サメのドキュメントが好きな人におなじみのグアダルーペ島。
ホホジロザメがいっぱいいることやケージダイビングが有名なイメージを持っている人が多いのでは。
今回のブログでは、グアダルーペ島についてわかりやすく解説します。
ホホジロザメで有名なグアダルーペ島とはGuadalupe Island
グアダルーペ島(Guadalupe Island)は、メキシコのバハ・カリフォルニア州沖に浮かぶ火山島(休火山)です。
ホホジロザメの有名な生息地であることから別名『シャークアイランド』とも呼ばれています。
どんな島?人口や面積は?
グアダルーペ島はホホジロザメのケージダイビングの人気スポットです。
サメのドキュメント番組でもグアダルーペ島はおなじみですが、どんな島なのか、人口や面積がどれくらいなのかは謎に包まれていますよね。
- 国
- メキシコ
- 面積
- 253.8 km²
- 人口
- 25人(2005年)
自然保護区
2005年、グアダルーペ島とその周辺の海域は自然保護区に指定されました。
これは、野生のヤギによって減少した植物の回復と海洋哺乳類と鳥類の個体群の保護を目的としているとのこと。
人口が少ない
グアダルーペ島には、研究者、気象観測所を運営する軍関係者、漁師が住んでいるだけです。
2005年のデータによると、その人数はたったの25人!
島の大部分は乾燥地帯で、地表水はほとんどないそうです。
ホホジロザメで有名なグアダルーペ島の場所はどこ?
グアダルーペ島(Guadalupe Island)は、メキシコのバハ・カリフォルニア半島西岸から241km(130海里)、バハ・カリフォルニア州のエンセナダ市の南西約400km(200海里)の太平洋上にあります。
グアダルーペ島とその小島はメキシコの最西端地域にあるそうです。
グアダルーペ島の歴史
1602年、セバスチャン・ビスカイノ(Sebastián Vizcaíno)が率いるスペイン遠征隊がグアダルーペ島を初めて目撃したものの上陸はしなかったそうです。
その後、18世紀後半から19世紀にかけて、グアダルーペ島にはオットセイ、カワウソ、ゾウアザラシのハンターが頻繁に訪れるようになったとのこと。
ヤギは1800年代初頭にアザラシハンターによって持ち込まれとみられています。
そのヤギたちはの数が増えていったことにより、グアダルーペ島の在来種の植物をほぼ根絶やしに。
昨今、日本でも人間によって持ち込まれたアカミミガメ、アメリカザリガニ、ウシガエルなどの外来種が問題になっていますが、19世紀にも同じような問題が起きていたのですね。
グアダルーペ島の生き物はホホジロザメだけではない
グアダルーペ島には、ホホジロザメだけではなく固有種も生息してます。
人間の密猟や、山羊の食害により絶滅、絶滅寸前の危機に追いやられている種も!
- グアダルーペカラカラ:絶滅(EX)
- グアダループウミツバメ:絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)
- グアダルーペユキヒメドリ:絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)
ホホジロザメはIUCNレッドリストの絶滅危惧種の中で3番目に絶滅リスクが高い危急(VU / Vulnerable)のサメです。
グアダルーペ島とホホジロザメ
ホホジロザメの個体数は全世界で3500匹程度なのではないかとみられていますが、グアダルーペ島の海域では322匹も生息しているとか。
確かに、サメのドキュメント番組を見ていても続々と大型のホホジロザメが現れますよね。
ホホジロザメの女王ディープブルーやそれに匹敵するような大型のサメはグアダルーペ島の水深120mあたりに生息しているそう(ドキュメント番組「深海のホホジロザメ」)。
ケージダイビングについては「サメケージダイビングとは?檻の向こうに巨大ホホジロザメという究極のサメ体験」をどうぞ!
2023年グアダルーペ島でのサメ関連の観光が禁止に!?
メキシコ政府はグアダルーペ島でのサメの保全のためにサメ関連の観光を無期限で禁止することになりました。この禁止措置は2023年1月10日に施行されたそうです。
この決定により、グアダルーペ島の観光事業は事実上終了となり、ホホジロザメのケージダイビングにもその影響は及びます。
ホホジロザメのケージダイビング禁止の理由は?
