
2026年、人口55万人に満たない島国カーボベルデが、サッカーワールドカップに初めて出場しました。アフリカ予選ではカメルーンを1-0で下すなどしてグループD首位で初出場を決めるという快挙を成し遂げ、本大会ではEURO2024覇者スペインを相手に27本のシュートを浴びながら0-0で守り切りました。40歳のGKヴォジーニャのセーブに世界がおどろいたあの夜、多くの人がカーボベルデという国名を初めて耳にしたのではないでしょうか。
さらに、2026年6月26日(日本時間27日)には、なんと決勝トーナメント進出を決めました!
グループステージはスペインと0-0、ウルグアイと2-2(カーボベルデにとってW杯初ゴールが生まれた試合)、サウジアラビアと0-0。3戦すべて引き分けというめずらしい形で、初出場国として決勝トーナメント進出を果たしました。

なぜカーボベルデ代表はブルーシャークスなのか
カーボベルデの面積は東京都の約1.8倍、人口は55万人に届きません。
その面積の小ささに反して、カーボベルデの海域の水面下では、53種ものサメが記録されています。日本近海のサメが127種と考えると、サメ類の多さにおどろきますね!
カーボベルデ代表は「Tubarões Azuis(トゥバロン・アズウ)」の愛称で知られています。
この、Tubarões Azuisはポルトガル語でヨシキリザメという意味です。
少し紛らわしいのが、
- Tubarão: サメ
- Azul: 青い
なので、直訳すると、英語の「Blue shark」と同じく「青いサメ」という意味になります。
補足すると、
- ヨシキリザメ(英名:Blue shark)→ポルトガル語でTubarão-azul(トゥバロン・アズウ)
- アオザメ(英語:Shortfin mako shark)→ポルトガル語でTubarão-anequim(トゥバロン・アネキン)
です。
カーボベルデ国営通信 Inforpress の2026年6月10日付記事によれば、ジョゼ・マリア・ネヴェス大統領は、この呼称が2007〜2008年頃、国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)と連携したサメ保護・持続可能な漁業推進プログラムの中で形になったと説明しています。
また、同記事では、当時の環境省が国内のサメ類を調査し、各スポーツ連盟にサメの種名を採用することを提案したとも紹介されています。
※国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)とは、世界の飢餓撲滅と農林水産業の発展、食料安全保障の確保を目的とする国連の専門機関。
| 競技種目 | 公式愛称(ポルトガル語) | ポルトガル語の訳 | 対応するサメの標準和名など |
|---|---|---|---|
| サッカー | Tubarão Azul(トゥバロン・アズウ)と | Tubarão: サメ Azul: 青い | ヨシキリザメ |
| バスケットボール | Tubarão-Martelo(トゥバロン・マルテーロ) | Tubarão: サメ Martelo: ハンマー、トンカチ | シュモクザメの仲間 |
| ハンドボール | Tubarão-Branco(トゥバロン・ブランコ) | Tubarão: サメ Branco: 白い | ホホジロザメ |
| バレーボール | Tubarão-Raposo(トゥバロン・ハポーゾ) | Tubarão: サメ Raposo: キツネ | マオナガ |
| 新体操 | Tubarão-Baleia(トゥバロン・バレイア) | Tubarão: サメ Baleia: クジラ | ジンベエザメ |
| ボクシング | Tubarão-Tigre(トゥバロン・チグリ) | Tubarão: サメ Tigre: トラ | イタチザメ |
参考記事:(Inforpress, 2026)
カーボベルデはどんな国?
