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サメを学ぶ

なぜ?メガロドンが絶滅した理由や時期は?

2023年8月21日

メガロドンは全長15〜20mの巨大な古代ザメとしてよく知られています。
最近では映画でも注目されていますが、メガロドンはすでに絶滅したサメです。

  • なぜ、メガロドンみたいな巨大なサメが絶滅したの?
  • ホホジロザメがメガロドンを滅ぼしたって本当?
  • メガロドンに天敵がいたの?
  • ホホジロザメの競争がメガロドン絶滅の原因?
  • 気候変動でメガロドンが絶滅したって本当?

などの疑問をお持ちの方もいるでしょう。
今回のブログでは、なぜメガロドンが絶滅してしまったのかその理由について解説します。

絶滅した巨大なサメ!メガロドンのおさらい

絶滅した巨大なサメのメガロドンのイメージ

絶滅したメガロドンのイメージ。研究者ですら、メガロドンがどんな姿をしているのかわかりません。

メガロドンは約2300万年前~350万年に南極を除く世界中の海に生息していたサメです。
歯の大きさから、メガロドンの全長は15~18mとみられています。
これはどれくらいの大きさかというと、最大級のホホジロザメの大きさの3倍以上!
この規格外のサイズ感から映画のキャラクターだと思っている方もいるかもしれませんが、メガロドンは実在したサメです。

メガロドンが絶滅した時期は?

メガロドンが繁栄していた時期は諸説ありますが、約2300万年前~350万年前です。
地質時代でいうと、中新世(ちゅうしんせい / Miocene)から鮮新世(せんしんせい / Pliocene)にかけてです。
メガロドンが絶滅してしまったのは鮮新世(約500万年前〜約260万年前)の半ばの350万年前とみられています。

メガロドンが絶滅した理由は?

メガロドンが絶滅した理由については複数の原因が絡み合っていると考えられています。

  1. 気候変動による環境の変化
  2. メガロドンの体温の高さ
  3. メガロドンが餌にしていた生きものの絶滅
  4. ホホジロザメの台頭

気候変動による環境の変化

メガロドン絶滅の一番の大きな原因は気候変動とみられています。
鮮新世(約500万年前〜約260万年前)は比較的温暖な気候でしたが、その末期は寒冷化しました。
氷床の拡大で海面の高さが下がったため、メガロドンの子育ての場でもあり、多くの生きものが生息していた沿岸部の地形が変わってしまいました。
地球規模の寒冷化はメガロドンを含む多くの生きものにとって厳しい変化となったようです。
古生物学者カタリナ・ピミエント(Catalina Pimiento)氏の研究チームが2017年に発表した論文によると、鮮新世末期の大きな気候変動と海面変動によって海洋生物の約36%は次の時代である更新世(260万年前〜約1万年前)まで生き残ることができなかったそうです(参考 ‘The Pliocene marine megafauna extinction and its impact on functional diversity’)。

メガロドンの体温の高さ

2023年6月26日付で「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences / PNAS)」に発表された論文 ‘Endothermic physiology of extinct megatooth sharks’ によると、メガロドンの体温は周囲の海水温よりも、7℃ほど高かったそうです。
一般的に魚は周りの温度が下がると、体温も同じように下がってしまう変温動物です。
ところが、生物学者の渡辺佑基さんの著書『進化の法則は北極海のサメが知っていた』によると、世界中におよそ2万5千種ほどいる魚類の中で、ホホジロザメ、ネズミザメ、アオザメなどのネズミザメ目のサメ類や、クロマグロやカツオなどのマグロ類の合わせて20種類ほどの魚類は体温が高いそうです。
ただし、一部のサメ類やマグロ類の体温が高いといっても、その体温は高くても30度程度なので、恒温動物の35〜40度程度の体温と比べると低いため、変温動物でもなく恒温動物でもないという位置付けになります。
体温が高いことによるメリットは普通の魚に比べて、遊泳速度が2.7倍速く、回遊距離も2.5倍長いことです。
遊泳速度が速いということは捕食に関係してくるので海での生存戦略ではとても重要なことです。
また、回遊距離が長いと分布を広げることもできますよね。
メガロドンが頂点捕食者であったこと、歯の化石が世界中で発見されていることも、メガロドンの体温が高かったことを示唆していますね。
ところが、メガロドンの体温の高さが絶滅の原因のひとつとなってしまうのです。

