ダルマザメってどんなサメ?
ひっそりと知名度は上がっているようですが、まだまだ謎多き深海サメのダルマザメ。
このブログでは、ダルマザメの特徴や人間との関わりなどを解説します。
ダルマザメとは
希少な深海魚ダルマザメ(Cookiecutter Shark)の生体が21日、高知県室戸市沖の定置網の中で見つかりました。
むろと廃校水族館@murosui_kochiによると、ダルマザメが生きたまま捕獲されるのは珍しいといいます。動画の続きはリンクからご覧ください。https://t.co/NTfp16osXK#ダルマザメ #深海魚 pic.twitter.com/IYea6Ktqla
— 高知新聞 (@Kochi_news) December 21, 2023
まず、ダルマザメの基本情報を紹介します。
ダルマザメの基本情報
- 標準和名
- ダルマザメ
- 別名
- クッキーカッターシャーク
- 英語名
- Cookie-cutter shark, Cigar shark, Luminous shark
- 学名
- Isistius brasiliensis
- 保全状況
- 低懸念(Least Concern / LC)
- 分類
- ツノザメ目(Squaliformes)ヨロイザメ科(Dalatiidae)ダルマザメ属(Isistius)
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 4件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2020年)
- 生息域
- 世界の温帯及び熱帯。沖合海域。深層から漸深層(海面下1000m付近から4000m付近の領域)
- 分布域
- 西大西洋:バハマとブラジル南部。東大西洋:カーボベルデ、ギニアからシエラレオネ、アンゴラ南部、南アフリカ(アセンション島を含む)。インド太平洋:モーリシャスからニューギニア、ロードハウ島、ニュージーランド。日本、ハワイ諸島。東太平洋:イースター島とガラパゴス諸島。
- 日本国内での分布域
- 駿河湾の深海
- 水深
- 85〜3500m
- 大きさ
- 平均的な全長は38〜44cm
- 最大全長
- 最大56cm。
- 体重
- - kg
- 平均寿命
- - 歳。
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 最大寿命
- - 歳
- 繁殖方法
- 卵胎生
- 妊娠期間
- 調査中
- 産仔数
- 6〜12匹
- 幼魚の大きさ
- - cm
- 繁殖サイクル
- 調査中
- 成熟年齢
- - 歳
- 成熟サイズ
- オス:36cm、メス:39cm
- 歯の形状
- 上顎がトゲ状、下顎が鋸歯状
- 1日の過ごし方
- 日中は水深1000m以深の深海に生息、夜間は表層に移動して餌を探す。
- 好きな食べ物
- イカ、タコ、小魚、イルカ、メカジキ、マグロなどの大型魚類
- 発見された年
- 1824年
- サメが住んでいる水深
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
ダルマザメは危険な人食いザメなの?
ダ~ルマさんが~おーよいだ。
※展示の予定はありません。 pic.twitter.com/WS91GjMw1A
— むろと廃校水族館 (@murosui_kochi) December 21, 2023
ダルマザメは体も小さく、沖合に住む深海ザメなので危険な人食いザメではありません。
ただし、船舶事故などの特殊な状況下では、人間を襲い怪我をさせる可能性がありますが、めったに起きることではないでしょう。
ダルマザメは人間を噛む?
インターナショナルシャークアタックによると、ダルマザメが人間を噛んだ事故は4件記録されており、それらはすべてハワイで起きています。
Oceanaによると、ハワイで起きたダルマザメの攻撃はかなり特殊な状況で起きています。
ダルマザメに噛まれた人は遠泳選手で、夜にライトをつけたボートに囲まれてハワイの島々を結ぶ超長距離を泳いでいたそうです。
その遠泳選手はダルマザメにふくらはぎを噛まれて、ひどい傷跡が残ったそうですが、それ以外は後遺症が残るようなことはなかったとのことです。
日本でもダルマザメに噛まれた人がいる?