カーボベルデは、アフリカ大陸の最西端から約600キロ沖の大西洋に浮かぶ火山群島の国家です。10の大きな島(うち1つは無人島)と8の小島からなり、人口は約54万人、面積は約4,000㎢で滋賀県とほぼ同じ大きさです。クレオール、ポルトガル、アフリカ文化が混ざり合い、伝統音楽のモーナや数々のビーチでも知られています。最大の島サンティアゴ島には首都プライア、旧首都のシダーデ・ヴェーリャ、そして崖の上の要塞フォルテ・レアル・デ・サン・フェリペがあります(在セネガル日本国大使館, n.d.)。
シダーデ・ヴェーリャはアフリカ初のヨーロッパ植民都市として世界遺産にも登録されており、石畳の道や教会、要塞が残り、奴隷貿易の拠点だった過去を今に伝えています。
乾燥した風土で、年間を通じて強い海洋風と北東の貿易風が吹きます。平均気温は22度から27度前後と温暖で、マリンスポーツやトレッキングを楽しむことができます。フォゴ島にはカーボベルデ最高峰の活火山ピコ・デ・フォゴがあり、山頂からは群島と大西洋を一望できます(在セネガル日本国大使館, n.d.)。
農業が脆弱なため、ヨーロッパとアフリカの間に位置する地の利を生かした航海・空路の中継・補給基地としてのサービス業や遠洋漁業が主な産業です。実際、1963年から約10年間、日本のマグロ漁船がサン・ヴィセンテ島に寄港し、現地には「サイコーダヨ」という日本語に由来する伝統歌まで残っています。漁業の島であることは、海と切っても切れない関係を今も続けています(ドメイン島巡り, 2024)。
どんなサメがいる?
カーボベルデ周辺では、53種のサメが記録されています。(Varela et al., 2025)
カーボベルデのサメは、西アフリカ沿岸に住む種(ヒラガシラ、アトランティック・ウィーゼルシャーク、アフリカドチザメなど)、沖合を広く回遊する大型種(ヨゴレ、ヨシキリザメ、アオザメ、イタチザメなど)、そして深海に棲むガルパーシャークやカラスザメ類が混在しています。これほど多様な顔ぶれになるのは、島の周囲がすぐ深くなっていること、カナリア海流と西アフリカ湧昇の影響を受けていることが大きな理由です。(IUCN SSC SSG, 2024)
東部島嶼の保育場
カーボベルデ東部の浅い湾は、仔ザメの生育場になっています。ボア・ヴィスタ島のサル・レイ湾では2016年8月から2019年9月にかけて毎月ギルネット調査が行われ、合計6,162匹のサメが記録されました。ほとんどがヒラガシラ、アカシュモクザメ、カマストガリザメ、アトランティック・ウィーゼルシャークの生まれたばかりの個体で、夏から秋に数が多くなる傾向がありました(IUCN SSC SSG, 2024)。
人とサメのリスク評価
カーボベルデの海には「危ない種はいるが、観光客が泳ぐ海でのリスクは低い」とみられています。イタチザメ、オオメジロザメ、ヨゴレ、アオザメ、ホホジロザメといった危険種は確かに記録されていますが、Florida MuseumのデータベースでのカーボベルデのConfirmed Unprovoked Shark Attacksは1件だけです。朝夕や濁った水の中、釣りや漁のそばでは話が変わりますが、管理された昼間のビーチ遊泳であれば、現在のデータを見る限りリスクは低いと言えます。(Florida Museum, n.d.)