メガロドンが餌にしていた生きものの絶滅

メガロドンが南極を除く世界中の海で繁栄していた時期には、栄養価が高いクジラやアザラシの獲物が多く生息していたため餌に困ることはありませんでした。
ところが、鮮新世に起きた気候変動により、サメ、哺乳類、海鳥、カメなどの大型の海洋生物の多くがこの時期に絶滅しました。
その絶滅率は新生代の他の時代に比べて3倍高く、海洋生物のうち36%が絶滅したようです。
メガロドンは巨大な体と体温を維持するために、栄養価が高い餌がたくさん必要でした。
ところが、メガロドンの獲物であるヒゲクジラ類などの多くの獲物が気候変動により減少してしまったのです。
『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された論文‘Endothermic physiology of extinct megatooth sharks’では、体温を維持するために必要としたエネルギー量の多さがメガロドンが絶滅の一因となったことを示唆しています。

ホホジロザメの台頭

2022年5月、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載されたマコーマック博士らによる論文 ‘Trophic position of Otodus megalodon and great white sharks through time revealed by zinc isotopes’にて、メガロドンとホホジロザメが古代の海の食物連鎖の中で同じ位置にいたことが示唆されました。
その調査方法は、メガロドンとホホジロザメの歯の化石に含まれる亜鉛同位体の値を比較することです。
生きものが餌を食べたりすると、亜鉛同位体が歯などの組織と結合します。
この亜鉛同位体は食物連鎖の高い位置にいる生きものになるほど低くなります。
つまり、メガロドンとホホジロザメの歯の化石に含まれる亜鉛同位体の値を比較することで、この2種のサメが食物連鎖の中でどの位置にいたのかを推測できるのです。
メガロドンとホオジロザメの亜鉛同位体の値を比較した結果、どちらも高い栄養段階にいる高次捕食者であり、同じ獲物をめぐって競争していた可能性が示唆されました。
気候変動による一連の生態系の変化で餌となる生きものが減少した上に、メガロドンよりも少ない餌で体を維持できるホホジロザメが台頭したこともメガロドンの絶滅の一因かもしれません。
少ない餌を奪い合う状況下では、メガロドンよりホホジロザメに軍配が上がったのかもしれませんね。

おわりに

メガロドンの絶滅には、気候変動を引き金にして起こった環境の変化、餌を多く必要とする体温の高さ、メガロドンが餌にしていた生きものの絶滅率の高さ、競争相手のホホジロザメの台頭など、複数の原因が考えられます。
今となっては絶滅種のメガロドンですが、恐竜全体の歴史がおよそ1億6000万年間と考えると、メガロドンだけで2000万年ほど繁栄したということには驚いてしまいますね。
ちなみに、今日のわたしたちのご先祖さまである現生人類の時代が始まったのはたかだか20万年前です。
メガロドンはその巨大さばかりに注目が集まりがちですが、生きものとしての歴史の長さにも圧倒されてしまいます。
そんなメガロドンでも気候変動がきっかけで絶滅しまったんです。
今、わたしたちも地球の温暖化をはじめとした地球環境の問題に直面しています。
2000万年ほど繁栄したメガロドンと比較したらちっぽけなわたしたちですが、地球のために今自分たちにできることを改めて考えていきたいですね。

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シャーク・アクティビストReinoとにゃぶり

シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 好きなものは、7 MEN 侍、SixTONES、永瀬廉(King & Prince)。ブログの執筆と監修を行っています。

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