このブログでは、水族館の人気者「ツマグロ」について深掘りします。
可愛らしい見た目とは裏腹の生態や、迫力満点のジャンプなど、知られざる一面、名前の由来や大きさ、生息地、そして人間との関わりまで幅広く解説します。ツマグロの魅力あふれる写真も多数掲載!
ツマグロのかわいい写真やサメターン「ツマグロ編」もお見逃しなく!
ツマグロとは学名:Carcharhinus melanopterus、英語名:Blacktip reef shark
まず、ツマグロの基本情報を紹介します。
ツマグロの基本情報
- 名前
- ツマグロ(Blacktip Reef Shark)
- 学名
- Carcharhinus melanopterus
- 保全状況
- 絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)
- 分類
- メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 1959年以来、累計で14件のサメ事故
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- なし
- 大きさ
- 一般的な全長は91cm〜160cm
- 最大全長
- ジョージア水族館によると、最大200cm
- 平均寿命
- 13〜15歳。
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 分布
- アフリカ東北部とアラビア半島とに挟まれた紅海、インド洋、ハワイまでの太平洋の熱帯の浅い海。
- 生息域
- 珊瑚礁、ラグーン
- 水深
- 水深30mまでの非常に浅い水域〜最深で75m。
- 繁殖方法
- 胎生(母体依存型・胎盤タイプ)
- 妊娠期間
- 8〜16か月
- 産仔数
- 2〜5匹
- 幼魚の大きさ
- 33~52cm
- 繁殖サイクル
- 半年、1年、2年(地域によって異なる)
- 成熟年齢
- -
- 成熟サイズ
- 102cm
- 生息年代
- 調査中
- 命名された年
- Quoy & Gaimard, 1824
- サメが住んでいる水深
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
ツマグロは人食いザメなの?人間への危険性は?
ツマグロは、中型のサメで平均体長は約1.6m、最大で2mほどに成長します。
サメの中では小柄なのでツマグロは人食いザメではありません。
ツマグロは臆病な性格ですが、興奮すると攻撃的な行動をとることがあります。生息域が浅いことから、人間との接触機会が多く、過去には人間を攻撃した事例も報告されています。インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル(ISAF)によると、1959年以来、人間からの挑発がないにもかかわらず、ツマグロが人間を攻撃した回数は11回に上ります。これらの攻撃は、主に浅瀬で泳いでいる人々のふくらはぎやくるぶしを、獲物と間違えて噛みつくことによるものです。
人食いザメでは
野生の生きものと接する際には、どんなに小さな生きものであっても、必ず注意が必要です。マーシャル諸島では、先住民の島民が、浅瀬を歩く代わりに泳ぐことで、ツマグロとの接触を避けているという事例もあります。
ツマグロの形態
ツマグロは、その名前が示すように、ヒレの先端の鮮やかな黒とヒレの中間部の白っぽい色のコントラスト目立ちます。
ツマグロの顔
ツマグロの顔の特徴は、短くて丸い鼻と、クールな目つきです。
ツマグロの口
ツマグロの口元から歯はほとんど見えません。
ツマグロの体色
中型の流線型のボディはチャコールグレーのような濃いめのグレーの色味や、榛色(はしばみ色、ヘーゼルナッツのような色)で、おなか側は白く明るい色をしています。
ツマグロの最大サイズは?
平均的なツマグロの大きさは、全長約1.6mです。
大きなサイズのツマグロになると最大1.8m〜2mもの全長になることもあります。
国際ゲームフィッシュアソシエーションに記録されているツマグロの最大重量は13.6kgです。
ツマグロのオスとメスの見分け方
ツマグロのオスとメスの見分け方はとっても簡単!
写真で比較してみましょう!