カーボベルデのサメ種別リスト

この図は、カナリア海流・西アフリカ湧昇の影響、東部島嶼浅海の繁殖・保育場機能、そして深海性サメの豊富さをまとめたものです。
カーボベルデのサメは、浅い沿岸の保育場グループ・沖合を回遊する大型種・深海や急斜面に棲む種の3つに分けて考えると整理しやすいです。東部島嶼のサル・レイ湾周辺は仔ザメの生育場として重要で、沖合ではイタチザメやクロトガリザメが行き来し、深い斜面では深海ザメの仲間が暮らしています。
沿岸・礁・浅海で確認された種
| 学名 | 和名 | 英名 | 生息場所・水深 | 季節 | IUCN |
|---|---|---|---|---|---|
| Ginglymostoma cirratum | ナースシャーク | Nurse shark | 沿岸~礁域、東部島嶼 BRUV/ISRA、0–200m | 通年 | VU |
| Carcharias taurus | シロワニ | Sand tiger shark | ボア・ヴィスタ沖 Sal Rei Reef の洞窟、0–50m | 主に12–6月 | CR |
| Galeocerdo cuvier | イタチザメ | Tiger shark | 東部島嶼沿岸から沖合斜面、衛星追跡調査は主に6–10月 | 通年利用の可能性あり | NT |
| Galeorhinus galeus | ナヌカザメ | Tope shark | 沿岸~島棚外縁、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Leptocharias smithii | アフリカドチザメ | Barbeled houndshark | 沿岸浅海、BRUV・文献で確認 | 不明 | 未照合 |
| Mustelus mustelus | ホシザメ類 | Smooth-hound | 沿岸~島棚、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Paragaleus pectoralis | — | Atlantic weasel shark | サル・レイ湾(仔ザメ多数)、浅海湾内 | 夏~秋に多い | EN |
| Carcharhinus altimus | — | Bignose shark | 沿岸~外縁、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus brevipinna | ハナザメ | Spinner shark | 東部島嶼の浅海と BRUV | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus galapagensis | ガラパゴスザメ | Galapagos shark | 沿岸~島嶼外縁、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus leucas | オオメジロザメ | Bull shark | 沿岸~島棚、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus limbatus | カマストガリザメ | Blacktip shark | サル・レイ湾(仔ザメ多数)、浅海湾内 | 夏~秋に多い | VU |
| Carcharhinus obscurus | ドタブカ | Dusky shark | 沿岸~島棚外縁、BRUV・文献で確認 | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus plumbeus | メジロザメ(ヤジブカ) | Sandbar shark | 沿岸~島棚、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus signatus | ナイトシャーク | Night shark | 島棚外縁~斜面、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Negaprion brevirostris | レモンザメ | Lemon shark | 東部島嶼の浅海・BRUV | 不明 | 未照合 |
| Rhizoprionodon acutus | ヒラガシラ | Milk shark | サル・レイ湾(生まれたばかりの個体が大量) | 夏~秋に多い | VU |
| Sphyrna lewini | アカシュモクザメ | Scalloped hammerhead | サル・レイ湾(仔ザメ多数)、浅海湾内 | 夏~秋に多い | CR |
| Sphyrna mokarran | ヒラシュモクザメ | Great hammerhead | 沿岸~島棚、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Sphyrna zygaena | シロシュモクザメ | Smooth hammerhead | 沿岸~島棚、0–200m | 不明 | 未照合 |
| Squalus megalops | ツマリツノザメ類 | Shortnose spurdog | 沿岸~島棚外縁、0–200m | 不明 | 未照合 |
サル・レイ湾でとくに数が多かったのはヒラガシラ、アカシュモクザメ、カマストガリザメ、アトランティック・ウィーゼルシャークの4種で、いずれも生まれたばかりや当歳の個体がほとんどでした。この湾が仔ザメの生育場として機能していることは間違いありません。(Seymour et al., 2023)
外洋性・大型回遊種
| 学名 | 和名 | 英名 | 生息場所・水深 | 季節 | IUCN |
|---|---|---|---|---|---|
| Alopias superciliosus | ハチワレ | Bigeye thresher | 沖合、FishBase 国別記録あり | 不明 | 未照合 |
| Alopias vulpinus | マオナガ | Common thresher | 沿岸チェックリストで確認 | 不明 | 未照合 |
| Carcharhinus falciformis | クロトガリザメ | Silky shark | 沖合~島嶼外縁、通常0–500m | 不明 | VU |
| Carcharhinus longimanus | ヨゴレ | Oceanic whitetip shark | 沖合、Inferno Bay | 不明 | CR |
