パッと視界に入る大きなヒレが特徴的なメジロザメ(ヤジブカ)。
このブログでは、大きなヒレが自慢のメジロザメ(ヤジブカ)の特徴などを解説します。
写真は自分で撮影した京急油壺マリンパーク(2021年1月)とマクセルアクアパーク品川(2020年2月当時。2021年2月にはいませんでした)のメジロザメ(ヤジブカ)です。
メジロザメ(ヤジブカ)とは
まず、メジロザメ(ヤジブカ)の基本情報を紹介します。
メジロザメ(ヤジブカ)の基本情報
- 名前
- メジロザメ(ヤジブカ / Sandbar Shark)
- 学名
- Carcharhinus plumbeus
- 保全状況
- 【EN】絶滅危惧種(危機 / Endangered)
- 分類
- メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属
- 分布域
- 世界中の熱帯および温帯の水域。メキシコ湾、バハマ、キューバ、カリブ海の一部を含む、ケープコッド南からアルゼンチンまでの西大西洋。東大西洋では、ポルトガルから地中海を含む赤道アフリカ。東アフリカと紅海からハワイ諸島、ガラパゴス諸島とレビジャヒヘド諸島の東太平洋。日本では沖縄。
- 生息域
- 沿岸の浅瀬および沖合。島の周り、大陸棚の沖合、隣接する深海。時折、280mを超える深さまで移動。滑らかな土台のある湾、河口、港。サンゴ礁やその他の荒い底の領域は避ける。
- 生息域の深度の幅
- 1〜280m
- 平均深度
- 20〜65m
- 最大深度
- 280m
- 大きさ
- 一般的な全長は2m〜2.5m
- 最大全長
- 最大で全長3m、体重118kg
- 体重
- 45〜90kg。メスはオスよりも重い。
- 平均寿命
- 35年から41年
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 命名された年
- 1827年
- 人間を襲う危険度
- サメが住んでいる水深
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
メジロザメ(ヤジブカ)の生態とは
ここではメジロザメ(ヤジブカ)の特徴や生態について解説します。
メジロザメ(ヤジブカ)の特徴
メジロザメは西大西洋で最も数多く見られるサメです。
メジロザメは、適度に長い丸い鼻、高い三角形の鋸で縁取られた上歯、大きなヒレを備えた頑丈な体をしています。
メジロザメの体の色は茶色がかった灰色の色合いから青みがかった灰色、さらには青銅色までさまざまで、お腹は白っぽいです。
ヒレの先端と縁は、体の他の部分よりも暗い場合があります。
メジロザメ(ヤジブカ)の分布域
メジロザメ(ヤジブカ)は、温帯から熱帯の海域に生息する沿岸性で世界中に分布しているサメです。
西大西洋は、米国マサチューセッツ州南部からアルゼンチンまで、メキシコ湾、バハマ、キューバ、カリブ海南部と西部に分布。
東大西洋は、ポルトガルからコンゴ民主共和国(地中海を含む)に分布。
インド太平洋は、紅海、ペルシャ湾、東アフリカからハワイ諸島に至るまで分布。
東太平洋では、メキシコの西部にあるバハカリフォルニア半島から南西のはるか沖合に浮かレビジャヒヘド諸島やガラパゴス諸島に分布しています。
メジロザメ(ヤジブカ)の生息域
メジロザメ(ヤジブカ)は大陸棚、堤防、島の段丘上などを好み、港湾、河口、浅く濁った水域水域でもよく見られます。
淡水には生息していません。
滑らかな底面を好み、サンゴ礁など底の荒い場所は避けると考えられています。
メジロザメ(ヤジブカ)は水深20~65mで過ごす時間が多いですが、回遊のために深海に移動することもあるそうです。
メジロザメ(ヤジブカ)の季節回遊
メジロザメ(ヤジブカ)は同属の多くのサメと同様に季節回遊します。
メジロザメの季節回遊は暖かいときには北上し、涼しくなると南下することから水温に影響されているようです。
オスのメジロザメは集団で移動し、しばしば大きな群れで移動しますが、メスは単独で移動します。
また、メジロザメのオスはメスよりも深い水深を移動するようです。
ハワイ諸島沖に生息するメジロザメは季節海遊することなく、年間を通して生息していると考えられています。
世界中に存在するメジロザメの個体群間の距離が非常に遠いため、遠洋回遊をしている可能性が高いようです。
このメジロザメの遠洋回遊は、季節回遊のような気温に伴う移動ではなく、偶然に海流に乗った結果、長距離移動してしまったという可能性が最も高いと考えられています。
メジロザメ(ヤジブカ)が好きな食べ物
メジロザメ(ヤジブカ)が好きな食べ物は硬骨魚、小さなサメ、エイ、タコ、頭足類、腹足類、カニ、エビなどです。
メジロザメ(ヤジブカ)の天敵は?
