サメを守る声は、専門家や活動家だけのものではありません。
フカヒレ問題やシャークフィニングに対して、俳優・モデル・スポーツ選手など、世界中の著名人たちが声をあげ、サメの保護を訴えるキャンペーンや行動を続けてきました。
その多くは、いまから10年以上も前に始まったものです。
しかし、日本では、こうした問題はあまり注目されてきませんでした。
この記事では、その声がどのように語られてきたのかを、一緒に辿ってみましょう。
遠くであがった声を、いまここから、静かに受けとるために。
有名人とサメ保護、フカヒレ問題
遠くから聞こえていた声──
それは、スクリーンやスタジアム、SNSの向こうから、サメを守りたいという思いとともに発せられていました。
フカヒレ問題やシャークフィニングを知った彼らは、 「自分の名前」や「立場」を使って、サメの保護のための行動に踏み出していったのです。
ここでは、そうした著名人たちの言葉や取り組みを紹介します。
レオナルド・ディカプリオ|─海洋保護のためのグローバルな取り組み
俳優であり環境活動家のレオナルド・ディカプリオは、サメやエイの過剰漁獲を防ぎ、絶滅を回避し、個体数を回復させることを目的とした「Shark Conservation Fund」を支援しています。
また、彼の財団は、海洋保護区の設立や違法漁業の取り締まりなど、海洋生態系の保全に向けた多くのプロジェクトに資金を提供しています。
デヴィッド・ベッカム|「父親の声」としてフカヒレ問題に立つ
2013年、デヴィッド・ベッカムはウィリアム王子、元NBA選手のヤオ・ミンとともに、
野生動物保護団体WildAidの啓発キャンペーンに参加しました。
このキャンペーンは、フカヒレ・象牙・サイの角などの違法な野生動物製品の消費をやめようというメッセージを、
「親の立場から未来世代へ」届けるものでした。
ベッカムの言葉(WildAid公式より)
「違法な野生動物製品を買っているなら、やめてほしい。
この無意味な殺しを終わらせるために、わたしたち一人ひとりができることがあるんです。」
— デヴィッド・ベッカム
引用:The Duke of Cambridge, David Beckham, and Yao Ming Speak Out as Fathers Against Illegal Wildlife Trade
ジャッキー・チェン|文化と迷信を越えて伝える人
アクションスターとしてだけでなく、野生動物保護の啓発活動に長年取り組んできたジャッキー・チェン。
彼はWildAidのキャンペーンに12年以上関わり、フカヒレ、象牙、サイの角など、さまざまな野生動物製品の消費に警鐘を鳴らしています。
VICEのインタビューで彼はこう語っています。
若い頃、アジア各地をまわるたびに、フカヒレスープが「重要人物のためのごちそう」として用意されていました。
でも、サメが殺される映像を見てからは、そのビデオを保存して友人に見せるようになったんです。
それ以来、わたしが訪れるどの場所でも、もうフカヒレスープは出てきません。昔は誰も「そのフカヒレがどこから来たか」を考えていませんでした。
でも、人は知れば変われる。
ちゃんと見れば、買うのをやめ、食べるのをやめるんです。引用:VICEインタビュー『Protecting Wildlife Means Educating Humans』(2014)
彼は「フカヒレを食べない」と決めた理由として、“教育”の大切さを繰り返し語っています。
子どもたちには「古い世代の迷信とどう対話するか」が必要であり、芸能人には「その橋渡しをする責任がある」と──。
ニーナ・ドブレフ|サメ保護キャンペーン
『ヴァンパイア・ダイアリーズ』のエレナ役で知られる女優ニーナ・ドブレフは、Oceanaと連携し、サメの保護活動を積極的に行っています。
シャークフィニングはアメリカの海域では違法とされていますが、フカヒレそのもの──とくにシャークフィニングを合法としている国からの輸入品──は今もアメリカ国内で売買が続いています。
この「需要」こそが、世界中のサメたちにとって最大級の脅威のひとつになっているのです。
女優のニーナ・ドブレフはこう語ります。
「オセアナと一緒に、健全な海を守るための活動に参加できることをとても嬉しく思っています。
サメのことは、以前からずっと気になっていた存在でした。怖いと思っていたけど、サメがどれほどすばらしい生き物かを知ってからは、彼らの保護を訴えるオセアナのキャンペーンに自分の声を重ねるべきだと感じたんです。」「実際に会ってみて、一番驚いたのは、サメの動きの美しさ。そして──わたしのことなんて、まるで気にしていないということ。
サメは本当にユニークで魅力的な生き物。わたしたちはもっと敬意を払うべきです。
アメリカには、フカヒレの需要を減らすお手本となり、世界に良い影響を与えるチャンスがあると思います。」
Everyone's voice matters. Use yours to demand a #FinBanNow with me and @oceana https://t.co/RTAkv65HyE pic.twitter.com/VXDH2N2xpL
— Nina Dobrev (@ninadobrev) July 26, 2017
皆さんこんにちは、ニーナです。
今回は @Oceanaのインスタをお借りして、最近オセアナと行ったビミニでのとサメの旅の舞台裏をご紹介します。
ヴァンパイア・ダイアリーでのわたしの役柄をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、サメと海を守るためのわたしの情熱についてはご存知ないかもしれません。
サメと一緒に泳ぎ、共存できたことは素晴らしい時間でした。
サメのいいところをもっと紹介しますので、お楽しみに。
さらに、彼女が海でサメと共に過ごす様子は以下の動画でも見ることができます!
