
ホホジロザメやサメたちにとって一番恐ろしい天敵が人間であることは間違いありません。
では、海にホホジロザメの天敵はいるのでしょうか。
今回のブログでは、ホホジロザメ vs シャチはどっちが強いのか、大きいのかということについて解説します。
ホホジロザメ vs シャチはどっちが大きい?
ホホジロザメ vs シャチの体の大きさはシャチの方が大きいです。
また、体の大きさだけではなく、ホホジロザメよりもシャチの方が体重も重く、最大遊泳速度も速いです。
| ホホジロザメ | シャチ | |
|---|---|---|
| 最大全長 | 6.4m | 9.6m |
| 最大体重 | 2,268kg | 9,000kg |
| 最大遊泳速度 | 45km/h | 48km/h |
この表の数値は、資料によって幅があります。シャチについては、アメリカ・ワシントン州で見つかったオスの9.8mが記録上の最大とされ、遊泳速度も48km/hから56km/hまで資料によって差があります(U.S. Fish and Wildlife Service 2026)。ホホジロザメの45km/hは直接計測された数字ではなく、推定にもとづく値です。ホホジロザメの泳ぐ速さについては「ホホジロザメは時速何km?気になる遊泳速度」でくわしく書いています。
このように数字で比較してみると、ホホジロザメよりもシャチの方が有利なのがよくわかりますね。
その上、シャチは高い知能をもっています。
ホホジロザメ vs シャチはどっちが強い?
これまでシャチは南アフリカの海でホホジロザメには手出しをしなかったのになぜ、攻撃するようになったのでしょうか。
頭脳と強さを兼ね備えたシャチは、驚くほど複雑な方法でサメを殺すことが知られています。
シャチはまずサメに体当たりし、サメの体をひっくり返す。多くのサメは、体をひっくり返されると瞬間的に意識を失い、無防備になる。
バハマのビミニ島に研究拠点を置くサミュエル・グリューバーによると、「シャチの学習能力は驚くほど高く」、1頭のシャチがたまたまサメに激突し、サメがひっくり返って動かなくなったら、「それを仲間に教えることも考えられる」という。
引用:Newsweek『シャチがホホジロザメを餌にし始めた』
引用文にある「意識を失い」という状態は、正確にはトニックイモビリティ(一時的な不動状態)と呼ばれるものです。意識そのものがなくなるわけではありません。くわしくは「ホホジロザメやサメの仲間がひっくり返ると気絶する理由は?」をお読みください。
つまり、賢いシャチは自分の捕食行動におけるリスクを最小限に抑えながら、ホホジロザメを簡単に捕食する方法を学んだと考えられます。
それだけではなく、ホホジロザメを水面に追い込み、頭上から尻尾で一撃を与えることもあります。
シャチはホホジロザメだけではなく、もっとも速く泳ぐことのできるアオザメや魚類最大の大きさを誇るジンベエザメですら倒すことができると言われています。
この2種については、その後、記録が公表されています。ニュージーランドの海では、7頭のシャチがアオザメを捕らえた様子が報告されました(Visser et al. 2000)。メキシコのカリフォルニア湾では、シャチがジンベエザメを襲って食べる場面が4件記録されています(Pancaldi et al. 2024)。
ホホジロザメはシャチから逃げる?
モントレー・ベイ水族館のサルバドール・ヨルゲンセンたちは、長年にわたりカリフォルニア州沖でホホジロザメを研究してきました。
ヨルゲンセンたちは、ホホジロザメに追跡タグを取り付けることにより、長期にわたってホホジロザメの回遊を追跡することができました。
研究チームは2006年から2013年にかけて、165匹のホホジロザメに音響タグを装着しています(Jorgensen et al. 2019)。
ホホジロザメたちは数か月にわたって南東ファラロン島を周遊し、ゾウアザラシを捕食していました。
ところが、2009年11月2日の昼下がり、2つのシャチの群れが島に出現し、その約8時間後(論文では7時間50分後)には、島にいた17匹のタグ付きホホジロザメが突然姿を消してしまいました。
その後、ホホジロザメの追跡タグはシャチがいる場所から遠くの海域で検出されました。そのうち7匹は、およそ90km南のアニョ・ヌエボ島へ移動しています。
2011年11月20日と2013年10月31日にも、同じような事例が記録されています。
シャチがホホジロザメを襲撃
2017年2月から6月にかけて、南アフリカ・西ケープ州のガンズバーイ周辺の海岸に、5匹のホホジロザメの死骸が漂着しました(Towner et al. 2022)。
このうち性別と体長が公表されている4匹は、メスが1匹(4.9m)、オスが3匹(3.5m・4.1m・4.5m)でした。
また、漂着した5匹のうち4匹は、胸ビレのあたりに傷があり、肝臓がなくなっていました。
ホホジロザメの肝臓は体重の4分の1ほどを占め、成体では600kgを超えることもあります。
シャチなどの海生哺乳類が脂肪の層にエネルギーを蓄えるのに対して、ホホジロザメは肝臓にエネルギーを蓄えます。
ヨルゲンセンによると、この肝臓は海のなかでもっともカロリーの高い食べもののひとつです。
噛まれた痕、目撃情報からその犯人はシャチだということがわかりました。
これまでシャチは南アフリカの海でエドアブラザメなど他のサメの肝臓を捕食していましたが、ホホジロザメには手出しをしませんでした。
Towner et al.(2022)は、南アフリカでホホジロザメや他の沿岸性のサメとシャチとの捕食関係が増えており、生態系に大きな影響が出ると予想しています。
2021年以降にわかったこと(2026年7月追記)
この記事を公開したあと、シャチによるホホジロザメの捕食について、新しい記録がいくつも公表されました。
ガンズバーイからホホジロザメが消えた
Towner et al.(2022)は、2017年の漂着のあと、ガンズバーイでホホジロザメの目撃が2年半にわたって減り続けたことを、目視データと標識データの両方から示しました。
ホホジロザメが去ったあと、この海域にはクロヘリメジロザメが現れるようになりました。