メキシコの環境省によると、サメ関連の観光の禁止は観光業界の悪習に対応するものだということです。
- サメを誘引するための餌を撒くこと
- 観光客やテレビ番組の撮影クルーが檻の外で泳ぐこと
- ドローンがアザラシのコロニーの上を飛ぶこと
- 汚染物質(ごみ?)を投棄すること
これだけではなく、2016年にサメが檻の棒に引っかかって重傷を負った件と、2019年に同様の事件でサメが死亡した可能性が高い件も今回の対応に踏み切った理由にあるようです。
ケージダイビングという観光活動がホホジロザメを危険にさらしていたんですね。
怪我人は出なかったものの、ホホジロザメが檻の中に侵入してきた事故もありましたね。
メキシコ政府の禁止措置の目的はホホジロザメの保護、及び生息地の保全です。
経済的な影響
ある調査によると、グアダルーペ島のケージダイビングの船の数は2014年から2019年の間に6隻から10隻に増えて、2019年には推定2,800人がホホジロザメをを見るためにケージダイビングをしたそうです。
そのため、ホホジロザメのケージダイビングを中心に発展してきたグアダルーペ島の観光経済も今回の禁止措置によって「事実上終了」となってしまいます。
サメ研究にも制限がかかる?
サメの保護を目的とした禁止措置ですが、サメの研究も制限されてしまうようです。
せめて、所定の手続きをすることで研究目的の活動だけでもできればいいのですが・・・。
禁止措置のデメリット
グアダルーペ島のケージダイビングの業者や研究者のチームがいなくなってしまうと、高額で売れるアゴやヒレを目当てにホホジロザメの密漁が始まるのではないかと懸念する人も。
禁止措置というのは生きもの保全に対して一見有効にみえますが、その反面かえって密漁などの違法行為を招くという面もあるのです。
また、メキシコの最西端地域であるグアダルーペ島の場合、監視する人の目がなくなった場所の治安を維持することができるのだろうかと不安を感じてしまいます。
まとめ
今回の禁止措置はグアダルーペ島のホホジロザメの保全のためにとられたものですが、前述のように観光産業の衰退による島の経済への打撃、密漁者への懸念という不安が残ります。
死んだサメは一度しか売れませんが、生きているサメを観光資源にすれば何回でも利益が出ます。
ところが、それが禁止されて経済的に苦しくなれば、密漁につながるということもあり得るのではないでしょうか。
グアダルーペ島には、ディープブルーをはじめとした5mを超えるホホジロザメたちが多く生息しています。
ホホジロザメたちが成熟し、全長が4〜5mクラスになるまでには10年以上かかります。
保全のための禁止措置ならば、密漁者への対策も考えて欲しいです。
日本で暮らしていると、ネット上でホホジロザメの刺身、料理、死んだサメの売買などを目にすることがあります。
法律に違反しているわけでもありませんし、絶滅危惧種であっても死なせてしまったのなら最大限に活用することは供養だと思います(わたしはホホジロザメが好きなのでそう言い聞かせてもときどききついこともありますが)。
人々が生きるために魚を獲り、その過程で混獲されてしまうサメがいることは仕方のないことです。
しかしながら、密漁については話は別です。
お金になることをわかった上でターゲットにするのですから。
今回に禁止措置の理由のひとつに、2匹のホホジロザメが負傷したことが挙げられていますが、密漁のリスクと比較すると目をつぶって欲しかったと感じたのが本音です。
また、グアダルーペ島のホホジロザメを観光資源にしたり、人気番組で取り上げることは「ホホジロザメをさらに知りたい」「ホホジロザメを守りたい」という人を増やすことにもつながるのではないでしょうか。実際に、わたしもグアダルーペ島のホホジロザメについてのドキュメント番組はいくつも見ています。
しかしながら、ホホジロザメのケージダイビングそのものに対する問題が指摘されているのもまた事実です。
たとえば、サメに餌を与えることでサメの行動が変化したり、人間に慣れてしまい人を恐れることがなくなってしまう可能性があることです。
生きものの保全を考える上で、未来に起こりうる不安を事前に予防しておくというのは大切なことです。
ただ、人とサメの距離感はマリンスポーツを通して以前から近いものになっていますし、ドローンの空撮によってサメが海水浴場の近くにいるということも判明しています。
ケージダイビングによって、サメが人間に慣れてしまい人を恐れることがなくなってしまうというのは過剰な心配なのではないかと感じてしまいます。
ニュージーランドでは、2018年にケージダイビングを禁止しました。
グアダルーペ島のホホジロザメのケージダイビングについては今後の様子を見守っていきたいと思います。
参考サイト:Mexico Bans Great White Shark-Related Tourism on Guadalupe Island、Mexico bans ‘shark tourism’ at great white hotspot