ニタリはオナガザメの仲間です。
水族館で飼育されることはほとんどないためなかなか出会う機会はありません。
このブログでは、ニタリの特徴などを解説します。
ニタリとは学名 Alopias pelagicus 1935年
分類Scientific Classification
ニタリ(学名:Alopias pelagicus 英語名:Pelagic thresher)は、ネズミザメ目 Lamniformes > オナガザメ科 Alopiidae > オナガザメ属 Alopiasに属するサメです。
- 界 Kingdom
- 動物界 Animalia
- 門 Phylum
- 脊索動物門 Chordata
- 綱 Class
- 軟骨魚綱 Chondrichthyes
- 亜綱 Subclass
- 板鰓亜綱(ばんさいあこう) Elasmobranchii
- 亜区 Subcohort
- サメ亜区 Selachii
- 上目 Superorder
- ネズミザメ上目 Galeomorphi
- 目 Order
- ネズミザメ目 Lamniformes
- 科 Family
- オナガザメ科 Alopiidae
- 属 Genus
- オナガザメ属 Alopias
- 種 Species
- ニタリ A. pelagicus
基本情報
まず、ニタリの基本情報を紹介します。
ニタリと人間との関わり
ニタリと人間との関わりを食用、保全状況、ワシントン条約(CITES)、危険性の4つの面から解説します。
食用などの活用方法
ニタリは遠洋および沿岸漁業のはえ縄、巻き網、刺網漁業で対象種または混獲で漁獲されているサメです。
肉は生鮮食品や燻製、塩干物として、ヒレ、肝油、サメ皮として活用されています。
また、ニタリを含むオナガザメの3種はすべて国際ゲームフィッシュ協会(IGFA)によってゲームフィッシュとみなされています。
ニタリは捕獲後すぐにリリースしても死んでしまうことが多いとみられているので、ゲームフィッシュの対象でなくなるのを願うばかりです。
保全状況
ニタリは絶滅危惧種?
ニタリは絶滅危惧種:危機(EN / Endangered)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
ニタリの個体数は太平洋とインド洋の両方で減少していると推定されています。
インド洋から太平洋にかけての地域の分布全体では過去3世代(55.5年)で50-79%減少したと推定されているため、IUCNレッドリストの絶滅危惧種の中で2番目に絶滅の危機にさらされている危機種(EN / Endangered)と評価されています。
絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】
ワシントン条約(CITES)
- ワシントン条約(CITES)
- 附属書Ⅱ
ニタリは2016年ヨハネスブルグ会議にてワシントン条約(CITES)の附属書Ⅱに掲載されました。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 0件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2023年)
ニタリは最大全長が428cmになりますが、1580-2023年までシャークアタックに関与したことはありません。
ダイバーや泳ぐ人を見かけても避けます。
ニタリの形態
見た目の特徴(形態)
- 尾びれの上半分がとにかく長い
- 胸びれも長め
- 鼻先が短い小顔で丸顔
- くりっとした丸い目
- 長い尾びれを上下に振って獲物を攻撃する
大きさ
- 平均的な大きさ
- 260〜292cm
- 最大全長
- 428cm
- 体重
- 69.5kg
マオナガとニタリの違い
ニタリとマオナガとハチワレの違いを表にしました。
ニタリはマオナガと見た目がそっくりということから「ニタリ」になりました。
ぱっと見の見た目はほぼ同じですが、ニタリの方がかわいらしいお顔です。
ハチワレは後頭部の膨らみが特徴的なのでわかりやすいでしょう。
もしも海の中でニタリとマオナガとハチワレの遭遇した場合はその場での見分けは難しいかもしれません。
この比較表を作るにあたって、マオナガとニタリの写真を何枚か比較しましたが、少し困り顔でかわいい方がニタリでだいたい合っているような気がします 笑
ニタリ | マオナガ | ハチワレ | |
---|---|---|---|
学名 | Alopias pelagicus | Alopias vulpinus | Alopias superciliosus |
英語名 | Pelagic thresher | Common thresher | Bigeye thresher |
大きさ | 最大428cm | 最大573cm | 最大488cm |
水深 | 0〜300m(通常150mまで) | 0〜650m(通常200mまで) | 0〜730m(通常100mまで) |
目の大きさ | 大きくてかわいらしい | 普通 | 上下に長く大きい |
特徴 | 胸びれの付け根が付近が白くない | 胸びれの付け根が付近が白い | 後頭部が八の字に膨らんでいる |
ニタリの分布と生息域
- 分布域
- 地中海を含む太平洋とインド洋の沖合
- 日本国内での分布域
- 房総半島より南の太平洋側、山口県の日本海側(※)
- 生息域
- 主に外洋
- 水深
- 水深0〜300m(通常150mまで)
分布域
オナガザメは外洋性のサメで地中海を含む太平洋とインド洋の沖合に生息。
台湾の北東部沿岸に多く生息しているとみられています。
生息域
主に外洋の表層〜水深150mまでの海域に生息しています。
ニタリの生態
長い尾びれで狩りをする動画
ニタリが魚の群れの中に猛スピードで突っ込み尾びれで狩りをして魚を食べる動画です。
ライフスタイル
- 泳ぐ速度
- - キロ
- 性格
- -
- 1日の過ごし方
- -
- 好きな食べ物
- ニシン、トビウオ、アオリイカ
繁殖
- 繁殖方法
- 卵胎生(Ovoviviparity)
- 妊娠期間
- - ヶ月
- 一度に産む数
- 2匹
- 子ザメの大きさ
- 約130〜160cm
- 繁殖サイクル
- 調査中
- 成熟年齢
- 8〜9歳
- 成熟サイズ
- オス:全長267〜276cm、メス:全長282-292cm
ニタリは一度に産む子ザメの数が2匹と少ないので、個体数の増加率がとても低く乱獲に弱いサメです。
寿命
- 平均寿命
- - 歳
- 最大寿命
- 24~28歳
ニタリを水族館で見たい
ニタリは飼育が難しいサメです。
そのため水族館で見かけることはほとんどありません。
2023年2月時点、ニタリを飼育している水族館はありません。
飼育したことがある水族館一覧
引用:葛西臨海水族園のニタリ
水族館名 | 飼育期間 | 大きさ | 性別 | 採集場所・方法 |
---|---|---|---|---|
海遊館(大阪府) | 2008年6月 | 不明 | 不明 | 高知県で捕獲。2008年6月8日から7月6日にかけて、定置網に13個体のニタリの入網があり、3個体を以布利港内の生簀へ収容。生簀におけるニタリの飼育を11日〜26日間行い、餌付けに成功※。展示には至っていない。 |
葛西臨海水族園(東京都) | 2015年4月20日〜? | 不明 | 不明 | 傷負いのニタリを展示。 |
沖縄美ら海水族館(沖縄県) | 2016年ごろ? | 不明 | 不明 | 定置網漁でツマジロ、オグロメジロザメ、ニタリ入網有だが、飼育・展示には至っていない?※ |
沖縄美ら海水族館(沖縄県) | 2016年12月30日 | 不明 | 不明 | 読谷村、飼育・展示には至っていない?※ |
参考文献一覧
(2)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、 櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(3)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。 (4)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(5)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(6) David A. Ebert (著), Marc Dando (著), Sarah Fowler (著), Rima Jabado (はしがき, 寄稿) “Sharks of the World” Princeton University Press,2021年
(7)IUCN “Pelagic thresher / Alopias pelagicus”
(8)Florida Museum “DISCOVER FISHES Heptranchias perlo”
(9)Fishbase “Alopias pelagicus Nakamura, 1935 Pelagic thresher”