| Cetorhinus maximus | ウバザメ | Basking shark | 沖合~表層、沿岸チェックリストで確認 | 不明 | 未照合 |
| Carcharodon carcharias | ホホジロザメ | Great white shark | 沖合、まれな通過記録 | 不明 | 未照合 |
| Isurus oxyrinchus | アオザメ | Shortfin mako | 沖合、Inferno Bay | 不明 | EN |
| Isurus paucus | バケアオザメ | Longfin mako | 沖合、沿岸チェックリストで確認 | 不明 | 未照合 |
| Lamna nasus | ネズミザメ | Porbeagle | 沖合、FishBase・法的保護対象 | 不明 | 未照合 |
| Prionace glauca | ヨシキリザメ | Blue shark | 沖合、FishBase・漁業対象種 | 不明 | 未照合 |
| Pseudocarcharias kamoharai | ミズワニ | Crocodile shark | 沖合の中深層~表層 | 不明 | 未照合 |
| Rhincodon typus | ジンベエザメ | Whale shark | 広域回遊、FishBase・法的保護対象 | 不明 | 未照合 |
| Megachasma pelagios | メガマウスザメ | Megamouth shark | Frontiers 総覧にカーボベルデ記録が含まれると示唆 | 不明 | 未照合 |
※BRUV(Baited Remote Underwater Video:餌付き水中自動撮影装置)とは、カメラの前にエサを吊り下げて海に沈め、寄ってくる魚を自動で撮影・記録する調査システム。
インフェルノ・ベイ(Inferno Bay)はサンティアゴ島南西海岸の急斜面・硬底・岩礁・黒サンゴの海域です(Koivunen et al., 2024)。
ジンベエザメ、ホホジロザメ、ウバザメ、シュモクザメ類、ヨゴレ、ネズミザメはカーボベルデ政府の2014年管理計画でEEZ内での漁獲・船上保有・転載・陸揚げ・販売がすべて禁止されています。(Governo de Cabo Verde, 2014)
深海・島嶼斜面に棲む種
カーボベルデは火山島のため、島のすぐそばから海底が急激に深くなっています。この急斜面に沿って、以下のような深海性のサメが多数生息しています。(FishBase, n.d.)
| 学名 | 和名 | 英名 | 生息場所 | IUCN |
|---|---|---|---|---|
| Heptranchias perlo | カグラザメ | Sharpnose sevengill shark | やや深い場所 | 未照合 |
| Hexanchus griseus | エドアブラザメ | Bluntnose sixgill shark | 深海~斜面、Inferno Bay | NT |
| Centrophorus granulosus | ガルパーシャーク類 | Gulper shark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Centrophorus lusitanicus | ガルパーシャーク類 | Lowfin gulper shark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Centrophorus uyato | ガルパーシャーク類 | Gulper shark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Deania profundorum | アローヘッドドッグフィッシュ | Arrowhead dogfish | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Dalatias licha | ヨロイザメ類 | Kitefin shark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Isistius brasiliensis | ダルマザメ | Cookiecutter shark | 沖合の中深層 | 未照合 |
| Squaliolus laticaudus | オオメコビトザメ | Spined pygmy shark | 沖合の中深層 | 未照合 |
| Etmopterus polli | アフリカンランタンシャーク | African lanternshark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Etmopterus princeps | グレートランタンシャーク | Great lanternshark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Etmopterus pusillus | カラスザメ | Smooth lanternshark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Etmopterus spinax | クロハラカラスザメ | Velvetbelly lanternshark | 深海・島嶼斜面 | 未照合 |
| Odontaspis ferox | オオワニザメ | Smalltooth sand tiger | 深海~斜面 | 未照合 |
| Oxynotus centrina | アンギュラーラフシャーク | Angular roughshark | 深海・斜面 | 未照合 |
| Pseudotriakis microdon | チヒロザメ | False catshark | 深海・斜面 | 未照合 |
| Zameus squamulosus | ビロウドザメ | Velvet dogfish | 深海・斜面 | 未照合 |
バハマにも沖合の大型種は豊富ですが、これだけ多くの深海・急斜面性のサメが揃っている点はカーボベルデならではです。FishBase の国別リストには Centrophoridae、Etmopteridae、Dalatiidae など深海サメの科が複数並んでいます。(FishBase, n.d.)