Nina Dobrev: Sharks Need Our Help | Oceana
シャークウィーク2019は、サメを祝うだけのイベントじゃありません。
サメたちを守るチャンスでもあるのです。
世界中でサメは乱獲され、毎年最大7,300万匹ものサメのヒレが国際的なフカヒレ取引に流れ込んでいます。
もう、#FinBanNow(=フカヒレ取引禁止)のときです。
Nina Dobrev Wants to Save Sharks | Oceana
アメリカの海域ではシャークフィニングは違法ですが、
実際には、シャークフィニングを認めている国から輸入されたフカヒレも含め、
今なおフカヒレはアメリカ国内で売買され続けています。
この“需要”こそが、今サメたちが直面している最大級の脅威のひとつです。
吉川ひなの|『わたしが幸せになるまで』に見る命への視点
モデルとしてだけでなく、ライフスタイルそのものを通じて「自然とともに生きる選択」を発信している環境アクティビスト、吉川ひなのさん。2021年の著書『わたしが幸せになるまで 豊かな人生の見つけ方』の中でフカヒレ問題に言及しています。
「フカヒレ加工の残酷さは有名で、それゆえ食べない人も多いと思う。世界三大珍味と言われるフォアグラは、ソーシャルメディアの発展からその残酷さが広まり反対運動が起きているけれど、果たして、鶏や豚や牛などわたしたちの食卓で毎日見かけるこの動物たちがお肉になるまでにどんなふうに扱われ、どれだけの苦しみの中で殺されていくのかは、どれだけの人が認識しているのだろう。」
引用:吉川ひなの著『わたしが幸せになるまで 豊かな人生の見つけ方』2021年
命の扱い方について、自身の生活と価値観を通して語る姿は多くの共感を呼びました。

オーシャン・ラムジー|サメと泳ぐ理由、守る理由
ハワイを拠点に活動するフリーダイバーであり海洋生物学者のオーシャン・ラムジーさんは、「サメと共に泳ぐ姿」で世界的に注目を集める存在です。
けれど彼女の活動はただのパフォーマンスではありません。
誤解や恐怖の対象とされがちなサメに対して、「本当はどんな生きものなのか」を自らの身体で伝えながら、
科学と感情の両方から保護の必要性を訴えてきました。
ラムジーさんは「サメは人を襲う獣ではなく、繊細で臆病な生きもの」と繰り返し語ります。
そして、私たち人間が「頂点捕食者」としてどう向き合うべきかを、泳ぎながら問いかけ続けています。
そんな彼女の生き方と哲学については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
ヤオ・ミン|文化の壁を越えてサメを守る
元NBAスターのヤオ・ミンは、2006年にWildAidのアンバサダーとなり、フカヒレスープの消費をやめることを誓いました。
彼のキャンペーンは、中国国内でフカヒレの価格と売上を50〜70%減少させ、消費者の82%がフカヒレスープの摂取をやめるきっかけとなりました。
ヤオ・ミンは「中国がフカヒレスープを禁止することで、世界をリードすべきだ」と訴え、企業や政府に対しても強く働きかけています。
ジェシカ・アルバ|問題提起としての行動
環境問題への意識が高いことで知られる女優ジェシカ・アルバは、2009年にオクラホマ州オクラホマシティのダウンタウンで「この50年で個体数が70%も減っているホホジロザメ」の保護を訴えるポスターを公共物に貼り付けるゲリラキャンペーンに参加。
活動は物議を醸し、器物破損などで警察沙汰になりましたが、彼女はのちに謝罪し、サメ保護に関心を持ってもらうための行動だったと語っています。
行動の是非はともかく、サメの命に光を当てるために声を上げた事実は、多くの議論のきっかけとなりました。
サメの保護のためにできること────声を「つなぐ」存在になる
有名人たちがサメの命に声をあげることで、多くの人が関心を持つきっかけが生まれています。
大切なのは、私たち自身も「この問題に気づいた一人」として、学び、共有し、日々の選択で意思を示すこと。
次に知ってほしいのは、サメたちがどのように狙われているか──その構造です。
サメのヒレだけを取る、シャークフィニングという現実
人間がサメに命を奪われる件数は、年間およそ4件ほどです。
一方で、フカヒレスープのために命を奪われているサメは、年間で1億匹を超えるともいわれています。
これは、1日に約24万7,000匹──
1時間に約11,000匹のサメが殺されている計算です。
その多くが、生きたままヒレだけを切り取られ、
泳ぐこともできず、ゆっくりと苦しみながら命を落としているのです。
シャークフィニングの構造や倫理的な問題については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ サメのヒレだけ取る残酷なシャークフィニングと持続可能なサメ漁 SDGs14