日本でもダルマザメが人間を噛んだ事故が記録されています。
奄美大島沖漁船転覆事故に関する国土交通省『船舶事故調査報告書』には、漂流中の乗組員が「ダルマザメに肌の露出部をかまれて体力を消耗していたものと考えられる。」という記録があります。
ダルマザメの生態や特徴
ダルマザメは小さな葉巻型の深海ザメです。
吸盤型の口、鋭い歯、大きな緑色の目、体の後部に小さなヒレが特徴です。
上面が暗褐色、下面が明色で、首の周りに暗色の帯があります。
ダルマザメは腹側が緑色に光ります。
発光性のサメです。
その大きさと深海ザメであるという点から、人間には無害と考えられています。
ダルマザメは大型生物を殺さずに捕食するという性質から、寄生性のサメとみなされています。
ところが、捕食対象の大きさによってはそうはいってられないこともあります。
こちらは、ダルマザメの胃の内容物のイカのくちばしです。
このダルマザメの胃の内容物の標本ではイカは丸呑みしているのがわかります。
つまり、獲物の大きさ、噛みついた位置によっては、ダルマザメは相手の命を奪ってしまうのですね。
ダルマザメのサイズ
ダルマザメのサイズは平均的な全長が38〜44cm。
だいたいのサイズは50cmくらいなのでサメとしては小柄な種です。
ダルマザメの歯
D Ross Robertson, Public domain, via Wikimedia Commons
Oceanaによると、ダルマザメは他の種とは異なり、抜けた歯を意図的に飲み込むそうです。
歯の形成に重要なカルシウムなどを再利用しているのかもしれないとか。
深海ザメであるダルマザメならではの生存戦略ですね。
ダルマザメの一口
NOAA Photo Library, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
ダルマザメは獲物に噛みつき、顎を閉じると、体をくるっと回転させて、鋸歯状の下の歯で肉塊を切り取ります。
噛まれた獲物にはクッキーを型抜きしたような直径約5cm、深さ約7cm程度のクレーター状にくぼんだ噛み跡が残ります。
ダルマザメにかじられたイルカ
Wayne Hoggard NOAA/NMFS/SEFSC, Public domain, via Wikimedia Commons
ダルマザメにかじられたイルカです。命を奪われることはりませんが、丸くかじり取られた傷口が痛々しいですね。
ダルマザメの胃の内容物
こちらの写真はダルマザメの胃の内容物です。
クッキー状に切り取られた肉片を確認することができます。
ダルマザメ咬合力
ダルマザメ咬合力は、原子力潜水艦の電気ケーブルやゴム製のソナードームに咬み傷をつけるくらいの強さです。
ダルマザメと潜水艦
ダルマザメは、原子力潜水艦のソナードームにクレーターの跡を残したという報告もあります。
原子力潜水艦はダルマザメ対策として、電気ケーブルやゴム製のソナードームにグラスファイバーのカバーを付けることとなりました。
ダルマザメの分布域
Chris_huh, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons
ダルマザメは、世界中の暖かい海域に広く分布しています。
大西洋での生息域
- 西部大西洋: バハマ諸島以南からブラジル南部沿岸
- 東部大西洋: ベルデ岬、ギニアからシエラレオネ、アンゴラ南部、アセンション島を含む南アフリカ
インド太平洋での生息域
- インド洋: モーリシャスからニューギニア
- 太平洋: ロード・ハウ島、ニュージーランド、日本(駿河湾の深海など)、ハワイ諸島、イースター島沖、ガラパゴス沖
- オーストラリア: クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州、西オーストラリア州
ダルマザメの生息域
ダルマザメは海中を垂直に移動サメです。
日中は水深3,281フィート(1,000m)以深の深海に生息し、夜になると餌を探すために海面近くまで移動します(Stevens. 2003)。
ダルマザメの個体数
ダルマザメは商業的に漁獲されておらず、他の種を対象とした漁業で偶然に捕獲されることはめったにありません。
今のところはダルマザメの個体数が減少していることはないとみられています。
ダルマザメを水族館で見たい
ダルマザメは深海ザメですし、あまり見つからないサメなので水族館で見る機会はほぼないでしょう。
運がよければ、標本を見ることができるかもしれません。
もしも、水族館でダルマザメの標本を見つけたらじっくりと観察してみましょう。
ブログで使用しているダルマザメの写真について
ブログで使用しているダルマザメの写真は、2022年3月5日~5月9日にしながわ水族館で開催された「しな水の深海生物展~海の底からこんにちは~」で展示されていたダルマザメの標本です。
この標本について、ダルマザメではなく、ツラナガコビトザメだというご指摘をいただきましたが、
- ダルマザメは背ビレの位置が体の後方に位置。
- ヨロイザメ科に属するヨロイザメ属、ツラナガコビトザメ属とは背ビレの位置が体のほぼ中心に位置。
この標本の背ビレの位置は体の後方に位置しています。
ここにはアップできませんが、ダルマザメ標本の背ビレ位置が分かる画像も見せていただき、上記の特徴通りであることを確認しました。
上記の特徴および、文献を参照して、ダルマザメの標本だと判断したとのことです。
わたしの判断では、魚を専門としている施設の方の同定の判断に従い、この写真をダルマザメの標本として使用しています。
ダルマザメの標本は、他の施設よりから借用させていただいたものとのことなので、現在、しながわ水族館にはこのダルマザメ標本はないため、これ以上の回答はいただけないと思います。
わたしはサメの研究者ではなく、手元にこのダルマザメの標本はないため、同定についての質問についてはお答えすることができません。
専門家によるダルマザメ標本であるという判断を優先します。