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サメの保全(保護)

【海の食物連鎖】サメの生態系での役割とは?

2022年4月5日

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サメの生態系での役割とは

サメの生態系での役割は、種や成長段階、生息地によって異なります。ホホジロザメやイタチザメのように高い栄養段階に位置する大型種がいる一方、サンゴ礁性サメの多くは中位捕食者です。
また、サメは獲物を食べる捕食者としてだけでなく、他の捕食者との競争、異なる海域の間での栄養の運搬、他の生物の採餌を助けることなどを通じて、生態系に関わっています(Dedman et al., 2024Klinard et al., 2025)。

また、大型の捕食性サメは、獲物を直接食べるだけではありません。
サメに捕食される危険があることで、獲物が採餌する場所や時間帯を変え、その影響がほかの生物や生息環境へ波及する場合があります(Dedman et al., 2024)。

このように、サメは種や海域によって、

  1. 獲物や競争相手の個体数・行動に影響を与える
  2. 異なる海域の間で栄養を運ぶ
  3. その影響が食物網や生息環境へ波及する

という役割を果たします(Dedman et al., 2024)。

サメが減ると海の食物連鎖はどうなる?

【海の食物連鎖】サメの生態系での役割とは?

サメの減少はその海域の食物連鎖に大きな変化をもたらします。

トップダウン効果

サメが減ると海の食物連鎖はどうなるのでしょうか。

一部の大型サメが減少すると、その獲物や競争相手だった中型捕食者が増えることがあります。
中型捕食者が増えれば、その獲物となる小型魚や底生生物が減るなど、さらに低い栄養段階へ影響が伝わる場合があります(Dedman et al., 2024)。

高い栄養段階にいる捕食者が、下位の生物の個体数や行動に与える影響をトップダウン効果といいます。
その影響が複数の栄養段階へ連鎖する現象は、栄養カスケードと呼ばれます(Surma et al., 2025)。

その反対がボトムアップ効果です。
栄養塩や植物プランクトンなどの基礎生産者の増減が、それを利用する生物、さらにその捕食者へ影響することをいいます。
ざっくりいうと、植物プランクトンの数が減ることで、下から上に向かってバランスが崩れていくことです。

サメが減少すると生態系はどうなる?

では次に、サメが減少すると生態系はどうなるかについて解説します。

サメと珊瑚の意外な関係

Ruppertらは2013年、オーストラリア北西部にあるサンゴ礁の魚類群集を比較しました。
サメ漁の影響を受けた海域では、サメが少なく、フエダイ類などの中型捕食魚が多い一方、ブダイ類などの草食魚が少ない傾向が報告されました(Ruppert et al., 2013)。

※Ruppertらの研究は、サメの減少から中型捕食魚、草食魚、サンゴ礁の回復までの因果関係をすべて直接実証したものではありません。サンゴ礁におけるサメの役割は、サメの種や体の大きさ、魚類群集、漁業、生息環境によって異なります(Klinard et al., 2025)。

このブダイは藻を食べる魚です。

サンゴが死ぬとその表面を覆うように藻が生え、サンゴの再生能力を阻害します。
それを草食魚が藻をかじり取って小さな隙間を作ることで、サンゴの再生が行われるようになるのです。

ところが、藻を食べるブダイ類などの草食魚が減ると、若いサンゴが藻に覆われ、サンゴ礁が回復しにくくなる場合があります(Ruppert et al., 2013)。

サメの減少は、貝類にも影響?

大型の沿岸性サメが減少した場合、その捕食対象となる一部のエイ類や小型サメが増える可能性が指摘されてきました。
ただし、実際の捕食関係や個体数への影響は、サメとエイの種、生息域、食性によって異なります。(Ref.2 pp196-199)

2007年に発表された研究は、米国東海岸で大型沿岸性サメが減少した結果、クロガネウシバナトビエイ(Rhinoptera bonasus)が増え、ノースカロライナ州のアメリカイタヤガイ漁業に影響した可能性を示しました(Myers et al., 2007)。

しかし、2016年に発表された再検討では、サメの減少、エイの増加、二枚貝漁業の衰退の時期が一致しないことなどから、この栄養カスケードを裏づける証拠は乏しいと指摘されています(Grubbs et al., 2016)。

クロガネウシバナトビエイが二枚貝を食べることと、エイの増加が二枚貝漁業の衰退を引き起こしたことは、分けて考える必要があります。

イタチザメは海草を守っている?

