ヨゴレ(英名:Oceanic Whitetip Shark / 学名:Carcharhinus longimanus) は、外洋に分布するサメです。
危険なサメとして有名なヨゴレ。
ところが、ヨゴレの個体数は世界中で98%以上減少したと推定されており、絶滅危惧種と評価されているサメです。
今回のブログでは、ヨゴレはなぜ絶滅危惧種なのかということを解説します!
ヨゴレ(サメ)はなぜ絶滅危惧種なのか
ヨゴレ(サメ)は、かつては外洋で多く見ることのできましたが、すべての海洋で個体数が急激に減少しており、ヨゴレの個体数は世界中で98%以上減少したと推定されています。
大西洋北西部と大西洋中央部では1992年から2000年の間に70%も減少したと推定されています。
その理由は大きくわけて3つ。
- フカヒレとしての需要
- 混獲による個体数の減少
- 繁殖率が低い
フカヒレとしての需要
ヨゴレの大きなヒレ、肉、肝油などを目当てにサメ漁の対象となっていたためです。
ヨゴレはマグロ類やメカジキを対象とする遠洋はえ縄漁業、まき網漁業、カツオの刺網などによって世界中で捕獲されています。
漁獲のほとんどは、沖合と公海の遠洋漁業の混獲によるものです。
また、狭い大陸棚のある地域では、沿岸小規模漁業のはえ縄、刺し網、トロール網でも捕獲されています。
IUCNによると、遠洋漁業や国内漁業におけるヨゴレの漁獲量の過少申告が考えられています。
混獲による個体数の減少
ヨゴレは水深200mまで表層を好むサメです。
マグロやメカジキなど他の種を狙ったはえ縄の餌に引き寄せられてしまい混獲されることが多いようです。
はえ縄漁業では餌のついた針を400本~1,000本つないだ釣り糸約5~6キロメートルをしかけて魚を釣る。
出典:さまざまな漁法
ヨゴレは好奇心旺盛な性格が災いして、混獲率が高くなっています。
そうなのです。
ヨゴレは大好物のカツオを追いかけて捕獲されてしまうことも多いとか。
運良く逃れたヨゴレの口に釣り針がかかったままになってしまうこともあります。
釣り針による怪我は感染症のリスクもあるため、ヨゴレにとっては逃れられたからそれでOKということではないのです。
繁殖率が低い
ヨゴレに限らずサメは繁殖率が低いです。
そのため、漁獲圧に耐えることができません。
ヨゴレの場合、1匹から15匹の子どもを産み、繁殖周期は2年であると考えられています。
ヨゴレの保全状況
ヨゴレの保全状況をIUCNレッドリストとワシントン条約(CITES)でみてみましょう。
IUCNレッドリストでは絶滅危惧種
ヨゴレは絶滅危惧種?
ヨゴレは絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
IUCNレッドリストではヨゴレを絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価しています。
深刻な危機とは絶滅危惧種の中でも最も危険な状況です。
2019年にヨゴレに対する漁獲圧力は2012年半分以下となり、資源量はわずかに回復しているものの、親魚量の水準は非常に低いままです。
漁獲圧力も依然として高い水準にあることから依然として乱獲状態、過剰漁獲の状態であることが推測されています。(水産庁,2021)
絶滅危惧種のヨゴレを保全する動き
ワシントン条約(CITES)
- ワシントン条約(CITES)
- 附属書II(2013年)
ヨゴレは、2013年第16回ワシントン条約締約国会議(COP16)バンコク会議にて、ニシネズミザメ、アカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメと共に附属書IIに掲載されました。
日本はこの決定を留保しています。
また、2022年11月、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)第19回締約国会議(CITESCoP19)にて、メジロザメ科のサメを附属書Ⅱに一括掲載することが提案され、採択されました。
今後はメジロザメ目メジロザメ科に属するサメのすべてがワシントン条約によって国際取引を規制されることになります。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
地域漁業管理機関(RFMO)
地域漁業管理機関(RFMO:アールエフエムオー)は、水産資源の保存及び持続可能な利用の実現を目指し、個別の条約に基づいて設置される国際機関です。5つのRFMOが全世界の海洋を管理しており、日本はすべてのRFMOに加盟しています。
RFMOでは、魚種ごとの資源状況等を踏まえ種々の資源管理措置を実施しています。
ヨゴレはこのうちの4つのRFMOで保持、転載、保管、水揚げの禁止の対象となっているサメです。
- 大西洋まぐろ類保存国際委員会(2010年)
- 米州熱帯まぐろ類委員会(2011年)
- 中西部太平洋漁業委員会(2012年)
- インド洋まぐろ類委員会(2013年)
移動性野生動物種の保全に関する条約
ヨゴレは2018年、移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約 / The Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals / CMS)の附属書1に追加されました。
まとめ
ヨゴレの個体数を回復させるためには、RFMOの義務に従い、ヨゴレの保持と水揚げをすべて禁止することが理想的です。
また、混獲を最小限に抑え、安全な放流を心掛け、漁獲量(廃棄を含む)の報告を改善する取り組みも急務です。
しかしながら、ネット上で水揚げされたヨゴレの写真がときどき見られるなど、すべての水揚げを禁止することが難しいという現実があります。漁業の方法から考えて、これは避けられない側面もあるともいえるでしょう。
そのため、ヨゴレの混獲問題を解決するためには、科学者、漁業者、政府、NGOなど、多様なステークホルダーが協力し、長期的な視点を持った取り組みが不可欠です。
ヨゴレの保全は、海洋生態系のバランスを保ち、生物多様性を守る上で重要な課題です。
わたしたちは、未来の世代のためにヨゴレをはじめとした絶滅危惧種のサメを保護していく責任があるのです。