目撃、漁獲、ダイビング観光などの記録
地元のデータとして最も具体的なのは、サル・レイ湾の記録です。ISRA factsheetによれば、2016年8月から2019年9月にかけて毎月行われたギルネット調査で合計6,162匹のサメが記録されました。内訳はヒラガシラ4,908匹、アカシュモクザメ1,035匹、カマストガリザメ115匹、アトランティック・ウィーゼルシャーク93匹、ナースシャーク12匹の5種。いずれも生まれたばかりか当歳の個体がほとんどで、ナースシャークをのぞき夏から秋にかけて数が増えました。「東部カーボベルデは仔ザメの生育場だ」という話は、仮説ではなく実測で裏付けられています。(IUCN SSC SSG, 2024)
MarAllianceらによるBRUV調査もこれを補強しています。沿岸域で板鰓類14種が記録され、サメではアトランティック・ウィーゼルシャーク、ナースシャーク、スピナー、カマストガリザメ、ヒラガシラ、ニシレモンザメ、イタチザメ、ドタブカ、アフリカドチザメなどが確認されています。大型の頂点捕食者は北の島から南の島へ行くほど少なくなり、小型・中型種は逆の傾向を示していました。(Seymour et al., 2024)
ダイビング観光の記録で注目されるのは、ボア・ヴィスタ島西方のSal Rei Reefです。IUCN SSCのISRA factsheetでシロワニの休息場として認定されており、2014–2024年のダイブ記録やSNS投稿によれば、12月から6月にかけて洞窟の中でペアまたは3–6匹の群れが繰り返し観察されています。ダイバーの記録がきちんと整理されれば保全指定にも使えることを示す好例です。(IUCN SSC SSG, 2024)
イタチザメについては2026年のFrontiers論文が詳しいです。2016–2019年の調査で42匹が捕獲・標識され、そのうち衛星タグを装着した12匹の追跡では、島の周りにとどまる個体とアフリカ沿岸やブラジルまで移動する個体の両方が確認されました。メス1匹では大西洋の往復が記録されており、カーボベルデがイタチザメにとって生活の拠点であり、大西洋全体のつなぎ目でもあることがわかります。(Seymour et al., 2026)
漁業の文脈では、カーボベルデ政府の2014年二年計画が重要な資料です。国内水域にサメが多数生息し、群島がその移動ルートの要所だと明記したうえで、主要な漁獲対象として Mustelus mustelus、Galeocerdo cuvier、Prionace glauca を挙げています。一方でジンベエザメ、ホホジロザメ、シュモクザメ類、ウバザメ、ヨゴレ、ネズミザメについては、EEZ内での漁獲から販売までを全面禁止しています。(Governo de Cabo Verde, 2014)
カーボベルデとバハマの比較
出典:Google MAP
バハマはペレスメジロザメをはじめとするカリブ海系のサメが中心で、40種超が生息しており、2011年に大西洋で初めてのシャークサンクチュアリが設けられました。Biminiではレモンザメの大規模なマングローブ保育場も知られています。バハマは「温暖・浅い炭酸塩棚・広いサンゴ礁・マングローブ」という典型的なリーフシャーク生態系です。(FishBase, n.d.)