西オーストラリアのシャーク湾では、イタチザメがアオウミガメやジュゴンの行動を変えることで、海草への食害を抑えていることが報告されています。

イタチザメに襲われる危険が高い場所では、アオウミガメは採餌場所を変え、ジュゴンも海草の地下茎を掘り返す採餌を控えます。つまり、イタチザメは獲物を直接食べるだけでなく、その存在によって同じエリアで暮らす大型草食動物の行動を変え、海草群落へ間接的な影響を与えていということです(Heithaus et al., 2007Burkholder et al., 2013)。

2011年の海洋熱波によって、シャーク湾の海草は大きな被害を受けました。
研究チームは、ダイバーが海草を刈り取り、ジュゴンが何度も海草を食べた状態を再現しました。その結果、熱波で弱っていた海草はさらに減少しました。
イタチザメがいると、ジュゴンは襲われる危険を警戒するため、同じ場所で海草を食べ続けにくくなります。そのため、弱った海草が食べ尽くされず、回復する時間が残ります(Nowicki et al., 2021)。

にゃぶり
にゃぶり
みんなが仲良くバランスよく暮らすことが大事なんにゃね!

※シャーク湾で、イタチザメが一度減少した後に回復し、それに伴って海草が回復した過程を追跡した研究ではありません。イタチザメが保たれている海域で確認された行動の変化と、イタチザメがいない状態を再現した野外実験に基づく研究です。

ホホジロザメが見られなくなった海で起きた変化

2025年には、南アフリカのフォールス湾でホホジロザメが減少した後の変化を調べた研究が発表されました。

この海域では、2000年から2020年までホホジロザメの相対的な出現数が調査されていました。ホホジロザメは2015年以降に急減し、標準化された船上調査では2018年半ば以降、確認されなくなりました。

ホホジロザメの減少後には、ケープオットセイやエビスザメの相対的な出現が増える一方、オットセイが食べる小型魚や、エビスザメが食べる小型の底生性サメが減る傾向が確認されました。研究チームは、これらの変化がホホジロザメの減少によって起きた栄養カスケードの予測と一致すると報告しています(Hammerschlag et al., 2025)。

ただし、この研究では、一部の生物についてホホジロザメ減少前後の2期間しか海中動画のデータがありません。研究者らも、今後の継続調査が必要だとしています。

おわりに

このようにサメの生態系での役割は非常に重要なものです。

2021年の研究では、18種の外洋性サメ・エイについて57の時系列データを統合した世界全体の個体数指数が、1970年以降71%低下したと推定されました(Pacoureau et al., 2021)。

さらに、2024年に公表された1,199種を対象とする世界規模の分析では、サメ・エイ類の個体数は1970年以降半減し、絶滅リスクを表すレッドリスト指数は19%悪化したと報告されています(Dulvy et al., 2024)。

ヨゴレについては、米国海洋大気庁(NOAA)が2024年に公表した評価で、3世代にあたる61.2年間の世界的な個体数減少が98~100%と推定されています。
ただし、3世代全体をカバーする観測データはなく、各海域で得られたデータから投影した推定値です(NOAA Fisheries, 2024)。

ただ怖いだけの生き物という一面的な見方ではなく、同じ地球に住む仲間のこととして、サメのことを考えてみませんか?

まずは一歩、今まで自分が目を向けていなかったことに目を向けて、考えてみること。
そこからはじめてみましょう。

参考文献一覧

  1. AFPBB News『サメの乱獲でサンゴ礁破壊が深刻化、豪研究 』2013年9月21日、2022年4月4日に閲覧。
  2. 田中彰『深海ザメを追え』宝島社、2014年(第1刷)。
  3. Marine Conservation Institute “Sharks Are in Trouble … Without Them, Whole Ecosystems May Disappear” April 1, 2021,2022年4月4日に閲覧。
  4. Dedman, S. et al. “Ecological roles and importance of sharks in the Anthropocene Ocean.” Science, 385, 2024.
  5. Klinard, N. V. et al. “Defining ecological roles of sharks on coral reefs.” Biological Reviews, 100, 2025.
  6. Ruppert, J. L. W. et al. “Caught in the Middle: Combined Impacts of Shark Removal and Coral Loss on the Fish Communities of Coral Reefs.” PLOS ONE, 8, 2013.
  7. Myers, R. A. et al. “Cascading Effects of the Loss of Apex Predatory Sharks from a Coastal Ocean.” Science, 315, 2007.
  8. Grubbs, R. D. et al. “Critical assessment and ramifications of a purported marine trophic cascade.” Scientific Reports, 6, 2016.
  9. Hammerschlag, N. et al. “Evidence of cascading ecosystem effects following the loss of white sharks from False Bay, South Africa.” Frontiers in Marine Science, 12, 2025.
  10. Pacoureau, N. et al. “Half a century of global decline in oceanic sharks and rays.” Nature, 589, 2021.
  11. Dulvy, N. K. et al. “Ecological erosion and expanding extinction risk of sharks and rays.” Science, 386, 2024.
  12. NOAA Fisheries. “Recovery Status Review for the Oceanic Whitetip Shark.” 2024.

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シャーク・アクティビストReinoとにゃぶり

シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 海やサメ以外で好きなのは、橋本涼さん(B&ZAI)。海属性の人が好き。

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