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絶滅危惧種のサメや魚

ツマグロが絶滅危惧種なのはなぜ?その理由を解説

2024年11月30日

ツマグロが絶滅危惧種なのはなぜ?
ツマグロ(Carcharhinus melanopterus)は、背びれの先が黒く、丸みを帯びたフォルムがかわいいサメです。水族館では、ツマグロの愛らしい姿の虜になってしまいます。
ところが、ツマグロが絶滅危惧種だということをご存知ですか?
今回のブログでは、ツマグロがなぜ絶滅危惧種になってしまったのか、その理由について詳しく解説します。

ツマグロ英名:Blacktip reef shark / 学名:Carcharhinus melanopterus

浅い海で背びれを出して泳ぐツマグロツマグロ(Carcharhinus melanopterus)は、メジロザメ属のサメの一種で、背びれの先端が黒く染まっているのが特徴です。サメとしてはあまり大きくはなく、平均体長は約1.6m、最大で2mほどに成長します。
ツマグロは、インド洋や太平洋の熱帯域のサンゴ礁に広く分布しており、特に浅海域を好んで生息しています。

サメのツマグロが絶滅危惧種なのはなぜ?

ツマグロは過去44年間で世界の個体数の30%以上を失ったと推定されている絶滅危惧種のサメです。
ツマグロが絶滅危惧種になってしまった原因は以下の二つ。

  1. 生息範囲が狭い
  2. サンゴ礁の環境悪化

生息範囲が狭い

ツマグロは、サメの中でも特に生息範囲が狭いことで知られています。特に、中部太平洋のパルミラ環礁沖に生息するツマグロザメの個体群は、東京ディズニーランドほどの広さしかない、わずか0.5平方キロメートルの範囲で生活しています(Ref.1)
ツマグロの生息範囲が非常に狭いのは、サンゴ礁との密接な関係を示す強い棲息地嗜好性と限られた移動範囲によるものと考えられます(Papastamatiou et al., 2010, 2009; Stevens, 1984)。個体は年間の約70%を0.3km²の範囲内で過ごし、移動は通常、同じ島周辺または近隣の島々間にとどまります(Mourier & Planes, 2013)。
このような特性から、ツマグロは生息環境の質の低下に極めて脆弱なサメだといえます。

サンゴ礁の環境悪化

地球規模の気候変動による海水温の上昇は、大規模なサンゴ礁の白化現象を引き起こし、その頻度と深刻度は近年増加傾向にあります(IPCC報告書、2019年)。さらに、一部の国々における破壊的な漁法や水質汚染といった人為的な要因も、サンゴ礁の劣化を加速させています(McManus 1997; MacNeil et al. 2019)。
世界中の海洋面積のわずか1%を占めるに過ぎないサンゴ礁は、9万3千種以上の動植物の生息地であり、浅海の生物種の35%以上がその恩恵を受けています。しかし、国際サンゴ礁イニシアチブ(ICRI)の最新の報告書「世界のサンゴ礁の現状2020」によると、2009年から2018年にかけて世界のサンゴの14%が失われ、これはオーストラリアのすべてのサンゴ礁を上回る規模です。
このような、サンゴ礁の急速な衰退は、ツマグロだけではなく多くの海洋生物の生存を脅かしています。

ツマグロの保全ステータス

国際自然保護連合(IUCN)

ツマグロは絶滅危惧種?

ツマグロは絶滅危惧種:危急(VU / Vulnerable)と評価されています。

絶滅絶滅危惧種絶滅リスクは低い
1.絶滅(EX)2.野生絶滅(EW)3.深刻な危機(CR)4.危機(EN)5.危急(VU)6.準絶滅危惧(NT)7.低懸念(LC)
どこにもいない
ほぼ絶滅
かなりやばい
やばい
やばそう
そろそろやばい
今は心配なし
メガロドン -ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメアオザメ、ニタリ、レモンザメオオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメイタチザメ、ヨシキリザメネコザメ
 - -イリオモテヤマネコ、ラッコトキ、トラパンダトド -
 - - -ニホンウナギクロマグロ -ブリ

※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。

ワシントン条約

ワシントン条約(CITES)
附属書II

ツマグロはワシントン条約(CITES)に掲載されています。

2022年11月、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)第19回締約国会議(CITESCoP19)にて、メジロザメ科のサメを附属書Ⅱに一括掲載することが提案され、採択されました。
ツマグロはメジロザメ目のサメなのでワシントン条約による規制対象です。

ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について

ツマグロを保全

ツマグロは、生息範囲が狭く、個体数が少ないことから、絶滅の危機に瀕している種です。まだツマグロに特化した具体的な保護対策は確立されていませんが、海洋保護区などの取り組みによって、間接的に保護されています。
また、ツマグロは好奇心旺盛な性格から、ダイバーやシュノーケラーに近づくことも多く、観光客に人気となっています。この特徴を生かしたエコツーリズムは、地域経済の活性化にも貢献し、同時にツマグロの保護意識を高めることにつながることが期待されます。
エコツーリズムを通じてツマグロの保全が成功すれば、他のサメ類の保全にもつながる重要なモデルケースととなるかもしれませんね。

参考文献

  1. Discovery UK. (n.d.). Blacktip Reef Shark: Key Facts, Lifespan, Habitat and Information. .2024.11.30に閲覧.
  2. IUCN. (2020). Carcharhinus melanopterus (Blacktip Reef Shark).2024.11.30に閲覧.
  3. Save Our Seas Foundation. (n.d.). Blacktip reef shark.2024.11.30に閲覧.
  4. Florida Museum. (n.d.). Carcharhinus melanopterus – Discover Fishes.2024.11.30に閲覧.

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シャーク・アクティビストReinoとにゃぶり

シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 好きなものは、7 MEN 侍、SixTONES、永瀬廉(King & Prince)。ブログの執筆と監修を行っています。

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