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フカヒレ問題

【2025年】IUUフカヒレ漁の一覧|サメ密漁とシャークフィニングの今を見る

2025年5月11日

シャークフィニング」それは、サメのヒレだけを切り取り、残された体を海に捨てる、極めて残酷で非持続的な行為です。
本記事は、シャークフィニングについての主記事「サメのヒレだけ取る残酷なシャークフィニングとフカヒレ問題」の補足として、近年報道・摘発されたシャークフィニングの実例をまとめたものです。
国際的な密漁、違法漁業、フカヒレ市場の動向を時系列で整理することで、現代におけるシャークフィニングの実態とその広がりを可視化します。

このリストに名を連ねた事件のひとつひとつの背後には、「命を切り捨てられたサメたち」がいます。
その記録を残すことが、未来のサメ保全につながると信じて。

2025年までのシャークフィニング事例の一覧表

ここでは、2025年までに報道された密漁・押収・摘発などの主要事例を紹介します。
随時更新しますが、更新しないで済むことを祈るばかりです。

日付場所サメ密漁の概要ソース
2016年5月31日インドネシア・マルク州西セラム県カスンバ島(中国系企業)ジンベエザメ2匹を生きたまま中国へ輸出するため、いけすで飼育していた企業を摘発。インドネシアではジンベエザメを含む9種の輸出が規制されている。保護した2匹は海にかえすという。じゃかるた新聞『ジンベエザメ密漁摘発 マルク州で海洋水産省 中国輸出用に飼育か』
2017年8月16日エクアドル・ガラパゴス諸島沖(中国漁船)海洋保護区であるガラパゴス沖で拿捕された中国船から数千匹のサメを発見。絶滅危惧種や赤ちゃんを含む若いサメも含まれていた。BBC『ガラパゴス諸島でサメ密猟か エクアドル当局が中国漁船を拿捕』
2018年11月6日南太平洋(日本のマグロ漁船)約1年間でサメ300匹をフィニング。インドネシア人船員が「生きたままヒレを切って海に捨てた」と供述。日本側は関与を否定。東スポ『日本のマグロ漁船サメ密猟の疑い インドネシア人漁師供述の真相は?』
2020年2月4日アメリカ・マイアミ港(南米からの輸入)フカヒレ18箱・計635kgを押収。アジア向け輸出用で、市場価格は7,000万円~1億円と推定。1,400 pounds of shark fins seized at PortMiami
2020年5月7日香港(エクアドルから輸入)香港税関職員は、ワシントン条約で保護されている種のフカヒレ26トンを発見。これは過去最大。このフカヒレははオナガザメ3万1000匹とクロトガリザメ7500匹のものだと特定。両種ともIUCNによって絶滅危惧種に指定されている。2019年に香港で押収された31件の貨物合計12トンの2倍以上。Authorities seize record 26 tons of illegal shark fins in Hong Kong
2021年1月コートジボワール・アビジャン空港乾燥フカヒレ350kgを押収。押収されたヒレの積荷には、少なくとも10種類のサメの部位が含まれていた。そのうち4種類は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)の付属書IIに掲載されている。October_2020_AIRCOP_Newsletter_.pdf
2021年3月22日スリランカ税関(香港行きの乾燥フカヒレ)CITES附属書IIに掲載されている2種のサメ、アオザメとシュモクザメ科の乾燥フカヒレを押収。フカヒレは、2種あわせておよそ250kg。平均的なサイズに基づけば、これは約250〜300匹分のサメに相当する。市場価値はおよそ1億5,000万ルピー(約2億7,000万円)と推定。Seizure of Dried Fins of CITES Listed Sharks– 22.03.2021
2021年8月18日中国船(証言元:香港)イギリスの環境NGOのEnvironmental Justice Foundation(EJF)がインタビューしたインドネシア人乗組員のほぼ全員が、サメのヒレを切り落とし、残りの部分を廃棄するフィニングが、中国船で大規模に行われていたと報告。英語版の共同通信“Japan likely imports fish from Chinese ships flagged for illegal acts”

