人食いザメと恐れられているサメ。
なぜか可愛い生き物と思われがちなクマ。
実際には、サメとクマはどっちが怖いのでしょうか。
今回のブログでは、サメとクマはどっちが怖いのか、それぞれのイメージがどのようにして形成されているのかについても考えてみます。
サメとクマはどっちが怖い?
サメとクマはどっちが怖いのかということを、サメ事故とクマ事故の数の比較や、なぜサメはクマより怖いと思われているのかという背景から考えてみましょう。
実は人食いザメはほとんどいない
人食いザメという言葉を耳にする機会は多いですが、サメ事故のニュースを聞くことはあまりありません。
『2022年までに日本で起きたサメによる死亡事故や負傷事故のまとめ』にまとめましたが、サメによる死亡事故は2000年以降1件しか起きていません。
負傷事故を加えればもっと件数は増えますが、それでも平均すると年間1件以下です。
実は多いのがクマによる死亡事故
それに対して、日本では近年、クマによる死亡事故がほぼ毎年起きています。
環境省作成『クマ類による人身被害について』によると、2008年〜2021年の間にほぼ毎年クマによる死亡事故が1〜5件ほど起きています。
クマによる死亡事故が起きていないのは2015年と2018年だけです。
2023年は東北や北陸を中心に、クマに襲われて死傷する事故が相次いでおり、人身事故は過去最悪ペースで推移しています。
10月11日に環境省が発表した「クマによる人身被害件数」によると、秋田県や岩手県を中心に東北地方で多数の被害が出ており、15道府県で計212人(うち死亡事故は6件)に被害が出ています。この数値は月別統計を始めた2007年度以降の同時期比で、最多とのこと。2023年はネットでもニュースでもクマ被害を聞くことがとても多い印象がありましたが、こうして数字で見てみると恐ろしいですね・・・。
過去5年の日本でのクマ事故件数
年度 | 被害人数 | 死亡者数 |
---|---|---|
2019年 | 157人 | 1人 |
2020年 | 158人 | 2人 |
2021年 | 88人 | 5人 |
2022年 | 75人 | 2人 |
2023年 | 212人 | 6人 |
サメによる死亡事故は世界で見ても年間6〜10人くらいといわれていることが多いですがクマの場合は日本だけでもこの数字です。
やはり、海よりも陸の生きものの方が怖いですね。
過去5年の日本でのサメ事故件数
年度 | 被害人数 | 死亡者数 |
---|---|---|
2019年 | 0人 | 0人 |
2020年 | 0人 | 0人 |
2021年 | 3人 | 0人 |
2022年 | 0人 | 0人 |
2023年 | 0人 | 0人 |
日本で起きたサメ事故についてもっと詳細を知りたい方は「2023年までに日本で起きたサメによる事故のまとめ」をお読みください。
数字で比較すると、事故が多いのはサメよりもクマ
このように数字で比較すると、事故が多いのはサメよりもクマということになります。
それにもかかわらず、人食いグマという言葉を耳にすることはありませんし、サメの方が怖いと思われがちなのです。
なぜなのでしょうか。
なぜサメはクマより怖いと思われているのか
サメは人間が考えるよりも頭のいい魚です。
たとえば、ホホジロザメの場合は、餌場を求めて回遊し、アザラシなどの海生哺乳類のコロニーの近くで狩りをします。
また、食べ物にも好みがあり、人間の600倍の脂肪分をもつアザラシなどを好んで食べます。
このことから、ホホジロザメにとっては人間はおいしい食べ物ではないということが考えられます。
ホホジロザメが人間を好んで食べるのなら、餌場を求めて回遊するホホジロザメにとって夏の海水浴場は絶好の狩場になるはずです。
しかしながら、日本の海水浴場でそのようなサメ事故が過去にあったでしょうか。
人間の集団を狙い執拗に追い回すのは、サメ映画の世界だけです。
海水浴中に人食いザメに襲われる可能性はゼロではありませんが、フロリダ自然史博物館によれば、海で遊泳者がサメにかみつかれる確率は1150万回に1回という非常に稀なものです。
サメ事故の件数が平均すると1件以下の日本では交通事故などの方がよっぽど怖いでしょう。
クマはサメより怖い?