ツマグロのオス
ツマグロに限らずサメのオスは下腹部で見分けることができます。
生殖器が二本付いているのがオスです。
ツマグロのメス
ツマグロに限らずサメのメスは下腹部で見分けることができます。
下腹部になにも付いていないのがメスです。
ツマグロの特徴とは
ツマグロは、熱帯のインド太平洋のサンゴ礁周辺、わずか数メートルの浅瀬を好んで泳ぎ、人との遭遇率が高いサメです。波打ち際やサンゴの間を活発に動き回るため、生息地では海面からツマグロの先端が黒い第一背びれが突き出ている様子を目にすることも少なくありません。
ツマグロは、ヒレの先端が黒いという特徴にちなんで名付けられました。
ツマグロの名前の由来と意味
ツマグロの学名は、1824年にフランスの博物学者ジャン・ルネ・コンスタン・クオイとジョセフ・ポール・ガイマールによって最初に記載されました。
“Carcharhinus melanopterus”の“Carcharhinus”は、メジロザメ属という意味です。
“melanopterus”は、ギリシャ語で「黒」を意味する“melas”と「翼」または「ひれ」を意味する“pteron”から“Carcharhinus melanopterus”という学名になりました。
ツマグロの学名は黒いヒレを持つメジロザメ属のサメという意味です。
ツマグロの英語の名前は?
英語では「Blacktip reef shark」といいます。
カマストガリザメの英名が「Blacktip shark」なので、間違えないように注意しましょう!
とってもかわいいツマグロのジャンプ(ブリーチング)
Baby flying jaws 😭💙 pic.twitter.com/2C9pkGHAtt
— Sharks Daily 🦈 (@SharksEveryDayy) January 17, 2021
ツマグロのジャンプ(ブリーチング)する理由についてはわかりませんが、狩りに関係する何かではないか考えられています。
オーストラリア沖のグレートバリアリーフの近くでは、ツマグロが海中から飛び出して、空中で3、4回回転する様子が観察されているとか。
ツマグロの好きな食べ物は?
ツマグロの好きな食べ物は、ハタ、ボラ、ニザダイ、ベラなどのサンゴ礁の魚を食べています。
また、イカ、タコ、エビ、イカ、シャコなどの小さな甲殻類も食べたり、まれに、ウミヘビや巣から落ちた海鳥のヒナも食べることもあります。
ツマグロの性格
ツマグロの性格は好奇心が強く臆病なサメですが、興奮すると少し危険な性格をしています。
ツマグロの社会性
ツマグロの社会性があり、群れで行動することが多いサメです。
他の社会性を持つサメと同様に、ツマグロの群れも大きさによって群れの中の序列が決まっているようです。
ツマグロが大きな群れを作る理由には「数の力」で捕食者から身を守っているという説があります。
サメターン「ツマグロ編」
水族館でサメがターンする瞬間が大好き。
サメターンマニアです。
ツマグロの生態
ツマグロは熱帯および亜熱帯のインド太平洋の沿岸海域全体でよく見られるサメです。ツマグロはサンゴ礁、河口、マングローブ、湾、海岸、河口付近を好むサメです。また、水深数mの浅い海域で背びれを出して泳ぐ姿がよく見られますが、深いところでは水深75mからの報告もあります。
ツマグロの分布域
出典:Chris_huh, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
ツマグロは熱帯および亜熱帯のインド太平洋の沿岸海域全体でよく見られます。具体的な分布については以下の通りです。
インド洋
南アフリカからマダガスカル、モーリシャス、セイシェルを含む紅海からインド亜大陸の海岸に沿って東へ、スリランカ、アンダマン諸島を含む東南アジア、モルディブまで分布しています。
太平洋
中国南部、フィリピンからインドネシア、オーストラリア北部、ニューカレドニアにまたがり、さらにマーシャル島、ギルバート島、ソサエティ島、ツアモツ島、ハワイ諸島や太平洋の島々のサンゴ礁にも分布しています。日本には分布されていないと考えられていましたが、西表島よりツマグロと同定できるメジロザメ科魚類が1個体採集されたと報告されています(参照:日本板鰓類研究会『板鰓類研究会報 第53号』、2017年10月)。
ツマグロの生息域
ツマグロは、サンゴ礁、河口、マングローブ林、湾、海岸といった、比較的浅い沿岸域を好むサメです。
生まれたばかりのツマグロは、母ザメによって浅い砂地に置き去りにされ、捕食者から身を守るように育ちます。成長すると、ドロップオフと呼ばれる海底が急激に深くなる斜面付近でも見られることがあります。
出典:潮間帯生物