Shark finning rampant across Chinese tuna firm’s fleet

2021年9月27日コロンビアの首都ボゴタのエルドラド空港(香港に密輸)フカヒレ3,493枚を押収。1,000匹近いサメが犠牲になった可能性。コロンビアに生息する76種類のサメのうちオナガザメやクロトガリザメの様な絶滅危惧種であるサメのヒレも今回押収されたフカヒレに含まれている可能性が高いとされている。コロンビアで大量のフカヒレ押収!脅かされる生物多様性
2022年アメリカ(Molina Internacional Trading社 → Fortune Resource社)NOAAがクロトガリザメ480kg、オオメジロザメ85kg、ナミシュモクザメ80kgの乾燥フカヒレを押収。絶滅危惧種法・レイシー法・フカヒレ販売排除法違反で、事件番号「NE2302462」として告発。NOAA 2023年5月報告書(事件番号:NE2302462)
2023年5月20日ナイジェリア(ラゴス)乾燥フカヒレ300kgとナマコをを押収。アジア市場向けの密輸とされ、ナイジェリア特別野生生物局(NSWO)が摘発。Shark Fins seized in Nigeria by NSWO
2023年6月21日マイアミ国際空港マイアミ国際空港でCBPがフカヒレ474枚を押収。2024-shark-finning-rtc.pdf
2023年6月29日ブラジル(サンタカタリーナ州・サンパウロ州)ブラジル連邦環境庁(IBAMA)が28.7トンのフカヒレを押収。推定10,000匹のアオザメとヨシキリザメが犠牲に。世界最大規模の押収事例として報告。これまでの最大の押収量は、2020年に香港で発生した28トンのフカヒレ。Brazil claims record shark fin bust: Nearly 29 tons from 10,000 sharks seized
2023年7月14日パナマ(港湾地域)6トン以上のフカヒレを押収。5名が逮捕され、アジア市場向けの違法取引とされた。Massive Seizure: Six Tons of Shark Fins Intercepted in Panama
2024年6月11日香港752kgの乾燥フカヒレを押収。HONG KONGWILDLIFE SEIZURE ALERT
2024年6月19日台湾の南方澳漁港船内からヨシキリザメのヒレを6.5tを発見(約2,000~3,000匹分に相当)。船内のスペース確保のため、ヒレ以外の魚体は生きたまま海に廃棄。日本の排他的経済水域(EEZ)内、もしくは日本が加盟している中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の管轄下にある公海で行われた可能性。IUU漁業の現状と日本
~シャークフィニングから考える~
2024年11月27日インド(タミル・ナードゥ州・チェンナイ)税関当局(DRI)がフカヒレ95kgとタツノオトシゴ25kgを押収。2名が逮捕され、野生動物保護法違反の可能性で森林局に移送された。The New Indian Express
2025年3月12日オーストラリア・ノーザンテリトリー沖(インドネシア漁船)ABFがフィニングを行っていたインドネシア漁船を拿捕。ヒレ339枚を押収し、船は破壊された。乗組員7人が逮捕。The Maritime Executive

フカヒレのためのサメ密漁の事例

ここでは、2025年までに報道された密漁・押収・摘発などの事例の詳細をピックアップして紹介します。

2018年 日本のマグロ漁船がサメ密漁で米国から刑事告訴

2018年、米司法省は日本の漁業会社が所有する漁船に対し、違法なシャークフィニングを行っていたとして日本人船員3人とともに刑事告訴を行ったと発表。報道によれば、漁船は清水港を出港し、南太平洋などでマグロ漁のかたわら、サメ約300匹を密漁していました。

  • シャークフィニング(ヒレを切られたサメの体は海へ)
  • 米国で発見されたヒレ:962枚・総重量89kg(推定市場価値:約76万円)
  • 労働を担わされたのはインドネシア人船員、船長の指示だったという供述も

水産会社は「知らぬ間に行われた」と主張していますが・・・。

「生きたサメからヒレを切って、体を投げ捨てた。船長から指示された」
──インドネシア人船員の供述(東スポWEB 2018年12月)
引用:日本のマグロ漁船サメ密猟の疑い インドネシア人漁師供述の真相は?

事件のその後は報じられておらず、詳細は不明のままです。

参考記事:東スポWEB「日本のマグロ漁船サメ密猟の疑い インドネシア人漁師供述の真相は?」、2018年12月

2020年マイアミでフカヒレの大規模な密漁が発覚

2020年2月、アメリカ合衆国魚類野生生物局(FWS)は、マイアミ港でフカヒレ18箱(計約635kg)を押収。
これらは南アメリカから到着したもので、アジアへの密輸を目的としていたと見られています。
フカヒレの市場価格は約7,000万円〜1億円とされ、近年でも最大規模の押収例の一つです。

制度と課題:アメリカにおけるフカヒレ取引の現状

米国ではシャークフィニング自体は違法ですが、加工されたフカヒレの輸入・販売は連邦レベルで禁止されていません。
現在、12州がフカヒレの販売を禁止していますが、多くの州では所持や輸出入が依然として可能です。
2020年にはフロリダ州で「フカヒレ所持禁止法案」が提出され、違反者には最大9,500ドルの罰金、漁業免許の永久剥奪など厳しい罰則が検討されました。
しかし、漁業団体からの反発も根強く、法整備は進行中です。

フカヒレ取引の背後には、「生活のために密漁せざるを得ない」という経済的背景も存在します。
この問題は、サメの保全にとどまらず、持続可能な漁業や貧困対策とも深くつながっています。

2021年中国漁船によるシャークフィニングと人権侵害

2021年、英NGO・Environmental Justice Foundation(EJF)の調査と共同通信の取材により、違法なシャークフィニングと人権侵害を行う中国の漁船から、日本の市場に魚が流入していた可能性が判明。
インドネシア人船員70名以上の証言と衛星追跡データから明らかになったのは…

