ネムリブカ(学名:Triaenodon obesus、英名:Whitetip reef shark)は、サンゴ礁に生息するメジロザメ科のサメで、最大約213cmまで成長します。昼間は洞窟で休み、夜に活動する夜行性の種として知られています。人への攻撃はまれで、これまでに記録されている事例は限られています。水族館やダイビングでもよく見られる存在ですが、近年は漁業やサンゴ礁の劣化の影響を受け、IUCNレッドリストでは危急(VU)に評価されています。
この記事では、ネムリブカの危険性、特徴、大きさ、生態、分布、水族館情報、そして現在の保全状況について、2026年最新の科学的なデータをもとにわかりやすく解説します。
ネムリブカとは
まず、ネムリブカ(Triaenodon obesus)の基本情報を整理します。インド太平洋のサンゴ礁に生息するメジロザメ科のサメで、日本では琉球列島や小笠原諸島でも見られます。最大全長は約213cmに達しますが、成魚は150〜160cm前後が一般的です。IUCNレッドリストでは危急(VU)に評価されています
ネムリブカの基本情報
- 名前
- ネムリブカ(眠鱶 / Whitetip reef shark)
- 沖縄名
- ヒサバー
- 英語名
- Whitetip reef shark
- 学名
- Triaenodon obesus (Rüppell, 1837)
- 危険度
- 古代度
- レア度
- 保全状況
- 絶滅危惧種(危急種) / VU(Vulnerable)
- 分類
- メジロザメ目メジロザメ科ネムリブカ属
- 分布域
- インド太平洋の熱帯域。西アフリカから紅海、インド洋、東南アジア、オーストラリア、ミクロネシア、ポリネシア、ハワイ、ガラパゴス諸島まで広く分布。日本では琉球列島および小笠原諸島。
- 生息域
- サンゴ礁が好き。ラグーンや岩礁域、ドロップオフ周辺の水深0〜330m(通常8〜40m)に生息。
- 大きさ
- 150–160cm前後。160cmを超えることは滅多にない。
- 最大全長・重量
- 最大全長:213cm、最大重量:18.3 kg
- 寿命
- 最大寿命は25歳。平均寿命は14〜19年程度とする資料もあります(GCT)。
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
ネムリブカは人食いザメなの?人間への危険性は?
- シャークアタックの回数
- 5件のサメ事故(1580-2026年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2026年)
ネムリブカによる人への攻撃は非常にまれです。これまでに記録されている事例は5件のみで、いずれも死亡事故には至っていません(Florida Museum, International Shark Attack File)。
ネムリブカは比較的おとなしい性質とされ、水族館やダイビングでも観察されることの多いサメです。ただし、野生動物であることに変わりはなく、かわいらしいからと軽はずみな気持ちで餌付けや接触などで刺激すると防御的に噛みつく可能性はあります。特にスピアフィッシングなどで魚を持っている状況では注意が必要とされています。
水族館でサメを一律に「人食いザメ」と表現する方もいますが、ネムリブカは160cmくらいの小さなサメです。
ネムリブカの特徴
ネムリブカは細身の体と幅が広い吻をもつ中型のメジロザメ科のサメです。最大の特徴は、第1背びれと尾びれ上葉の先端がはっきりと白く縁取られていることです。
- 第1背びれと尾びれ上部(上葉)の先端が白い
- 第2背びれが比較的大きい(第1背びれと近いサイズ)
- 背びれ間隆起(interdorsal ridge)がない
- 体に斑点模様が散在することがある
- テラっとした質感がかっこいい(見ればわかる)
ネムリブカとツマジロの違いは?
同じく背びれの先端が白いツマジロがいますが、体つきの特徴が違いすぎるのでぱっと見で識別可能です。
どちらも背びれの先端が白いという特徴は共通していますが、写真で見ると一目瞭然です。

