ネズミザメ学名 / Lamna ditropis(1947年)
基本情報
- 標準和名
- ネズミザメ
- 別名
- モウカザメ(毛鹿鮫、主に東北)、オキザラゴウシカ(東北以外)、mini great white(外見がホホジロザメに似ていることから)
- 英語名
- Salmon shark
- 学名
- Lamna ditropis
- 分類
- 軟骨魚綱(Chondrichthyes)板鰓亜綱(Elasmobranchii)ネズミザメ目(Lamniformes)ネズミザメ科(Lamnidae)ネズミザメ属 (Lamna)
ネズミザメ(Lamna ditropis)は冷たい海を好むサメで見た目がホホジロザメと似ています。
ネズミザメの目はホホジロザメよりも大きなクリクリお目目、体つきにも丸みがあり、どこかかわいらしさを感じさせます。
人を襲ったという記録はありませんが、大型のサメなので冷たい海に潜るときは注意が必要かもしれません(なかなかそんな機会はないと思いますが笑)。
ネズミザメと人との関わり
日本のサメ類種別水揚量としてはヨシキリザメに次いで多く、13,367トン中、3,549トンがネズミザメです(2017年)。
ネズミザメはサメの中ではおいしいといわれており、食用のサメとして活用されています。
モウカという名前の由来
「茨城県産魚類の方言について(第2報)」によると、ネズミザメの地方名「モウカ」の由来は次のとおり。
- モウカはマフカより変化したもの
- 魚名の頭にマが付く魚は比較的多く獲れ、味のよいものを意味している(例:マイワシ、マカジキ、マダイ)
マ+フカ
↓
マフカ
↓
モウカ
サメをフカと呼ぶ地域
- 関西・九州方面はサメをフカと呼ぶ
- 東京付近では大きなサメをフカと呼ぶ
- 関東・東北地方ではサメをフカとは呼ばない
ネズミザメの日本での分布を考えるとマフカという名前は東京付近で水揚げされた際に付けられたものかもしれませんね。
保全状況
ネズミザメは絶滅危惧種?
ネズミザメはIUCNレッドリストで低懸念(LC / Least Concern)と評価されています。
2023年現在、ネズミザメの資源量は問題ないとみられています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
ワシントン条約(CITES)
- ワシントン条約(CITES)
- 掲載なし
ネズミザメはワシントン条約(CITES)には掲載されていません。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 0件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2023年)
ネズミザメは冷たい海で暮らすサメなので人間と出会う機会はほとんどないでしょう。
しかしながら、最大全長が305cmになる大型のサメであることから、ネズミザメの危険度は「」としました。
サメ事故は年間何件?日本に生息する人食いザメの種類・分布・危険性
ネズミザメの生態や分布
ネズミザメの生態や分布について紹介します。
生態
- 分布域
- 北太平洋のベーリング海からカリフォルニア州沖の亜寒帯域の沿岸から外洋まで広く分布
- 日本国内での分布域
- 銚子以北の太平洋、富山県以北の日本海、オホーツク海、千島列島
- 生息場所
- 沿岸から外洋
- 水深
- 0~650m、通常は0〜152m
- 大きさ
- 平均的な全長は180cm
- 最大全長
- 305cm
- 体重
- 175kg
- 寿命
- オス:25年以上、メス:20年(最長27年)
日本での分布域
ネズミザメの日本国内での分布域は一般的には、銚子以北の太平洋、富山県以北の日本海、オホーツク海、千島列島です。
ところが、こんなところにネズミザメが!?という場所で発見されたことがあります。
日付 | 場所 |
---|---|
2006年3月22日ごろ | 大分県日出町沖の別府湾 |
2016年3月24日ごろ | 三重県 |
三重県
鳥羽水族館の2016年3月24日のブログ「ネズミザメ!」によると、三重県で全長250cmの妊娠したネズミザメが水揚げされました。
これまで三重県では正式な記録がないらしく太平洋側におけるネズミザメの南限記録ではないかとのことです(他の記録については調査中)。
また、鳥羽水族館の飼育員のたかむら氏によると「三重では過去にオットセイやアザラシさらにはセイウチがやってきた記録もある、水温が低めのこの時期に親潮の流れに乗って三重まではるばるやってきたのではないか」とのこと。
漁師の方と水族館がタッグを組むことでこのようなことを発見できるのは素晴らしいことですね。
大分県日出町沖の別府湾
ネズミザメの南限記録は三重県ではないようです。
「マリーンパレス」の40年 と 「うみたまご」の10年(p.50)によると、2006年3月22日に大分マリーンパレス水族館「うみたまご」に日出町沖の別府湾で捕獲された全長2.2mのネズミザメを標本として受け入れたそうです。
ネズミザメの水族館での飼育状況
ネズミザメは水族館には滅多に飼育されません。
奇跡的に展示したとしてもあっという間に弱ってしまいます。
もしも、ネズミザメの展示を始めたという情報を聞いたら、すぐに会いに行くことをおすすめします。
水族館名 | 飼育期間 | 採集・飼育状況 |
---|---|---|
マリンピア松島水族館(閉館) | 2002年5月、6月 | 円形予備水槽で3匹を飼育したが9日以内に死亡 |
おたる水族館 | 2017年6月2日 | ネズミザメの子ども。衰弱が激しく半日の展示(参照) |
外国の水族館での飼育事例は?
外国の水族館でもネズミザメの飼育事例はないようです。
2018年、オレゴン州サンセットビーチの波打ち際で全長100cmのネズミザメの子どもが座礁。
子ザメを海に戻そうとしたものの上手くいかず、シーサイド水族館が(Seaside Aquarium)が保護しました。
シーサイド水族館では、大きな水槽でケアしたのち、海に返す計画でしたが到着して数時間後に息を引き取ってしまったとのこと(参照)。
参考文献一覧
(2)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、 櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(3)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。 (4)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(5)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(6) David A. Ebert (著), Marc Dando (著), Sarah Fowler (著), Rima Jabado (はしがき, 寄稿) “Sharks of the World” Princeton University Press,2021年