メジロザメ(ヤジブカの幼魚はオオメジロザメや他の大きなサメに捕食されています。
ホホジロザメやイタチザメのような大型のサメもメジロザメの天敵です。
メジロザメ(ヤジブカ)の行動
ジョージア水族館によると、米国東海岸沿いのメジロザメは、冬の間は南に移動し、沿岸水域が暖まると北に戻るという、長期にわたる移動を毎年行います。
南への移動はオスのメジロザメのみで構成される大規模な集団で行われます。
メスのメジロザメは単独で移動しているように見えます。
メジロザメの季節的な移動は、アフリカの南東海岸に沿ったいくつかの集団でも報告されています。
移動は、メジロザメが通常生息している深さよりもはるかに深い深海で行われているようです。
このメジロザメの移動において海流が重要な役割を果たしており、海流がメジロザメの長距離をサポートしているという科学者の報告があります。
メジロザメ(ヤジブカ)の性格
メジロザメ(ヤジブカ)は攻撃的な性格ではありません。
メジロザメ(ヤジブカ)と淡水
メジロザメ(ヤジブカ)は川を上って淡水に入ることができません。
メジロザメ(ヤジブカ)の生殖と成長
メジロザメの交尾は北半球では5月から6月まで、赤道の南では10月から1月まで行われます。
この時期のメスのメジロザメはしばしば攻撃的なオスのメジロザメによって深い擦り傷や裂傷を負わされていることがあります。
メジロザメは胎生であり、胎盤嚢を介して子宮内の胚に栄養を与えます。
妊娠期間は8〜12か月続き、母親のメジロザメは1〜14匹の子ザメを出産します。
メスのメジロザメは2〜3年ごとに繁殖します。
メジロザメ(ヤジブカ)は人食いザメなの?人間への危険性は?
大きなサイズと強力な体格にもかかわらず、メジロザメに起因する人間への攻撃はほとんどありません。
小さな獲物を好むことと、ビーチや水面を避ける傾向があることから、メジロザメは人間にほとんど脅威を与えません。
ダイバーはメジロザメを一緒に泳ぐのに安全なサメの一種と考えています。
ただし、海中では人間にとってとても危険なサメであるオオメジロザメと混同する可能性がありますので、見間違えないように注意が必要です。
メジロザメが人間を攻撃することはめったにありませんが、大きなサイズと強力な体格のサメなので潜在的には危険かもしれません。
メジロザメによるシャークアタックはごくわずかですが、2021年8月2日、アメリカのメリーランド州オーシャンシティで、12歳の少女がメジロザメに足を噛まれて、42針を縫う怪我をしました。
基本的にはメジロザメは人間にとって危険なサメではありませんが、野生生物が人間にどう接してくるかは予想不可能です。
メジロザメ(ヤジブカ)と人間との関わり
メジロザメ(ヤジブカ)は食べやすい肉、大きなヒレを持つため、商業サメ漁業のターゲットになりやすく乱獲の影響を受けやすいサメです。
1980年代に釣りを趣味とする人たちが増加し、フカヒレやサメ肉の需要の高まったことは、大西洋南西部のメジロザメの数に大きな悪影響を与え、その個体数は、1970年代から1990年代前半の間に3分の2に減少したとみられています。
北大西洋東部の海域や南シナ海では、肉、油、皮、ひれ(フカヒレスープ用)、漢方薬のために乱獲されて、北大西洋西部ではスポーツフィッシングによる乱獲で個体数が減少しました。
メジロザメ(ヤジブカ)は絶滅危惧種?
メジロザメ(ヤジブカ)は絶滅危惧種?
メジロザメ(ヤジブカ)は絶滅危惧種の中で2番目に危惧されている危機(EN)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
IUCNレッドリストでは、絶滅危惧種(危機 / Endangered)と評価されているメジロザメ(ヤジブカ)。
この危機というのは、3段階ある絶滅危惧種のランクで2番目に高いものです。
保全
出産する子ザメの数が少ないこと、成長速度が遅いこと、妊娠期間が長いことは、メジロザメが乱獲の影響を受けやすいことを意味します。
たとえば、1970年代から1990年代初頭にかけて、大西洋南西部ではメジロザメの個体数が最大3分の2減少したと推定されています。
米国海洋漁業局は、2008年にメジロザメのすべての商業サメ漁業を禁止しました。
現在、限られた数の船が科学的研究のためだけにメジロザメを捕獲することを許可されています。
幸いなことに、近年、漁業規制により個体数がわずかに増加しているため、その減少傾向は変化しています。
また、メジロザメを捕食する大型のサメの個体数の減少しているため、子ザメが大型サメによる捕食されることが減少していることも個体数の増加の要因として考えられているようです。
2022年11月、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)第19回締約国会議(CITESCoP19)にて、メジロザメ科のサメを附属書Ⅱに一括掲載することが提案され、採択されました。
メジロザメ(ヤジブカ)は、メジロザメ目メジロザメ科に属するサメなので、今後はワシントン条約によって国際取引を規制されることになります。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
新たな脅威?
