サメとエイは魚類の中で最も大きな脳をもっているというのをご存知ですか?
実は、サメの脳と体の比率は、鳥類や一部の哺乳類とほぼ同じなのです。
サメはある程度の認知能力を持っており、記憶すること、経験から学習すること、仲間や他の海洋動物とコミュニケーションをとれると考えられています。
サメも種によっては社会があり、群れで生活し、群れで狩りをします。
また、ホホジロザメなどの一部の種はボディランゲージによるコミュニケーションをとると考えられています。
今回のブログでは、サメの知能について解説します。
サメの知能は高い?
学術誌『Animal Cognition』に掲載された研究によると、オグロメジロザメが特定の情報を少なくとも1年間は記憶する能力が明らかになったそうです。
この認知能力はさまざまな認知実験を行わせたことから判明したもので、カラスや一部の霊長類など、永続的な記憶を持つことが知られている他の動物たちに匹敵するものだそうです。
この実験ではサメを水槽に入れ、画像を映し出しました。
- 三角形は餌
- 四角形は餌ではない
これを識別して鼻先を接触させるということを教えたところ、どちらが餌なのかをサメは覚えたそうです。
また、カニッツァの三角形(Kanizsa triangle)と呼ばれる錯視図形(目の錯覚を利用した図形)を投影しても、サメは正しい図形を識別できることが多いことがわかりました。
さらに、目の錯覚を利用した線の長さの違いを識別させる実験でも、サメの知能が高い可能性があることがわかったそうです。
この知能実験の最後に、研究開始から約50ヵ月後、研究者はオグロメジロザメが最初の実験の訓練をまだ覚えているかどうかテストしました。
すると、50週間後まで、ほとんどすべてのサメが、どの形を選択すべきかをまだ覚えていたとのこと(参考記事)。
また、捕獲されたサメに対して行われた実験によると、サメには学習能力があり、ネズミのような哺乳類と同じレベルで行動様式を変えることがわかりました。
水族館での実験では、ニシレモンザメやコモリザメは学習能力が高く、しかもすぐに学習をすることが明らかになった。
訓練を10回しなくても、彼らは特定の音や動きとエサを関連づけられるようになる。
特定の場所や特定の人物から、食べ物を受け取ることを覚える。
そしてネズミと同じくらいの速さで、単純な迷路を泳ぎ出ることができる。引用:スティーブ・パーカー (著), 仲谷 一宏 (監修)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2010年。
このように視覚的手がかり餌を判別する能力を持つということは、過酷な生存競争が繰り広げられる海で生き残れる可能性を高めることにつながっていくということですね。
サメの学習能力
サメの学習能力について解説します。
『シャーク~海洋の覇者~』によると、ジンベエザメに漁を邪魔されることを悩んだ漁師がジンベエザメに餌をあげてみたそうです。
餌をあげることでジンベエザメは漁師の網から魚を吸い出すことをやめ、網を破られることがなくなったそう。
おどろくべきことに、はじめは数匹だったジンベエザメは年を追うごとに増えていったとか。
サメの社会的地位
次に、サメの社会的地位について解説します。
体の大きさの認識
サメは同種・他種の中で自分の社会的地位を認識できると考えられています。
同種のサメの中での序列は大きさに基づいていると推定されています。
実際に、餌となるオットセイを加えたホホジロザメが自分より大きなホホジロザメに横取りされる場面か観察されたりしています。
また、『シャーク~海洋の覇者~』によると、ホホジロザメには個性があることもわかっているそうです。
ダイバーに対しても他のサメに対しても体が大きいほど強気なことが多いとか。
つまり、サメは自分の体格を認識し、他のサメの体格と比較する能力に長けていると推測されます。
ボディーランゲージ
たとえば、わたしたち人間の世界でもライオンなどの動物の世界でも、そこに集団があれば力をはじめとしたさまざまな要素による序列がありますよね。
同じようにサメの世界にも序列があるのです。
『世界サメ図鑑』によると、大きな群れをつくるサメのはときに、口を開けて群れの仲間にぶつかったりします。
ただし、これは本気の攻撃ではなく、群れの中で序列を決める行為だと考えられているそうです。
ホホジロザメの会話
次に、「ホホジロザメの会話」について解説します。
ホホジロザメは知的で好奇心の強い生物なのではないかという見方もあります。
それは、ホホジロザメが集まると、口をあけて見つめ合ったり、体をぶつけ合ったりと、さまざまな行動をするからというのが理由のようです(参考記事)。
『美しき捕食者 サメ図鑑』によると、ホホジロザメ特有の威嚇行動として
- 攻撃に移る前ににっこりと笑ったように歯をむき出しにする
- 標的に向かって突進して、ギリギリのところで進路を変える
などがあるそうです。
また、ホホジロザメが何匹も集まるような場所では、互いに快適な距離を大切にしているような動きも観察されています。
たとえば、まっすぐ向かい合って近づいてきたときに、互いに向きを変えることで敵ではないよということを示しているのだとか(参考動画:シャーク~海洋の覇者~)。
わたしたちも道を歩いているときにぶつからないようにそっと避けたりしますよね。
もし勢いよくぶつかられるなんてことがあったら、とても嫌な気分になってしまいます。
ホホジロザメも体の動きでコミュニケーションをとり、平和を保っているとみられているのです。
つまり、ボディーランゲージはホホジロザメにとっての会話のようなものなんですね。
このホホジロザメの会話は微妙な合図で成り立っているため、まだほとんど解読されていないそうですが、今後の研究成果が楽しみです。