研究チームは、ホホジロザメがいなくなったことで、これまで食べられていた側のサメが増えたと考えています。
襲う場面が初めて撮影された
2022年5月16日、南アフリカのモーセルベイのハルテンボス沖で、5頭のシャチがホホジロザメを襲う様子がドローンで撮影されました(Towner et al. 2023)。
シャチによるホホジロザメの捕食が直接記録されたのは、このときが初めてです。
撮影された群れには、ガンズバーイの捕食にも関わったとされるオス「Starboard(スターボード)」がいました。
この日のあと、モーセルベイではホホジロザメの目撃が数週間途絶えました。
1頭だけで仕留めた記録
2023年6月18日、モーセルベイのシール島から沖へ800mの海域で、Starboardが1頭だけで全長約2.5mの若いホホジロザメを仕留めました(Towner et al. 2024)。
襲いかかってから肝臓を食べ終えるまで、2分もかかっていません。
相棒のPort(ポート)は約100m離れた場所にいて、この捕食には加わりませんでした。
これまでシャチによるホホジロザメの捕食は、複数頭で協力して行うものと考えられていました。
Towner et al.(2024)は、この観察がその考え方を見直させるものだと述べています。
南アフリカ以外でも確認された
2023年10月、オーストラリア南東部のブリッジウォーター湾に、全長4.7mのホホジロザメの死骸が漂着しました(Reeves et al. 2025)。
肝臓と消化器、生殖器がなくなっており、体には4か所の噛み傷がありました。
研究チームが噛み傷を綿棒でぬぐって遺伝子を調べたところ、大きな傷からシャチのDNAが検出されました。
別の傷からはエドアブラザメのDNAが出たため、死んだあとに食べに来たとみられます。
シャチによるホホジロザメの捕食が遺伝子で裏づけられたのは、この記録が初めてです。
若いホホジロザメが狙われている
メキシコのカリフォルニア湾でも、若いホホジロザメがシャチに襲われる場面が2件記録されました(Higuera-Rivas et al. 2025)。
2020年8月15日、メス5頭の群れが全長およそ2mの若いホホジロザメを襲いました。
シャチはサメを何度も水面へ押し上げ、ひっくり返した状態で押さえ込みました。
やがて1頭が、二葉に分かれたサメの肝臓を口にくわえて浮上し、それを仲間のあいだで受け渡しています。
このとき近くにいたカリフォルニアアシカが肝臓に近づこうとしましたが、シャチたちは息を吐いて泡を出し、繰り返し追い払いました。
この日は続けて、もう1匹の若いホホジロザメも襲われています。
2022年8月3日、同じ場所で、オス1頭・メス1頭・亜成体2頭・子ども1頭の群れが、やはり全長約2mの若いホホジロザメを襲いました。
このときは、オスと子どももいっしょに肝臓を食べています。
シャチが若いホホジロザメを狙った記録は、2023年のモーセルベイの例に続いて世界で2例目、メキシコの海では初めてです。
Higuera-Rivas et al.(2025)は、この点についてこう述べています。
大人のホホジロザメはシャチについての記憶を持っていて、危険を感じると集まっていた海域から一斉に逃げ出します。
ところがメスのホホジロザメは、同じ場所へ戻って子どもを産む性質があります。
そのため、そこで生まれた若いホホジロザメは、シャチの危険を知らないまま襲われやすいのかもしれません。
ホホジロザメとシャチについてよくある質問
ホホジロザメとシャチについてよくある質問です。参考記事も紹介します。
シャチはなぜ、ホホジロザメをひっくり返すのですか?
シャチはホホジロザメを気絶させるためにひっくり返します。ホホジロザメがひっくり返ると気絶する理由については「ホホジロザメやサメの仲間がひっくり返ると気絶する理由は?」をお読みください。
シャチはサメを食べますか?
シャチはホホジロザメの肝臓が好物です。人間もサメの肝臓目当てに乱獲していましたが、シャチにとってもサメの肝臓は魅力的なようです。
また、人間がサメ肉をそれほど好まないのと同じようにシャチもホホジロザメの肝臓だけを食べて他は残してしまいます。
ホホジロザメの天敵はシャチ?
ホホジロザメの天敵はシャチ、といいたいところですがわたしたち人間です。ホホジロザメはシャチがいる海域からは逃げることができますが、わたしたち人間はホホジロザメが暮らしやすい海域で漁をすることが多く、混獲してしまいます。逃げ場がないという意味ではホホジロザメにとって最大の天敵はわたしたち人間でしょう。
参考記事:The Predator That Makes Great White Sharks Flee in Fear
参考文献一覧
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- Jorgensen SJ, Anderson S, Ferretti F, Tietz JR, Chapple T, Kanive P, Bradley RW, Moxley JH & Block BA (2019) Killer whales redistribute white shark foraging pressure on seals. Scientific Reports, 9, 6153. https://doi.org/10.1038/s41598-019-39356-2
- Pancaldi F, Ayres KA, Gallagher AJ, Moskito J, Williamson KC & Higuera Rivas JE (2024) Killer whales (Orcinus orca) hunt, kill and consume the largest fish on Earth, the whale shark (Rhincodon typus). Frontiers in Marine Science, 11, 1448254. https://doi.org/10.3389/fmars.2024.1448254
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