結論からいうと、クマはサメよりも怖いです。
クマが怖い理由
クマが怖い理由は次のとおり。
- クマは人間の生活圏に入ってくる
- クマは何でも食べる雑食
- クマは人間より早く走れる(100m7秒)
- クマは逃げる物を追う習性がある
- クマは人間の首、頭を狙って攻撃してくる
- クマは執着心が異常に強い
クマもサメと同じく臆病な生き物です。
ところが、クマの場合はその臆病さから人間を襲うことがあります。
そのときにクマが狙うのが、首や頭です。
クマに襲われて助かったとしても、顔への怪我というのはその後の人生に大きく影響してしまうケースがあります。
また、クマが人里に下りてくるのは山の食料が少ないせいだという説が有力視されていますが、開拓精神をもつクマが新しい餌場を求めて人里におりてくることもあるそう(ソース忘れ、追加します)。
何よりも海ではなく陸にいるだけでサメよりも怖いんです。
サメより怖い人食いグマ
クマに対して人食いグマという呼び方をする人はいませんが、クマが人を食べてしまった事件も発生しています。
ツキノワグマに詳しい専門家は、クマが人を食べたのは学習能力の高さが関係すると指摘する。
「最初は偶然出会ってクマの方が防御的に人を襲ったか。そのときに、人間が楽にとれる良い獲物であることを学習してしまった。もし、射殺されたクマの他に人を襲って食べたクマがいるなら、再犯の可能性はあります」
専門家によると、クマが人を襲うことを学習してしまった以上、むやみに山には近づかない方がいいということだ。
日本で起きたクマの事故
クマの事件については概要くらい説明したいところですが、文字に起こすのが怖すぎるのでリンクを貼らせていただきます。
個人的には、乗鞍岳バスターミナル襲撃事件には恐怖しかありません。
この乗鞍岳バスターミナル襲撃事件故のときのクマの大きさは136センチ、体重67キロ。
体格的には人間の成人男子より小さいにもかかわらず、人の力では制御できず、10人もの重軽傷者が出てしまいました。
クマはサメよりもずっと小さいのにこれだけのパワーがあるということからも、クマはサメよりも怖いといえるのではないでしょうか。
閲覧注意です。
その他、クマ事件で検索するといろいろ出てくると思います。
サメとクマのイメージ
サメの場合は、世界的大ヒット映画『ジョーズ』の影響で人食いザメというイメージが世代を問わず定着してしまいました。
水族館にいるツマグロやドチザメのような小さなサメのことをジョーズや人食いザメと呼んでいる人を見かけることも珍しくありません。
また、親が子供に「水族館のサメは訓練されているから人を食べないんだよ」とか「これが人食いザメだよ」などと、とんでもない解説をしている姿を見かけることもしばしば。
メディアでは、サメを悪者にする過激な表現が使われがちです。
その過剰な表現に見合うだけのサメ事故が起きているわけではないのに、メディアの見出しでサメは悪者になっています。
つまり、イメージに誘導されて、サメ=怖いと思っている人が多いといえるのではないでしょうか。
クマの場合はどうでしょうか。
クマといえばかわいいイメージが浸透しています。
くまのプーさん、パディントン、テディベア、リラックマ、LINEのキャラクターなどの有名どころはもちろん、かわいいキャラクターグッズに利用されがちです。
子供向けのかわいい絵本でもクマをモチーフとしたキャラクターは多いのではないでしょうか。
サメ映画といえばジョーズですが、クマの映画といえば、くまのプーさんやパディントンなどかわいい映画ばかり。
もしも、人食いグマの映画あったとしても、ジョーズ並みにヒットすることはないでしょう。
また、クマの事件はわたしたちの生活圏や登山ができる観光地でも発生しているため、地元への風評被害を抑えるために恐怖を煽る報道を控えているように感じます。
おわりに
こうしてまとめてみると、メディアが誘導するイメージの力というものがいかに大きいのかということがわかるのではないでしょうか。
サメが怖いというのは事実ですが、実際にはクマの方がよっぽど怖いです。
究極的には、人間以外の生物はみんな怖いんです。
わたしはサメには襲われたことはありませんが、飼い犬にも噛まれましたし、友人宅の小型犬に噛まれて流血したこともあります。
野良猫に引っかかれた友人もいます。
人間以外の生き物を尊重することは大切ですが、彼らは「かわいいだけの友人」ではないということを知ることも大切だと思います。
メディアから与えられたさまざまなイメージではなく、正しい目線で生き物たちと向き合っていける世界になってくれることを願うばかりです。