ツマグロは潮間帯(ちょうかんたい、画像参照)、人間の膝下程度の水深の浅いサンゴ礁の海岸にも生息しています。
※潮間帯とは、満潮と干潮の間で海水に覆われたり、空気中に現れたりする場所のことです。
ツマグロは、このような浅い水域の波打ち際やサンゴ礁の間を活発に動き回ることが多く、海面から背びれが突き出ている様子が観察されます。
深いところでは水深75mからの報告もあります。
興味深いことに、ツマグロは非常に狭い範囲に生息していることが知られています。たとえば、中部太平洋のパルミラ環礁沖に生息するツマグロザメの個体群は、わずか0.5平方キロメートルの範囲で範囲で生活していることが報告されています(Ref.1)。
ツマグロの生息範囲が非常に狭いのは、サンゴ礁との密接な関係を示す強い棲息地嗜好性と限られた移動範囲によるものと考えられます(Papastamatiou et al., 2010, 2009; Stevens, 1984)。ツマグロは年間の約70%を0.3km²の範囲内で過ごし、移動は通常、同じ島周辺または近隣の島々間にとどまります(Mourier & Planes, 2013)。
ツマグロと淡水
ツマグロは淡水と海水が混在した汽水域で時折目撃されています。
『サメガイドブック 世界のサメ・エイ図鑑』によると、東部地中海に分布している種はスエズ運河まで遡ることもあります。
ツマグロは淡水で観察されていますが、海から遠く離れた熱帯の湖や川では観察されていません。
また、マダガスカルでは河口の汽水域や湖、マレーシアでは淡水域からも報告もありますが、低塩分濃度への耐性はオオメジロザメほどではありません。
ツマグロの生殖と成長
ツマグロは胎生(母体依存型・胎盤タイプ)のサメです。
メスのツマグロの生殖周期は毎年または2年ごとです。妊娠期間は水温に応じて8〜16か月と変化すると考えられています。ツマグロは、全長46〜52cmの子ザメを2〜4匹くらい産みます。
出産数が少なく、妊娠期間が長いにもかかわらず、ツマグロは沿岸の漁業で定期的に漁獲されているため、人間の手により枯渇しやすいサメの一種です。
飼育下でのツマグロの繁殖にも成功していますが、数は多くはないようです。
ツマグロの単為生殖
オスがいない環境のツマグロは単為生殖することができます。
サメの単為生殖については、ボンネットヘッドシャーク、カマストガリザメ、トラフザメ、スウェルシャーク、ネムリブカなどでも確認されています。
ツマグロの寿命
野外で採集されたツマグロの寿命は15年と推定されていますが、現存する年齢推定法の限界から、実際の寿命はこれよりも長い可能性が非常に高いと考えられています。飼育下では、25年以上生きた個体の報告もあります(Chin et al. 2013b)。
ツマグロについてのよくある質問
ツマグロについてのよくある質問をまとめました、さらに知りたい方のためにおすすめ記事へのリンクも貼っています。
ツマグロは絶滅危惧種ですか?
ツマグロは絶滅危惧種です。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)、ワシントン条約では附属書IIに掲載されています。
カマストガリザメとツマグロの違いは?
見た目も標準和名もまったく違うサメなのに、紛らわしいカマストガリザメとツマグロ。
その理由については以下のブログに書いています。
ツマグロがいる水族館は?
ツマグロは水族館で飼育しやすいサメなので出会える確率が高いサメです。
水族館でツマグロに会いたい!という方は『ツマグロがいる水族館はどこ?飼育下での繁殖についても解説』をお読みください。
水族館でのツマグロの繁殖についても解説していますよ!
ツマグロはかわいい
ツマグロはかわいいです。
水族館なら気軽にツマグロのかわいさを観察することが可能です。
サメの正面顔ってプロの写真家の人の写真に少なくないですか?
参考文献
- Discovery UK. (n.d.). Blacktip Reef Shark: Key Facts, Lifespan, Habitat and Information. .2024.11.30に閲覧.
- IUCN. (2020). Carcharhinus melanopterus (Blacktip Reef Shark).2024.11.30に閲覧.
- Save Our Seas Foundation. (n.d.). Blacktip reef shark.2024.11.30に閲覧.
- Florida Museum. (n.d.). Carcharhinus melanopterus – Discover Fishes.2024.11.30に閲覧.