ところが、最近では新型コロナウイルス感染症の全202のワクチンの候補のうちの5つのワクチン候補は野生のサメから採ったスクアレンとも呼ばれる肝臓の油の材料としています。
開発が進んでいる米ファイザー社と米モデルナ社のワクチンには使われていないとのことですが心配なニュースです。
参考記事:絶滅危惧の深海サメ、コロナが危機に拍車か 需要の高い60種の約半分に絶滅のおそれ、保護活動家らが懸念
メジロザメ(ヤジブカ)の由来
コトバンクによると、メジロザメは眼が白っぽい瞬膜(しゅんまく)におおわれることに由来した名称です。
学名のCarcharhinus plumbeusについては、1827年にアドリア海から採取された標本について、ナルドが記載したSqualus plumbeusに基づいています。
Carcharhinusは、ギリシャ語の「karcharos」(鋭い)と「rhinos」(鼻)に由来し、plumbeusはラテン語の「鉛の」に由来しています。
メジロザメ(ヤジブカ)のかわいい画像
メジロザメ(ヤジブカ)はかわいいというよりも美人さん。
この子がオスカメスかは残念ながら未確認です。
メジロザメ(ヤジブカ)を水族館で見たい
メジロザメ(ヤジブカ)は水族館でも飼育できるサメです。
京急油壺マリンパークのヤジブカの紹介には次のようなことが書いてありました。
ヤジブカより
沖縄美ら海水族館で2013年7月5日に生まれました!!
この水槽には2匹いるけど、みんな兄弟なんだよ!!
産まれたときの全長は60cmくらいで、1週間後にはもう自分で餌を食べれるようになったよ!!
2020年2月にいたマクセルアクアパーク品川のメジロザメは残念ながら2021年2月にはいなくなっていました。
2022年11月時点でのわたしの調査結果
- マクセルアクアパーク品川
- ×
- 京急油壺マリンパーク(2021年9月閉園)
- ◯
- 八景島シーパラダイス
- ◯
- 沖縄美ら海水族館
- ◯
京急油壺マリンパークのメジロザメ(ヤジブカ)
京急油壺マリンパークのメジロザメ(ヤジブカ)はネムリブカと同じ水槽にいました。
オオメジロザメ、レモンザメ、シロワニがいる2階の回遊水槽とは別の1階の水槽です。
メジロザメの歯の化石を発掘する方法
海なし県・埼玉でメジロザメの歯の化石の発掘体験をしてみませんか。
都心から約1時間半、埼玉県東松山市にある「化石と自然の体験館」では、1500万年前に大海を泳いでいたサメの歯の化石を発掘することができます。
埼玉県でメジロザメ歯の化石や、オオワニザメの歯の化石や、サメの歯の化石が見つかるのは次のような理由です。
この地でなぜ、海洋生物の化石が見つかるのか。「太古の昔、この周辺は海の底でした」と教えてくれたのは指導員の荒井豊さん。この辺りは1500万~1000万年前、海底に堆積した地層が隆起してできた地形で、化石好きの間ではサメの歯の化石などが発掘できる地域として知られていた。[・・・・・・]体験館では、しばしば貴重な化石が見つかる。4月の開館以降、ハリセンボンの歯や、ほぼ完全な形で残っているメジロザメの歯、全長が最大で15メートルを超えるとも言われる巨大なサメ「カルカロドン メガロドン」の歯なども発掘されている。サメの歯はエナメル質のため、化石として残りやすいという。
引用:海なし県・埼玉の中心で… サメ化石の発掘体験|NIKKEI STYLE
また、見つけた化石は、調査研究の対象になる貴重なもの以外は持ち帰ることが可能です。
また、「化石と自然の体験館」では、月例ワークショップを開催!
太古のロマンとメジロザメの歯の化石を求めて、埼玉県東松山市にある「化石と自然の体験館」に足を伸ばしてみるのはどうですか?