これに対してカーボベルデは、火山島・狭い島棚・急深・西アフリカ湧昇・東部島嶼の浅海保育場という条件を持ちます。両地域に共通する沖合の大型回遊種は多い一方で、リーフ専性のカリブ海系の種はバハマに偏り、西アフリカ沿岸系や深海急斜面系の種はカーボベルデに偏ります。(IUCN SSC SSG, 2024)
| 比較項目 | カーボベルデ | バハマ | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 代表的な共通種 | イタチザメ、ニシレモンザメ、カマストガリザメ、オオメジロザメ、クロトガリザメ、ヨシキリザメ、シロワニ、アオザメ、シュモクザメ類、ナースシャーク | 同様に多く確認 (FishBase, n.d.) | 外洋大型種と浅海汎存種は両地域に広い分布を持つ |
| バハマで多く、カーボベルデに少ない種 | — | ペレスメジロザメ、ブラックノーズシャーク、カリビアン・シャープノーズなど (FishBase, n.d.) | 広いサンゴ礁・マングローブ・温暖なガルフストリーム環境が有利 |
| カーボベルデで目立ち、バハマに少ない種 | ヒラガシラ、アトランティック・ウィーゼルシャーク、アフリカドチザメ、深海ザメ類 (IUCN SSC SSG, 2024) | あまり多くない | 西アフリカ沿岸系の生物地理と急深な島嶼斜面が効いている |
| 保育場の代表 | サル・レイ湾のヒラガシラ・カマストガリザメ・アトランティック・ウィーゼル・シュモクザメ (IUCN SSC SSG, 2024) | Biminiのニシレモンザメ保育場 | どちらも浅海沿岸域が重要だが、使う種が異なる |
| 観光ダイビングの看板種 | Sal Rei Reef のシロワニ、東部島嶼のイタチザメ (IUCN SSC SSG, 2024) | レモンザメ、イタチザメ、ペレスメジロザメ、ナースシャーク | バハマは「リーフ+サンクチュアリ」、カーボベルデは「洞窟休息場+外洋接続」の色が強い |
| 海流・海洋環境 | カナリア海流、季節的な冷水・湧昇、急深火山島 (IUCN SSC SSG, 2024) | ガルフストリーム暖流、広い浅海棚とリーフ | カーボベルデは深海・外洋・沿岸幼魚が近接、バハマは礁縁・棚・マングローブが連結 |
| 保全制度 | 2014年時点で複数危急種の保持・販売等を禁止 (Governo de Cabo Verde, 2014) | 2011年シャークサンクチュアリ | バハマの方が制度的ブランディングは強いが、カーボベルデも種別規制の基盤はある |
一言でまとめると、
- バハマは「サメが多いサンゴ礁国家」
- カーボベルデは「サメが縦に多い火山島国家」
です。
バハマはリーフ・マングローブ・保護制度が強く、カーボベルデは西アフリカ生物地理・急深地形・外洋接続が強い。共通種も多いのに読後感がかなり違うのはこのためです。(FishBase, n.d.)
サメ事故や遭遇リスクは?
リスク評価をざっくり言えば「種としては怖い顔ぶれがいる、でも場所と行動を選べば通常観光での実測リスクは低い」です。カーボベルデではイタチザメ、オオメジロザメ、クロトガリザメ、ヨゴレ、アオザメ、ホホジロザメ、シュモクザメ類など、人身事故につながりやすい種が記録されています。FishBaseのクロトガリザメの個別要約でも「regarded as dangerous to humans」と明記されています。(FishBase, n.d.)
ただし、実際の人身事故データは非常に少ないです。Florida MuseumのISAF世界地図でのカーボベルデのConfirmed Unprovoked Shark Attacksは1件です。GSAFの派生データベースでは1932年10月11日にサン・ヴィセンテ島で遊泳中の27歳男性が死亡した記録が示されています。少なくとも公的・準公的な国際データ上はサメ事故が多い国ではありません。(Florida Museum, n.d.)