  • サメの胴体を海に捨て、ヒレだけを切り取るシャークフィニングの常態化
  • 奴隷的労働環境(長時間労働・暴力・未払い・食事・医療の欠如)
  • 日本の冷凍運搬船との沖合での積み替え

これらの漁船の一部は、米国によって奴隷労働で禁輸対象となった大連の遠洋漁業会社に所属。
しかも、日本の大手商社(三菱商事)傘下の冷凍船が魚を積み替えていた事例も浮上し、静岡県・清水港を含む日本の港に入っていた疑いがあります。
日本は2022年に「漁獲証明法」を施行しましたが、適用対象は限られ、マグロやサメは対象外のまま。
IUU漁業の魚は、規制の厳しい欧米では売れません。その代わりに向かうのが、違法漁獲物への規制の緩い日本という「買ってくれる国」です。わたしたちの食卓が、いつの間にか「最後の受け入れ先」になっているのかもしれません。

参考記事:共同通信「Japan likely imports fish from Chinese ships flagged for illegal acts」、2021年8月18日

2025年インドネシア漁船がシャークフィニング

2025年3月12日、オーストラリアの国境警備隊(ABF)が、違法にサメのヒレを切り取っていたインドネシア漁船を拿捕&破壊。
船内から見つかったのは、

  • サメのヒレ339枚
  • 違法漁獲物の保存用の塩200キロ

サメの胴体はなかったことから、生きたサメからヒレだけを切るシャークフィニングが行われていたことが明らかに!
船に乗っていた7人の漁師は全員逮捕され、船は押収された後に破壊。
生きたままヒレを切ったあと、サメを海に捨ててヒレだけを持ち帰る… こんな残酷な漁法が今も横行しています。

(参考記事:「Australia Destroys Indonesian Fishing Boat for Illegal Shark Finning」)

フカヒレを目的としたサメの密漁

シャークフィニングについては、すでにこちらの記事(サメのヒレだけ取る残酷なシャークフィニングとフカヒレ問題)で詳しく紹介しました。
ここでは補足として、フカヒレを目的としたサメの密漁について、あらためてポイントを振り返っておきましょう。

  • なぜフカヒレは高い価値をもつのか
  • フカヒレ漁を禁じる国の取り組み
  • ヒレを奪われたサメに何が起きるのか

なぜフカヒレは高い価値をもつのか

フカヒレは中国を中心とする一部の文化圏で、祝い事や接待の“ごちそう”として扱われ、社会的な地位を示す料理の材料とされてきました。
この背景が、フカヒレの市場価値を押し上げ、サメ漁のインセンティブを高めています。
サメの種やサイズによって価格は異なり、とくにウバザメやジンベエザメなどの大型種は高級フカヒレとして取引されることもあります。

フカヒレ漁を禁じる国の取り組み

一部の国や地域では、フカヒレだけを取る漁を禁じ、「サメ全体を港に持ち帰ること」を義務づける法律が整備されています。
これは、サメが海の頂点捕食者として、海洋生態系のバランスを保つ上で重要な存在であることが科学的に示されているからです。
フカヒレ漁による過剰なサメの捕獲は、単なる「種の危機」ではなく、海そのものの健全性を脅かす行為だといえるでしょう。

ヒレを切られたサメはどうなる

サメのヒレだけを切り取り、生きたまま海に戻す行為は「シャークフィニング」と呼ばれます。
ヒレは再生しません。泳げなくなったサメは海底に沈み、やがて窒息、失血、もしくは他の捕食者に襲われて命を落とします。
切り取られた直後でも、サメはすぐには死にません。
それは、命が「苦しみながら終わっていく」時間でもあるのです。
資源・生態系の持続性の問題だけではなく、サメに対する倫理的配慮という面から見てもシャークフィニングは許しがたい行為です。

サメのヒレだけを取る、シャークフィニングという現実

人間がサメに命を奪われる件数は、年間およそ4件ほどです。
一方で、フカヒレスープのために命を奪われているサメは、年間で1億匹を超えるともいわれています。

これは、1日に約24万7,000匹──
1時間に約11,000匹のサメが殺されている計算です。

その多くが、生きたままヒレだけを切り取られ、
泳ぐこともできず、ゆっくりと苦しみながら命を落としているのです。

シャークフィニングの構造や倫理的な問題については、こちらの記事で詳しく解説しています。
サメのヒレだけ取る残酷なシャークフィニングと持続可能なサメ漁 SDGs14

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シャーク・アクティビストReino

シャーク・アクティビストのReinoです。 サメ専門ブロガー&YouTuberとしてサメの生態や保全についてお伝えしています。 佐賀県唐津市生まれ、東京育ち。 慶應義塾大学文学部卒業。 保有資格は環境社会検定試験(eco検定)、日本さかな検定(ととけん)3級🐟 関心があるのは、哲学、サメの保全、環境倫理学、水産学、SDGs14。 好きなものは、7 MEN 侍、SixTONES、永瀬廉(King & Prince)。ブログの執筆と監修を行っています。

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