自然と生物多様性の豊かさが過去50年間で73%減少、地球は危険な転換点に直面、2030年までの取り組みが鍵。
世界自然保護基金(WWF)インターナショナルは、2024年10月10日に『生きている地球レポート2024 -自然は危機に瀕している-』を発表しました。この報告書は、地球の生物多様性の健全性を調査したもので、深刻な現状を明らかにしています。
生物多様性の急激な減少
WWFインターナショナルは、10月21日(月)よりコロンビアのカリで開催される国連の生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)を前に、本日2024年10月10日(木)に『生きている地球レポート2024 -自然は危機に瀕している-』(英語名:LIVING PLANET REPORT 2024 – A System in Peril)を発表しました。
この報告書は、地球の生物多様性の豊かさと健全性に、どのような傾向がみられるのかを調査したものです。15回目となる今回の報告書では、1970年から2020年までのわずか50年の間に、自然と生物多様性の健全性を測る数値「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」が73%減少した深刻な現状が明らかになりました。
WWFは、自然の損失と気候変動の2つの連鎖した危機により、地球が危険な転換点(ティッピング・ポイント)に直面していること、2030年に向けた今後5年間の各国政府や民間セクターの取り組みの重要性がかつてないほど高まっていることを本報告書で指摘しています。さらに、国立公園等の保護区や保全上重要な地域に対する政策など自然環境保全のあり方、食料システム、エネルギーシステム、金融システムの4つの分野での変革の必要性を訴えました。
「生きている地球指数(LPI)」とは
2024年発表の「生きている地球指数(LPI)」では、分析対象の脊椎動物種の個体群の大きさが、過去50年間で平均73%縮小しています。指数の変化率は、50年間に追跡された動物個体群の大きさの平均的な比例変化を反映したもので、失われた個体数や個体群の数ではありません。グラフの白線は指標値を示し、白線の上下の赤いゾーンは、傾向をとりまく統計的確実性を示します。(統計的確実性95%、範囲67%~78%)。出典:WWF、ZSL(2024)『生きている地球指数 データベース』
1970年から2020年のわずか50年の間に平均73%減少
1970年から2020年までのわずか50年間で、自然と生物多様性の健全性を測る「生きている地球指数(LPI)」が73%減少しました。この指数は、5,495種の野生の脊椎動物における約3万5,000の個体群の分析に基づいています。
自然と生物多様性の健全性を測る数値「生きている地球指数(以下、LPI)」が、1970年から2020年のわずか50年の間に平均73%減少。今回のLPIは、5,495種の野生の脊椎動物(両生類、鳥類、魚類、哺乳類、爬虫類)における、約3万5,000の個体群に対する分析に基づき、「ロンドン動物学協会(Zoological Society of London: ZSL)」が作成。
生育環境別のLPI減少率
- 淡水域:85%
- 陸域:69%
- 海域:56%
野生生物の生育環境ごとのLPIの減少が最も著しいのは、淡水域(-85%)で、河川や湖沼、湿地などの自然に生きる淡水魚や両生類などが、非常に高いストレスを受けています。陸域は-69%、海域は-56%です。
地域別のLPI減少率
- 中南米・カリブ海:95%
- アフリカ:76%
- アジア太平洋地域:60%
LPIの減少が著しいのは中南米・カリブ海(-95%)、アフリカ(-76%)、そしてアジア太平洋地域(-60%)。欧州(-35%)及び北米(-39%)では、自然に対する大規模な負の影響が1970年の指標開始以前からすでに顕在化していたため、マイナス傾向が少ないと考えられます。
危機に瀕する地球
WWFは、自然の損失と気候変動の2つの連鎖した危機により、野生生物と生態系を極限まで追い詰めており、地球が危険な転換点(ティッピング・ポイント)に直面していると警告しています。この状況は、地球の生命維持システムの存続を脅かし、社会の不安定化を招く可能性があります。
かし、まだ後戻りできない転換点を超えたわけではありません。
今後5年間の重要性
WWFの報告書は、2030年に向けた今後5年間の取り組みが極めて重要であると強調しています。各国政府や民間セクターは、以下の国際的枠組みで掲げた2030年世界目標の達成に向けて行動する必要があります
- 持続可能な開発目標(SDGs)
- 昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)
- パリ協定
この3つの国際的枠組みが定める2030年までの世界目標達成に向け、各国は自らの目標を設定し、実践していくことが求められます。
必要な変革
WWFは、以下の4つの分野での変革がこの課題解決の鍵となると提言しています。
- 自然環境保全のあり方(国立公園等の保護区や保全上重要な地域に対する政策)
- 食料システム
- エネルギーシステム
- 金融システム
日本の役割
WWFジャパン自然保護室長の山岸尚之氏は、日本政府や企業に対して、以下の行動を求めています。
- グローバルに展開する日本企業は、サプライチェーン全体での環境負荷を把握し、取り組みを進めること
- 政府は企業の取り組みを加速させる政策を実施すること
- 今後開催される国際会議(CBD-COP16、COP29)でリーダーシップを発揮し、気候と生物多様性に関連する政策をより融合させること
この報告書は、地球の生物多様性が危機的状況にあることを明確に示しています。今後5年間の行動が、地球の未来を左右する鍵となるでしょう。
(日本語版)
生きている地球レポート2024ファクトシート日本語版(6ページ)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20241010lpr_j.pdf
この記事はプレスリリース、『生きている地球レポート2024』発表 自然と生物多様性の豊かさが過去50年間で73%減少 ―地球は危険な転換点に直面、2030年までの取り組みが鍵―をもとにサメぺディアが編集したものです。