一方で「ゼロリスク」とも言い切れません。イタチザメの衛星追跡研究は、東部島嶼周辺に大型個体が居着くケースもあることを示しており、カーボベルデのアカウミガメへのサメ攻撃報告もあります(イタチザメの可能性が高いとされています)。ボア・ヴィスタやサル島の東側、海亀の多い海域、漁船の操業海域、海鳥や魚群が騒ぐ場所、沖合の濁水域では、ビーチより一段上の警戒が必要です。(Seymour et al., 2026)
観光客向けの注意点は単独の遠泳を避ける、朝夕や濁水時を避ける、釣り・魚の処理・血や餌がある場所に入らない、スピアフィッシング後に長く水中に留まらない、海亀集積域や漁業活動域の近くで不用意に沖へ出ない。管理された昼間のビーチでの遊泳は、現時点のデータからみると相対的に低リスクです。(Florida Museum, n.d.)
まとめ
カーボベルデは「たまにサメがいる大西洋の島」ではなく、西アフリカ沿岸種・大西洋回遊種・深海急斜面種が交差し、東部島嶼では明確な仔ザメの生育場を持つ、北東熱帯大西洋の重要なサメ拠点です。バハマほど「リーフ・シャーク観光国家」として知られてはいませんが、保全生態学上の重要性はかなり高いです。派手に有名ではないものの、研究者目線ではおもしろい海域です。(Varela et al., 2025)
参考文献
- Florida Museum of Natural History (n.d.). International Shark Attack File(World Map). University of Florida. https://www.floridamuseum.ufl.edu/shark-attacks/maps/world/
- Froese, R., & Pauly, D.(編)(n.d.). FishBase. https://www.fishbase.se/(カーボベルデ・バハマの国別種リスト、各種サマリー)
- Governo de Cabo Verde (2014). 漁業資源管理計画(2014年). Boletim Oficial da República de Cabo Verde. https://boe.incv.cv/Bulletins/Download/1882
- Inforpress (2026). PR recorda surgimento da alcunha "Tubarões Azuis" da seleção nacional de futebol.(Balai.cv 再掲)記事リンク
- IUCN SSC Shark Specialist Group (2024). Sal Rei Bay ISRA Factsheet(European Atlantic Region). Important Shark and Ray Areas. PDF
- IUCN SSC Shark Specialist Group (2024). Sal Rei Reef ISRA Factsheet(European Atlantic Region). Important Shark and Ray Areas. PDF
- Koivunen, et al. (2024). [インフェルノ・ベイ(サンティアゴ島南西岸)に関する研究]. ※掲載誌・巻号など書誌情報の補完を推奨
- Seymour, Z., Monteiro, Z. L., Monteiro, A., Baremore, I. E., Garzon, F., & Graham, R. T. (2023). Evidence for the first multi-species shark nursery area in Atlantic Africa (Boa Vista Island, Cabo Verde). Frontiers in Marine Science, 10, 1077748. https://doi.org/10.3389/fmars.2023.1077748
- Seymour, Z. T. A., et al. (2024). Baseline assessment of the coastal elasmobranch fauna of Cabo Verde. MarAlliance. PDF ※共著者・掲載誌情報の補完を推奨
- Seymour, Z. T. A., Garzon, F., Monteiro, Z. L., & Graham, R. T. (2026). Satellite tracking of tiger sharks in the Eastern Central Atlantic reveals varied space-use patterns and ocean-basin connectivity. Frontiers in Marine Science, 12, 1706757. https://doi.org/10.3389/fmars.2025.1706757
- Varela, J., Santos, C. P., Nunes, E., Pissarra, V., Pires, S., Ribeiro, B. P., Vieira, E., Repolho, T., Queiroz, N., Freitas, R., & Rosa, R. (2025). Sharks in Cabo Verde, Canarias, Madeira and Azores islands: species richness, conservation status and anthropogenic pressures. Frontiers in Marine Science, 12, 1490317. https://doi.org/10.3389/fmars.2025.1490317
- 在セネガル日本国大使館 (n.d.). カーボベルデ共和国 基礎データ. リンク
- ドメイン島巡り (2024). カーボベルデ. リンク
出典:
