立てながら歩くと噛みつかれることがありますが、日本の海で遭遇することはほぼなさそうです。
- ヨゴレ:世界最悪のサメ事故で有名なヨゴレですが、外洋にいるので遭遇機会は少ないでしょう。
- ドタブカ:全長2〜3メートルほどで触れるだけでスパッと切れてしまう切れ味が鋭く、かみ切るための歯をもっています。
- メジロザメ全般:危険な種とそうでない種の見分けがつきにくいので見かけたら注意しましょう。
日本では人食いザメによるサメ事故はイメージほど多くない
こうしてみてみると、日本では危険な人食いザメといわれているホホジロザメ・イタチザメ・オオメジロザメ(ウシザメ)によるサメ事故はイメージほど多くはなく、いわれているほど人食いザメではないのが実情です。
サメたちはエサの選り好みをせず、手近なところにいるエサを襲う機会選択食者(opportunistic feeder)です。
空腹かつ大型のサメがたまたま人間と出会ってしまったときに、サメによるサメによる襲撃事故が起きてしまう可能性があります。
ゆえに、一部の大型のサメが人食いザメというのは事実ですが、人間を常食としていたり、好んで食べるということはありません。
サメによる襲撃事故の件数は交通事故や蜂に刺されて死ぬ数よりもずっと少数ですし、サメ映画『ジョーズ』のように人食いザメが次々と人間に襲いかかるということは現実では起きていません。
また、日本で起きたサメの事故とその他の事故を比較するとこんなに差があります。
サメが人間を好んで食べることはあるの?
サメには味覚があり、サメの種類によって食べ物の好みがあります。
また、人間は脂肪分が少ないため、サメの味覚では美味しい食べ物に分類されていない可能性が非常に高いです。
サメ事故を調べるとわかることですが、サメは人間を一噛みして去っていくケースが多いからです。
※去って行くのではなく犠牲者が血を流して死ぬのを待って泳ぎ回っているだけという考え方もあります。ホホジロザメのこの習性のため救助することが可能であり、命拾しているだけであって、実際には食べる気であるという考え方です(Ref.11 pp.58-59)。
もちろん、全長4~6mクラスのホホジロザメ・イタチザメや、大型のオオメジロザメなどに一噛みされたらたまったものじゃないですが・・・。
ホホジロザメにとって人間は餌!?
一方、ホホジロザメにとって人間は餌という見方もあります。
前述の人間は味覚に合わないから吐き出す説と対照的な見方をしているのが、ホホジロザメの捕食行動をフィルムにおさめ分析しているサンフランシスコのステインハード水族館のジョン・マッコスカー館長とティム・トリカスです。
彼らの分析によると、ホホジロザメが人間を襲うときには、下後方から攻撃するそうです。
これはホホジロザメが普段から獲物にしているアザラシやアシカを攻撃するときと全く同じやり方なのです。
また、ホホジロザメはアザラシやアシカに対しても一咬みしたあと、しばらく獲物の周囲を同じように遊泳します。
ゆえに、ホホジロザメはアザラシやアシカと同じように人間を餌として襲っているというのです(Ref.11 pp.58-59)。
ホホジロザメが大型の肉食獣であることを考えると、小さな人間を餌としてみていても不思議はないかもしれません。
やっぱり人食いザメだし人間が好物なんじゃないの?
サメは頭が良く、餌にありつく方法について学習することができます。
もしも、サメが人間を好んで食べるとしたら海水浴場はすでにサメパニック間違いなしです。
アザラシのコロニーを襲撃するように真夏の海水浴場にホホジロザメが現れる事件が多発するはずですよね。
でも、そんなことありません。
それどころか、サメに襲われる確率は100万人に1人程度です。
サメが人食いザメなのはサメの一面であり事実ですが、サメは人間に容赦なく襲いかかる海のギャングで、サメが人を好んで食べているなんてことは映画の世界のサメだけです。
必要以上にサメを恐れることなく、この地球上で共生する神秘的で美しい生き物としてのサメについてももっと知られていけばいいのになと思います。
- サメは臆病である。
- サメは危険な人食いザメである。
矛盾してしまいますが、どちらも事実です。
わたしはサメ愛好家ですし、サメがかわいいという価値観をもっていますが、サメが人食いザメという一面も持っているということは否定しません。
ゆえに、サメについては「触らぬ神に祟りなし」というのが最善の策なのではないでしょうか。
そもそも、ダイバーもサメを見かけることは少ないといいます。
もしも大型のサメを見かけたとしても、「安易に近づかない」ことをおすすめします。
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参考文献
(2)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(3)仲谷 一宏『愛媛県松山市沖のホホジロザメによる死亡事故, および日本におけるサメ被害』1993年、2021年3月7日に閲覧。
(4)愛知県『愛知の水産関連年表(その15:平成6年から平成8年まで)』、2021年3月7日に閲覧。
(5)瀬戸内タイムス『ホホジロザメに危機一髪』、平成11年7月14日夕刊。
(6)イタチザメ - 東京都島しょ農林水産総合センター
(7)崎山直夫・瀬能宏『相模湾におけるイタチザメ(メジロザメ目,メジロザメ科)の出現状況』2021年3月3日に閲覧。
(8)アントネッラ フェッラーリ、谷内透監修『サメガイドブック―世界のサメ・エイ図鑑』TBSブリタニカ、2001年(初版第2刷)。
(9)ア山田海人『サメによる被害例について』、2021年3月22日に閲覧。
(10)沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』講談社、2018年(第3刷)。
(11)エドワード・O.ウィルソン著,廣野喜幸訳『生き物たちの神秘生活』徳間書店、1999年(第1刷)。