ネムリブカは体が細長く、顔立ちも個性的なサメです。

一方、ツマジロはネムリブカと比較すると体が大きく丸く、多くの人が頭に浮かべるサメらしい顔をしています。
ちなみに、ネムリブカと同じように背びれの先端が白いのに、ツマジロの英語の名前は「Silvertip shark」です。
ツマジロは標準和名では「ツマジロ」と白いのに、英語だとシルバーになってしまうのが、おもしろいですね。

ネムリブカの生態

写真のように複数のネムリブカがサンゴ礁の洞窟にぎゅうぎゅうに詰まった姿はかわいいですね。
ネムリブカは夜行性のサメです。
日中はサンゴ礁の洞窟や岩棚の下、砂地の上などで複数個体が集まって休む姿がよく観察されます。ネムリブカは呼吸のために常に泳ぎ続ける必要がないため、昼間はほとんど動かずに休息することができます。
比較的浅い海域を好む傾向があり、波打ち際に集まっていることも(おとなしいサメだから怖くないよ)!
行動範囲は比較的狭く、0.3〜3km程度の距離を移動することや、同じ洞窟や礁域を繰り返し利用する「サイトフィデリティ(Site Fidelity / 特定の場所への高い定着性)」が確認されています(Fishbase, FLMNH)。
同じ洞窟で数日または数週間、ときにはそれ以上過ごしていたり、同じ場所を繰り返し利用し、集団で暮らしているというのもネムリブカのかわいいポイントですね。
ネムリブカの食性
ネムリブカは主に夜間に活動し、サンゴ礁の隙間や岩の割れ目に入り込んで獲物を捕食します。水族館では昼間も元気に泳いでいる姿を観察できますが、野生の子は夜になると本領発揮!
好きな食べものは硬骨魚類や頭足類、甲殻類です(SOSF, FLMNH, IUCN)。

ネムリブカの繁殖
ネムリブカは胎生(卵黄嚢胎盤型)のサメです。卵ではなく、人間のようにお母さんザメのお腹の中で育ちます。1回の出産で産む赤ちゃんザメの数は1〜5匹。出生時の体長は約52〜60cmと報告されています。
妊娠期間は地域差があると考えられていますが、およそ11〜12か月とする研究もあります。
大洗水族館がネムリブカの繁殖に成功
アクアワールド茨城県大洗水族館、2022年8月29日、サメの飼育種類数日本一の『アクアワールド茨城県大洗水族館』は、サメの仲間・ネムリブカの水槽内での繁殖に初めて成功し、2022年8月27日に4匹の幼魚が誕生しました。
引用:【アクアワールド茨城県大洗水族館】アクアワールド・大洗では初めての繁殖に成功!元気なネムリブカの赤ちゃんが誕生!
2022年8月27日未明にアクアワールド茨城県大洗水族館のネムリブカのメスが4匹の赤ちゃんザメを出産!このときに誕生したネムリブカの赤ちゃんは全長約60cmほど。大洗水族館でネムリブカの繁殖に成功したのは初めてとのこと!
ネムリブカの赤ちゃんについては『【2022年大洗水族館のサメの話】シロワニ水槽(サメの海1)やネムリブカの赤ちゃんなど』をどうぞ!
ネムリブカの英語名の由来
ネムリブカの英語名は「Whitetip reef shark」で、「白い先端をもつサンゴ礁のサメ」という意味です。ホワイトチップというのは、ネムリブカの第1背びれの先端が白いことと尾びれ上部(上葉)の白い縁取りに由来します。
※tipの意味は(とがったものの)先、先端、また(山などの)頂上、頂(小学館 プログレッシブ英和中辞典)
ネムリブカの分布域と生息域
ネムリブカ(Triaenodon obesus)は、インド太平洋の熱帯域に広く分布するサンゴ礁性のサメです。
日本では琉球列島および小笠原諸島で確認されています。
ネムリブカの分布
ネムリブカは西インド洋の東アフリカ沿岸から紅海、インド洋、東南アジア、オーストラリア、ミクロネシア、ポリネシア、ハワイ諸島を経て、東太平洋のココス諸島やガラパゴス諸島、パナマ〜コスタリカ沿岸まで分布しています(IUCN)。
遺伝的研究では、インド洋と太平洋の個体群の間に遺伝的分化が確認されており、地域ごとの亜集団構造が示唆されています(IUCN)。
小笠原のネムリブカ
小笠原諸島(父島・母島)では、波打ち際近くのサンゴ礁域でネムリブカが観察されることがあります。特に透明度の高い日には、水面から確認できることもあります。
母島脇浜の波打ち際に集まるネムリブカ。
温厚な性格なので、刺激しない限りは噛まれる心配はありません。 pic.twitter.com/9i5mb7wuHX— 小笠原自然文化研究所 (@iBo_sznbnk) April 29, 2022
今日の #小笠原 の #海 はベストコンディションです🌴✨#大村海岸 も静かで #珊瑚 や #魚 、#ネムリブカ まで水面からみえます😆🎶 小笠原では10月も #海水浴 が楽しめます🤿✨#父島 #ogasawara #10月の小笠原 #Whitetipreefshark #Triaenodonobesus pic.twitter.com/b38VQD1wJb
— 小笠原ビジターセンター・大神山公園 (@OgasawaraOogami) October 5, 2022
※ネムリブカは比較的おとなしいとされますが、野生動物であるため刺激になることや接触は避けましょう。
ネムリブカの生息域
岩礁のネムリブカ
ネムリブカはサンゴ礁で暮らすサメです。ラグーン、岩礁域、ドロップオフ周辺などの沿岸域に生息します(Compagno, 1984;IUCN, 2020)。通常は水深8〜40mで多く見られますが、0m付近の浅瀬で観察されることもあり、最大で約330mの深さからも記録があります(FishBase)。
ネムリブカと人との関わり
ネムリブカはインド太平洋の各地で、延縄(はえ縄)や刺し網、底引き網などの漁業によって漁獲されています。多くは他の沿岸魚類を対象とした漁業での混獲ですが、肉やヒレ、肝臓が利用されることもあります(IUCN, 2020)。
一方で、ネムリブカはサンゴ礁性魚類を餌とするため、地域によってはシガトキシンを蓄積する可能性が指摘されています。シガトキシンは人間にとっても有害なシガテラ食中毒の原因物質であり、消化器症状や神経症状などを引き起こします(Randall, 1977;FishBase)。シガテラ中毒は死亡率は低いものの、回復に時間を要することがあり、症状が数か月持続する場合もあります(FishBase)。
ネムリブカは絶滅危惧種(危急種)
ネムリブカは絶滅危惧種?
ネムリブカはIUCNレッドリストの3段階ある絶滅危惧種の中で3番目に絶滅の危機に瀕している危急(VU)と評価されています(IUCN, 2020)。
| 絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
| どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
| メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
| - | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
| - | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『【2025年12月版】絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ』で解説しています。
ネムリブカはIUCNレッドリストにおいて危急(Vulnerable, VU)と評価されています。
IUCNの評価によると、ネムリブカは過去3世代(約37年)で全球的に30〜49%の個体数減少が推定されており、サンゴ礁の劣化と漁業圧の増大が主な要因とされています。特にネムリブカはサンゴ礁を好み、行動範囲が比較的狭いことから、局所的な漁獲圧や生息地の悪化の影響を受けやすいと考えられています(IUCN, 2020)。
ハワイ文化とネムリブカ
ネムリブカは、ハワイの伝統的な宗教観「‘Aumakua(アウマクア)」において、守護霊の姿のひとつとされ、家族や地域を守る存在として尊重されてきました(FLMNH)。アウマクアとは家族神・祖先神のことで、日本でいうと「ご先祖さまが守ってくれている」という感覚に近いです。
アウマクアは家庭ごとに異なり、サメをアウマクアとする家族もいました。そうした家族では、サメを食べることが禁忌とされるなど、特別な関係が築かれてきました(ハワイ州観光局公式ラーニングサイト)。
一方で、ネムリブカはインド太平洋の多くの地域で漁業の対象や混獲、さらにサンゴ礁の劣化の影響で個体数が減少しています(IUCN, 2020)。
同じネムリブカという種であっても、ある土地では守護的な存在として尊重され、別の土地では水産資源として利用される。この関係性の違いは、人とサメの関わりが文化や制度によって大きく変わることを示しています。
ネムリブカを飼育している水族館
ドチザメやシロワニと同じくネムリブカは飼育しやすいサメなので水族館で会える機会は多いでしょう。
ネムリブカを飼育している水族館の一覧
2026年2月時点、ネムリブカを飼育している水族館の一覧はこちら。
- アクアワールド茨城県大洗水族館
- アクアパーク品川
- 新江ノ島水族館
- 大阪海遊館
- 神戸須磨シーワールド
- しまね海洋館
- マリンワールド海の中道
- かごしま水族館
- 美ら海水族館
※最新の飼育情報については各水族館が発信している最新情報や日本動物園水族館協会の公式サイト内の飼育動物検索でネムリブカ 、または学名のTriaenodon obesusで検索してみてください。
また生きものの状態によっては展示してない場合があるので注意しましょう。
ネムリブカはかわいいサメ

油壺マリンパークのネムリブカ。2021年1月に撮影。
ネムリブカはかわいい顔をしたサメです。
洞窟などにぎゅうぎゅうに詰まっている姿もかわいいです。
つまり、ネムリブカは生活スタイルも含めてかわいいサメです(異論は認めない笑)。

どうですか、ネムリブカの正面顔のかわいさ!わたしのXアカウント(フォローしてね🦈)
ネムリブカに限らずですが、サメの正面顔はかわいい・・・!!


かわいいだけではないのがネムリブカの魅力!こんなにイケメンの顔も持っています・・・!わたしのXアカウント(フォローしてね🦈)
ところが角度によってはすごくイケメンだったりすることも・・・!
このかわいいだけではない二面性もネムリブカの魅力かもしれませんね。
京急油壺マリンパークのネムリブカ

油壺マリンパークのネムリブカ。2021年1月に撮影。
※2021年9月30日(木)をもって京急油壺マリンパークは閉館
京急油壺マリンパークのネムリブカの思い出です。
引越し先は不明ですが、どこかの水族館のネムリブカが実は京急油壺マリンパークの子だったということがあればいいなと願っています。
京急油壺マリンパークではヤジブカと同じ水槽にいました(2021年1月)。


京急油壺マリンパークのネムリブカの水槽の前にはネムリブカからのメッセージがあります。
僕は沖縄の国頭村(くにがみそん)というところから2013年の2月28日に採集されたよ。普段は寝ているのかと思われるくらい大人しいけど、手を出すとびっくりして攻撃しちゃうこともあるから、注意してね!!


参考文献一覧
- Florida Museum. Discover Fishes: Whitetip Reef Shark. https://www.floridamuseum.ufl.edu/discover-fish/species-profiles/whitetip-reef-shark/ (accessed 2026-02-16).
- Save Our Seas Foundation. Whitetip reef shark. https://saveourseas.com/worldofsharks/species/whitetip-reef-shark (accessed 2026-02-16).
- FishBase. Triaenodon obesus (Rüppell, 1837) Whitetip reef shark. https://www.fishbase.se/summary/907 (accessed 2026-02-16).
- IUCN Red List. Triaenodon obesus (Whitetip Reef Shark). https://www.iucnredlist.org/species/39384/173436715 (accessed 2026-02-16).
- Galapagos Conservation Trust. Whitetip reef shark. https://galapagosconservation.org.uk/species/whitetip-reef-shark/ (accessed 2026-02-16).
- 森出じゅん. アウマクア信仰 | ハワイ州観光局公式ラーニングサイト. https://www.aloha-program.com/curriculum/lecture/detail/173 (2026年2月16日閲覧).




